フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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試合終了後、潜水艦が沈み影山が逃走し、到着した救急隊に重傷者の佐久間と源田が連れていかれ、瞳子さんは、愛媛に駆けつけた響木さんに港の倉庫裏に呼び出され説教されている。
物語通りだ。

その他の真・帝国学園イレブン達は影山の関係者として事情聴取の為、警察で保護されることになり、ワゴン車に乗せられる。
爆発の最中、ひっそりと逃げようとしていた不動は警察官に捕らえられて、現在、鬼瓦刑事に引率されながら1番最後に乗り込もうとしている所だった。

『鬼瓦さん、ちょっと待って』

呼び止めて、不動に近づけば、なんだよ、と不機嫌そうな彼は眉間のシワをより深くさせた。

『ちょっと顔上げて』

「ハァ?」

嫌そうな顔をするだけで、上を向かないので、右手で彼の顎を持ち上げ、左手で彼の首にかかっている、紐を手に取った。

「あ?、オイ!」

グイッとその紐を思いっきり引っ張れば、いててて!と不動が声を上げる。もう少し力を入れて引っ張れば、ぶち、と音を立てて紐がちぎれた。

『よし』

「よしじゃねぇよ!!首取れんだろうが!!」

『大丈夫ちゃんと繋がってるわよ。それに、こんなもん一流選手なら要らないでしょ』

「……てめぇ。どこまで知ってんだ。マジで気色悪ぃな」

実際自分の事何でも知ってるみたいな口調で、話されたら気色悪いだろうね。

『君がプチトマト嫌いって事は知ってるよ』

そう言えば、不動は、苦い顔してげぇと舌を出した。

『知ってるついでに言うけどさ。そのうち、こんなもの使わないでも君の実力を発揮するチャンスがくるからさ、その時は二流じゃないって証明してよ』

「てめぇ、アドバイスするフリで実は喧嘩売ってんだろ。お前も影山も人のこと二流二流って……、覚えてろよ!!」

そう言って不動は踵を返し、ズンズンと自らワゴン車に乗り進んで行った。

『あ、鬼瓦さん、これ調べといてください。真・帝国の子達みんな付けてるから、なんか手がかりになるかも』

そう言って、紫色の輝く石がついたそのペンダントを鬼瓦さんに手渡す。

「ああ、分かった。それと、例の件だが……」

そう言いながら、鬼瓦さんは視線だけをキョロキョロと動かして辺りを見渡した。

「ゴーヤチャンプルーが食べたくなってきたな」

『あー、いいですね』

「だが、ゴーヤが時期じゃないから、なかなかなぁ」

『手に入らないですもんね。意外と作るのも大変ですしね、豆腐は先に入れる派です?』

そう聞けば、ああ、と鬼瓦さんは頷いた。

「晩飯の話か?」

そう訪ねながら、響木さんが瞳子さんを連れて戻ってくる。

「ああ。お前も店を閉めてて食べるところがねぇからな。最近は嬢ちゃんに倣って自炊してんのさ」

「ほう?」

「じゃあ、俺は子供たちの事情聴取があるから行くぜ。またな、響木」

そう言って鬼瓦さんがワゴン車に乗り込めば、響木さんは、さてと、と呟いた。

「水津。お前は、今から俺と病院だ」

『え、』

「え、じゃない。腹を蹴られて痣になってると報告を受けている」

サングラス越しで、分からないはずの響木さんの目が怒ってる気がするのはなんでだろうねぇ……。



私は、響木さんに連れられて、愛媛内の佐久間達が運ばれたのと同じ病院で検査して貰うことになった。
その間、他のみんなはと言うと、1週間後のイプシロンとの戦いがどこで起こるのかも分からないし、と言うことで私を置いて一足先に、1度、稲妻町に戻る事になった。

とりあえず病院でCT検査を受けた結果、肝臓などの内臓損傷はないが軽度の腹部挫傷で、少量だが内出血があるため、入院する程ではないが暫くは安静にとの事だった。

同じくお腹にダメージを負ったはずの影野は、長期入院になっているから、私は相当運がいいし、影野の怪我が相当酷いものだったって言うことがわかる。

『暫くは、運動禁止だそうです』

「まあそうだろうな。後で瞳子監督にも伝えておこう」

『はい。ところで、響木さん、佐久間と源田の方は?』

2人の保護者として話を聞いてきた響木さんに、問いかける。

「源田の方は、現状指先の感覚が無いらしいが、それほど症状は酷くないらしい。リハビリすれば完治するだろう、との事だった。もう1度、ビーストファングとやらを完全に使っていたら、指先どころか両腕が使い物にならなくなっていただろうな」

ビーストファングは発動仕掛けただけでキャッチにまで行ってなかったのが幸いしたのか、そこまで酷くないようだが、問題は……3回皇帝ペンギンを使った佐久間の方だ。

「佐久間の方は、横紋筋融解症という症状が出ているらしい。筋肉痛と嘔吐頭痛、痙攣が暫くは続くだろう、と」

『それ、下手したら寝たきりになるやつじゃないですか……』

過度な筋トレなどオーバーワークでなる病気だったはずだ。

「ああ。今は医者に任せることしかできん」

症状を聞いてしまっては、先を知ってるから大丈夫だとは、言えなくなってしまった。私が関与したせいで、源田の症状はそこまで酷いものにならなかったが、逆に佐久間にしわ寄せが行った?
だったら、やっぱり、何もしない方が良かったのでは……。

「水津、大丈夫か」

『……はい』

「気にするなとは言えんが、お前が2人を助けようとしていたことは他の奴らから聞いている。自分が失敗したからなんて思うんじゃないぞ」

そう言って響木さんはグリグリと私の頭を撫でる。

「お前さんのせいじゃない。悪いのは、影山だ」


煩悶憂苦
本当に、影山のせい、で済ませれればどんなに良かっただろうか。
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