フリースタイラーの変遷

□世界への挑戦編
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集合時間ギリギリに飛び込んで来たのは円堂で、彼は途中で出会ったと青い短髪の少年、宇都宮虎丸を引き連れてきた。
これで、21人だ。
円堂か久々の面々や初めて見る顔と話終えた頃、体育館の扉が開かれた。

「監督!」

響木さんが、雷門中マネージャー3人と共に中に入ってくれば、みんなは慌てて駆け寄った。

「みんな揃っているか?」

確認するように響木さんがこちらを見て来た。
手に持ったリストは、まだ1つだけチェックが付いていない。

『あと1人』

まだです、と言う前に何かの音に気がついた鬼道が振り返った。
彼はそのまま、飛んできたボールを蹴り返した。返されたボールは、ニヒルに笑う少年の膝が受け止めた。
受け止めたボールを足で踏みつけた彼の姿に、一同は驚き、鬼道を筆頭に幾人かは敵意を見せた。

「不動!」

佐久間が叫べは、不動はニヤニヤと口角を上げて嗤った。
こいつ裏の扉から入ってきたな。みんなが入ってきた扉の向かいの扉が少しだけ空いている。

「不動!なんの真似だ!」

「挨拶だよ挨拶。洒落のわかんねぇヤツ」

鬼道の言葉にそう返した不動に、私は名簿を挟んでいたバインダーでその後頭部を叩いた。

「いっ、」

『かまって欲しいからってそんな危ないことしないの』

何すんだと振り返った鋭い瞳が睨んでくる。

「響木さん!まさかあいつも……!」

佐久間が振り返って響木さんに詰めれば、彼は笑った。

「これで全員揃ったな」

嘘だろ、と言うような佐久間と鬼道の顔を見て不動は愉快そうに笑っている。

「いいかよく聞け。お前たちは日本代表候補の強化選手だ」

日本代表とみんながざわめく中、不動がもう一度コチラに視線を送ってきた。

「ハッ、証明するチャンスってそういうことかよ」

真・帝国学園戦後、少し話をしたがその時の事をちゃんと覚えているようだ。

「フットボールフロンティアインターナショナル、通称FFIが開催される。少年サッカー世界一を決める。お前たちはその代表選手なのだ」

「世界………!すげえぜみんな!次は世界だ!」

円堂が拳を掲げれば、みんなも応えるようにおお!と腕を上げた。

「世界か」

「ついに世界と戦えるんだな」

「円堂さん、頑張りましょうね」

皆、それぞれが思いに耽る。

「腕が鳴るぜ!」

そう声高らからに叫んだのは染岡で、彼は両手の拳をぎゅっと握りしめていた。

「日本一の次は宇宙一、宇宙一の次は世界一と来た!」

「そもそも宇宙一にはなってないけどね」

うしし、と木暮が横ヤリを入れると染岡はビキビキと青筋を立てた。

『まあまあ、落ち着いて』

どうどう、と染岡を宥めに行く。

『正論パンチされたからって怒らないの』

うぐぐ、と染岡は悔しそうに木暮を見下ろしている。

「そーそ。オレの言ってる事の方が正しいもんね」

そう煽りつつ木暮は私の背中に隠れた。
染岡の顔おっかないのはわかるけど隠れるくらいなら煽るのやめなさいな、全く。

「いいか、あくまでこの22名は候補だ。この中から16名に絞り込む」

「まず、11人ずつ2つのチームに分けます」

響木さんが話だし騒ぐみんなを静めた後、夏未ちゃんが説明を始めた。

「その2チームで2日後、日本代表選手選考試合を行います」

「では、メンバー編成を発表します」

秋ちゃんが引き継いで、手に持っていたバインダーを見た。

チーム発表が行われる中、私は春奈ちゃんと共に次の準備へ移動する。

『ここまで運ぶの重くなかった?』

体育館の外に出て、その入口横に置かれ2つのダンボールを見た。

「大丈夫です。今までのマネージャー業で鍛えられましたから!」

『そっか。えっと、こっちが青で、向こうが白か』

ダンボールの中身をチェックして、1つ抱き抱えると、ずっしりとした重みが腕にかかった。

「こっちも運んじゃいますね」

よいしょ、と春奈ちゃんがもうひとつのダンボールを抱え、2人でそれぞれの箱を体育館の中に運べば、選手達が体育館の右と左にチーム事に別れていた。

右側に、円堂、染岡、松野、壁山、吹雪、佐久間、綱海、土方、武方、ヒロト、飛鷹の11名。
左側に鬼道、豪炎寺、風丸、栗松、シャドウ、木暮、立向居、不動、緑川、目金弟、虎丸の11名。

「どうぞ、よろしく。鬼道クン」

「黙れ!」

にやにやと挨拶をする不動に怒鳴りつけたのは佐久間だった。

「ご不満の様だけどさあ、俺だって響木監督から認められてここに来てんだよ。なあ、水津チャン?」

『そうね。あと、さんね?』

キミにちゃん付け許可してないか??
わざわざ私に話を振ってくるあたり、ちゃんと正式に呼ばれたものだと、知らせるためにチェックリストを見せろということなのだろう。
一応、不動の名の所を指してバインダーに挟まれた紙をみんなに見せる。

「分かっている」

鬼道感情を殺したようにそう呟いて不動に背を向ける。

「分かりゃあいいんだ、分かりゃ」

ふふん、と勝ち誇ったように不動は笑ってみんなの輪から外れていく。

「鬼道……」

心配そうに円堂と、未だ怒った様子の佐久間が鬼道に寄り添った。

「なんなんだアイツ。いちいち嫌味だな」

土方も怪訝そうに、1人離れていく不動の背中を見つめている。

「相手にすんなよ」

そう言って近づいた染岡が、ぽん、と鬼道の肩を叩いた。
だが、そう言った染岡が不動を睨む目は鋭いものだった。

まあ、鬼道も佐久間も染岡も因縁あるし、仲良くしろってのは無理な話よね。

「円堂、鬼道。お前たちがそれぞれのチームのキャプテンだ。いいな」

はい!と円堂が力強く、鬼道は短く、はい、と答えた。

「音無、水津」

響木さんに名を呼ばれ、はーい、と私達はそれぞれのダンボールの箱を開けた。

「それじゃあユニフォームを配りますねー!」

空気を変えるように春奈ちゃんが大きな声で叫んで、私が青のユニフォームを円堂チームに、春奈ちゃんが白のユニフォームを鬼道チームのメンバーに手渡して行くのであった。


2日後の試合
結果は全て知っているし、それは無理だと分かっていながら、みんなに受かって欲しい。そう願いながらユニフォームを渡すのであった。
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