フリースタイラーの変遷

□世界への挑戦編
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トレーナーを引き受ける事を決めてからはとにかく忙しかった。
響木さんと久遠さんから覚えろと渡され教材は増えるし、強化選手選びの話し合いに参加させられたり……。おかげで冬花ちゃんが、サッカー部の様子を見に来たって
日も会えなかったし。


まあ、そんなこんなで忙しい日々が過ぎ、待ちに待った発表の日。
響木さんが呼び出した子供たちが雷門中の体育館へと一堂に会する。

私は事前に用意したチェックリストで到着した子供たちの確認作業を仰せつかった。
事前にみんなの顔を知っている私に適任の仕事だ。


1番最初に体育館の扉を開けたのは、鬼道だった。

『おはよう鬼道。早いね』

「ああ、おはよう。車で来たからな。それに早いのは俺だけじゃないぞ」

きちんと朝の挨拶を返してくれた行儀のいい坊ちゃんは自分の後ろを振り返った。

「なんだ。オレたちが1番乗りなのか」

そう言って鬼道の後ろから現れた右目に眼帯をした長髪の男の子が体育館の中をぐるりと見回した。
なるほど、鬼道の家の車で一緒に来たのか。

『いらっしゃい、佐久間』

「ああ」

最後に会った時は、まだ松葉杖をついていたが……。
不安げに彼の足元を見れば、佐久間は小さく笑った。

「相変わらずの心配性だな。この数ヶ月で全快したよ」

この通りと、佐久間は軽く体育館の中を走って見せた。

『そう。良かった……』

ホッと息を吐く中、次々と他の子達も体育館に入ってきた。

『おはよう、風丸、豪炎寺、栗松、壁山』

流石に雷門中生は、近隣に住んでるから早いね。
チェックリストに印を付けて行く。
後から、松野とシャドウもやってきた。

「あれ、円堂くんはまだ来てないんだね」

そう言って現れたのは、顔色の悪い赤毛の少年と、柳色の髪の毛を後ろで結んだ少年だった。

『うわ、でた』

「うわって、酷いなぁ」

そう言って彼は苦笑いを見せた。

『いや、だってヒロト……キミ、今までの私とのやり取り分かってる?』

「俺からしたら警戒対象だったんだよ」

『そりゃまあ……、事前に知ってたらそうね』

「納得しちゃうんだ」

なんの話しというように、柳色の髪の少年は不思議そうに首を傾げている。

『緑川は私の事知らないんだ』

そう聞けば、彼はキョトンと目を丸くしていた。

「なんで俺の名前……」

「ああ、彼女宇宙人だから」

真顔でヒロトがそういえば緑川は彼に白い目を向けた。

「ヒロトさぁ。面白くないよ、そのネタ」

「いや、ネタじゃなくて……」

まあ、宇宙人は正しくないよね。異世界人だし。

「リストにチェックしてるくらいだし、事前に俺の情報持ってたってところかな」

『うん。それも正解』

実際事前に知ってたし。

「緑川には後で俺から説明しとくよ。それより、父さんとは話せた?」

『ああ、うん。だけど……欲しい情報はなかった』

みんなが先に吉良さんから聞いたって話以上のものは聞けず、面会に行った彼も神代についての詳しい情報がなく申し訳なさそうにしていた。

「そっか……。あのさ、梅雨さんの体の事なんだけど……」

「よお!お前ら、元気だったか!!」

ヒロトが何か言いかけたタイミングで大きな声と共に体育館にピンクの長い毛を持つ少年が入ってきた。
彼の後から、ガタイのいい人トサカ頭の少年と、路考茶色の短髪の少年と小柄な青髪の少年も続いて入ってきた。

「綱海か。お前は相変わらず元気だな」

「土方」

「立向居でやんす!」

鬼道に豪炎寺、栗松がそれぞれを出迎えている。

『えっと……』

チェックリストに印を付けて……っと。
紙から顔を上げれば、小走りで木暮が駆け寄ってきた。

「梅雨さーん!」

なんだよ、1番に私の所に来るとか可愛い奴だな。

『木暮、久しぶりだね』

よしよし、とそばにやってきた彼の頭を撫で付ける。

「へへっ、オレ、梅雨さんにお土産持ってきたんだ!」

『お土産?………カエルならいらないよ?』

嫌な予感がしてそう言えば、木暮はちぇーと口を尖らせた。

「バレたか」

『壁山にでもあげておいで』

「そーする!」

ワクワクとした面持ちで木暮は壁山の方へ走っていった。
すまない壁山。南無と手を合わせる。
数秒後に壁山の悲鳴が響いた。

『で、なんだっけ?』

と、話の途中だった事を思い出してヒロトを見る。

「ううん。忙しそうだしまたゆっくり話せる時に話すよ」

『そう。とりあえず、ヒロトと緑川も響木さんが来るまで待っててね』

そう言えば、頷いた2人は体育館の奥の方へと移動して行った。

「わー!水津さん久しぶり!」

「オイ!勝手に先行くなよ!」

ドタドタと駆け寄ってくる音とその声に振り返れば、銀髪の少年とピンクの坊主頭が居た。

『久しぶり吹雪。染岡は駅まで迎えに行ってたの?』

「…こっち来るって連絡あったからな」

照れたように染岡がそう答える。
最初あんなにギスギスしてたのにすっかり仲良しさんになっちゃって。

「染岡くん優しいんだよー」

『ふふ、そうだね。優しいよね』

「なっ、バ、バカ言ってんじゃねえよ」

おっ、照れてる照れてる。

照れた染岡を吹雪と見ていたら、その後ろリーゼント頭の少年が立っていた。

『ああ、いらっしゃい。響木さんが来るまでもう少し待っててね』

そう声を掛けると彼は返事もなく体育館の隅っこへ歩いていった。

「なんだ、アイツ。感じ悪ぃな」

『まあまあ、彼も参加者だから仲良くね』

「参加者って、そう言えばこの集まりって結局なんなの?」

『それは言えないお約束でして』

秘密と人差し指指を口元に持っていけば、吹雪は、あっそっかと呟いた。

「ごめんね。ボク、事情知ってたのに」

『いやいや。まあ、悪い話じゃないから安心なさいな』

「お前がずっと忙しそうにしてたのって、コレのためか?」

『うん、そうそう。ほら、久々に会う顔もたくさんあるから、みんなと話しておいで』

ぽんぽん、と2人の背中を叩いて体育館の奥へと追いやる。


『悪いね、お待たせ』

2人が居なくなった後ろに居たのは、眼鏡をかけた小柄な少年。
よく見る顔だが、彼は違う。

『双子の弟くんの方だよね』

「ええ。兄がいつもお世話になっているようで」

目金の姓を持つ彼は、サッカー部の目金の双子の弟。目金一斗。

「しかし、よく分かりましたね」

『分け目が違うじゃない?』

そう言えば彼は目をぱちくりとさせた。

「そう言えば、兄もよく双子キャラは髪の向きや双葉の数で見分けると言っていましたねぇ」

『そうそう、オタクあるある。さて、始まるまで、もう少しかかるから待っててね』

「はい」

そう言って、彼は体育館の奥へ進んで行った。

「勝負だ、豪炎寺ィ!!」

そんな声と共に入ってきたのは……、たらこ唇で紫のモヒカンのサングラスをかけた……武方………武方……。
えっと、
チェックリストを確認する。
そう。武方勝。

一直線に豪炎寺の所に向かい、相変わらず突っかかっている。
和解したんじゃなかったっけ??


チェックリストもだいぶ埋まったが………。
来ていないのは、あと3人か。

ヒーローは遅れてやってくる
数分後、やっとこさ主人公がもう1人を連れて現れたのだった。
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