フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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階段を登った先はすぐにグラウンドに繋がっていた。

「鬼道。自分の愚かさを悔い、再び私の足元に跪いた仲間を紹介しよう」

そう言って影山が振り返り嗤う。
その後ろの高台に2人の人物が立ち、待ち構えていた。

「なっ、」

「源田に佐久間...!?」

鬼道と円堂が驚くのを見て、ニヤリと笑っていた不動が、無反応の私の方を見て更に口角を上げた。

「やっぱり知ってたか」

『いや、知ってる前提で話しかけてきてた癖に、何を今更』

「俺は話に聞いただけで、ほんとかどうか知らなかったんでね」

そんなやり取りを端で不動としていれば、鬼道の前に源田と佐久間の2人が飛び降りて来た。

「久しぶりだな、鬼道」

「フン...」

かつての仲間と対峙した事に、不動がぺちぺちと雑な拍手を送る。

「感動の再開ってやつだねぇ」

「では、元チームメイト同士仲良く話たまえ。私と水津は奥で話をするとしよう」

そう言って影山は歩き出す。

『え、あ、はーい』

「なっ!はーい、じゃない!!1人で行こうとするな!!」

怒った鬼道に腕を掴まれて引き止められた。

そんな私たちの間を裂くように、サッカーボールが飛んできた。

「鬼道。お前の相手は俺たちだろう」

「お前は邪魔ださっさと行け」

サッカーボールを飛ばしてきたのはどうやら源田で、佐久間が早く行けと、顎でクイと、影山の方を指すので、それに従って影山を追った。

「待てよ水津俺も!」

そう言ってついてようとした円堂の前に不動が立ち塞がる。

「これ以上は、関係者以外立ち入り禁止だぜ」

「何故だ……?何故お前達がアイツに従う!」

ケケケと愉快そうに笑う不動と、鬼道の悲観した叫び声を聞きながら、影山は入っていった通路に後追って入る。
その先に続く扉を、影山は開けて手で押えた。

「さあ、入りたまえ」

『どうも』

礼を言って中に入れば、いつもの変な椅子が置いてあり、ホログラムでできた映像画面が並んでいる部屋だった。
てっきり黒服の怪しい男とか居て、捕まるんかなーと思っていたから、誰も居ない部屋で驚きだ。

『本当に話するだけなんですね』

「期待したものではなかったか?」

『まあ、デートにして簡素ですね』

そう言えば影山は鼻で笑い、あの変な椅子に腰を下ろした。
扉は空けてくれたのに私の椅子はねーのかよ。

『まあいいですけど。で、なんですか?エイリア石で洗脳する気ですか?しようとした瞬間その顔面にリフティングボールでシュート決めますからね』

護身用に持ってるよと言わんばかりに、ジャージのポケットの膨らみを叩いてみせる。

「随分と過激だな。私は話をしようと言ったはずだが」

『話って言ったって、私が異世界から来たって情報を雷門イレブンに黙っている事を条件に、其方に付くように、とかって脅しでしょう?』

「ふん。今更脅したところでこちらにつく気はないだろう。そう簡単に事が運ぶのなら不動が手を焼いて帰ってくる事もなかっただろう」

『いや、あれは半分タイミングが悪かったですよ。エイリアの方が来たんで』

「……ほう。それは初耳だな」

あれ?そうなの?

『不動から邪魔してきた少年の話は聞かなかったんですか?』

「……。皇帝陛下が私の元にお前が下るのはお気に召さなかったと言うわけか」

なるほどな、と影山は呟いて口元を歪ませた。

あっちと影山とでやっぱり相違があるんだな。

「では尚更貴様に聞かねばならんな。貴様が、チートだと称したその能力の事を」

『あー、未来予知のことですか?』

そう聞けば影山は、いいや、と言って笑った。

「未来予知ではないだろう。貴様は過去の事も知っているのだから」

やっぱりこのおじさん頭が切れるな。
適当言って騙せば良いと思ってたけど、そうはいかないか。

『...じゃあなんだと思ってるんですか?』

「情報だ。どうやって得たのかは不明だが、貴様は何らかの形で特定の情報のみを保持してこちらに来た。違うかね?」

いや、天才か?

『私が赤ペン先生なら、はなまるあげたいくらいですね。そこまで分かってるなら私がこっちについてる理由も察しがつくんじゃないですか?』

「ああ。だからこそ、貴様は勧誘に乗るだろうと不動を送ったのだが、どうやら見込み違いのようだった」

これからあの2人が何をするか分かってるだろって事で、私なら2人を守るために影山側に付くといという算段だったわけか。

『思ったより優しくないんですよ、私』

「そのようだな。最初にジェミニストームが攻め入った時も、試合に参加していない。だからこそ、余計に貴様がそちら側にいることが理解できない」

……まあ、普通なら別の世界から来てその世界の情報を知っているなら、やることといえば歴史改変だろうな。
影山の視点で言えば、負ける雷門を勝たせるために私がこっちにいる、と思うのが普通だ。

「あの時私や鬼道の前で、ベラベラと喋った割に、雷門イレブンに情報の共有をしていない理由も分からないな」

やっぱり、それであの場での発言をせず、ココに呼んだわけか。

『いや、普通いきなり異世界から来ましたー!って言って信じます?しかも今、宇宙人が攻めてきてる中、異世界から来て彼らの情報を知ってるなんてどう考えても怪し過ぎますよ。1度スパイが潜り込んでたチームですよ?エイリア学園の者じゃないなんて信じてもらうの難しいじゃないですか』

そう言えば、影山はそれはそうだな、と頷いた。

「ところで、水津よ。お前は何かを企んでいる時、雄弁になるな」

『そもそもココにホイホイついてきてる時点で何も企んでないわけないじゃないですか』

「ではその企みを聞こうか」

そう言って、影山は足を組みかえた。

『いや、教えるわけないじゃないですか。さっきからこっちばっかり情報提供してるし、私にも何か利がないと』

「最初に貴様が自分で言ったではないか。貴様の情報を黙っている、という取り引きだと」

『別に皆に異世界人だって言ってもらってもいいですよ?さっき言ったように信じてもらうのは難しいと思いますけど』

そう返せば、影山はこちらを見つめたまま黙った。

「この私と駆け引きをしようと言うわけか。やはり、貴様は頭が切れる…。そちらには惜しい人材だ。1度の裏切りは見逃してやってもいい。悔い改め私の元につく気はないか」

『佐久間や源田みたいに?』

そうだ、と影山は頷いた。

『悪くないですけどね。でも、お断りします。前にも言いましたけど、貴方を踏み台にします』

「そうか。やはり相容れないか」

そう言って影山は立ち上がった。
思わずビクリと肩を揺らし、ファインディングポーズを取れば、影山は鼻で笑って、扉の方へ歩いた。

「話は終わりだ。行きたまえ」

そう言って扉を開けた影山を見て、キョトンとする。
えっ?本当に話だけで終わったんだけど。

後ろから刺されたりしない?と警戒しながら、影山の横を通り扉を潜った。

『え、と。失礼しました?』

疑問を浮かべながらそう言って、頭を下げれば、影山はフッと笑って扉を閉めた。

『???』

1回帝国学園に呼ばれた時も思ったけど、意外とアッサリ帰してくれるよな。

まあ、いいか、とグラウンドに続く廊下を歩きだした。

とりあえず、影山が、私が雷門を勝たせるために動いていると思ってる事、そしてエイリア学園側と相違があるって事が分かっただけで十分だ。
って言ってもまあ、私が雷門側についてるにしてはおかしな動きしてると向こうも思ってはいるみたいだけど…。
こればっかりは、私が関わらないことで話が変わり、関わっても話は変わらないとかいうおかしな現象のせいと、個人的な心情のせいだから、影山には分かんなくて当然なんだけど。

そうなるとやっぱり情報を持ってると分かった上で、私が何も変えようとしていないと判断したエイリア学園の方が、変な動きしてるんだよね。なんでそこまで分かってるのか…って事。
ヒロトのいうあの人ってのは、影山とは繋がりがないようだし……こっちは結局わかんないことだらけだ。


警戒すべきは
影山よりエイリア学園。
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