フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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皆が再度ポジションに戻る中、ピッピッピーとホイッスルが終了を告げた。
ロスタイムも終了。スコアは2対1。

「やった...?やったぞー!!」

そう言って円堂が天高く拳を突き上げた。

「試合終了ー!!雷門イレブンがエイリア学園!ジェミニストームを打ち破ったー!!もうサッカーによる破壊は起こらない!これで地球は救われた!」

「やったー!!」

「勝った!勝ったぞ!宇宙人に勝ったんだ!」

「おう!」

角馬くんの熱の篭ったアナウンスをバックに皆が喜びの声を上げ、抱き合ったり飛び跳ねたりする中、ひとり、ふぅ、と息をつく。

勝利はとても喜ばしい。だが...。
ちらり、と反対コートにいるジェミニストーム達を見た。
彼らは喜ぶ雷門イレブンを見て、呆然と突っ立っていた。

「こんな馬鹿な...我々がただの人間如きに...」

ポツリ、とレーゼが呟けば、そんな彼の前に夏未ちゃんが歩み寄った。

「地球にはこんな言葉があるわ。三度目の正直」

夏未ちゃんが、ふふん、と笑いながらそう言えば、レーゼはギリっと歯を食いしばった。
散々ことわざで馬鹿にされてきた仕返しをした夏未ちゃんは、その顔を見て満足げに私の傍に寄ってきた。

「やったわね」

『うん』

「...?あまり嬉しそうではないわね?」

首を傾げる夏未ちゃんに、そんな事はないよと首を振る。
その後ろでは、白恋中の子達が吹雪を取り囲んで学校を守ってくれてありがとうと感謝の言葉を述べたり、塔子ちゃんがお父さんに連絡を取ったり、風丸が、病院にいる雷門イレブン達に思いを馳せたりしている。

『ただ、』

「ただ?」

これで終わりでない。それを知っているから一筋縄では喜べない。
もう一度ジェミニストームを見る。
顔色が悪いな。

『...ちょっと嫌な予感がするだけよ』

まあ、予感じゃないんだけど。

「...貴女の嫌な予感は、本当に嫌なやつじゃない...」

理事長の時のことを知っている夏未ちゃんは、心底嫌そうな顔をして見せた。

「当たらなければいいけれど...」

『そうね』

ごめんね。よっぽど私の介入で話がおかしくなんない限りは当たるよ。


「監督!俺たち勝ちました!ありがとうございます」

そう言って円堂を筆頭に何人かが監督の前に集まって頭を下げる。
瞳子さんはいつもより少し口角を上げて頷いた。

「おめでとう」

「お前たちは知らないのだ...」

祝福を贈る瞳子さんの言葉の後にそんな言葉がぼそりとレーゼから呟かれた。
なんだ?というように皆が一斉に彼を見た。

「本当のエイリア学園の恐ろしいさを...!我々はセカンドランクに過ぎない。我々の力など...イプシロンに比べれば...!」

え?と皆が首を傾げる。

『イプシロン、ね』

ふと、空を見れば影が差した。
そして、どこからともなく、もくもくとスモッグが現れる。

「な、なんだ!?」

「無様だぞ、レーゼ」

その声と共に紫色の眩い光が辺りを包んだ。声のした方を向けば、高台に11人の影が現れる。
光が収束し、徐々にその影が姿を表した。

「デ、デザーム様っ...!」

新たに現れた11人の宇宙人の中央に居る、男をレーゼはそう呼んだ。

「覚悟は出来ているな」

そう言って、デザームは手に持っていた黒と黒緋のサッカーボールを掲げてみせた。そのボールからはピンク色の火花の様なものがバチバチと出ている。

「お前たちを追放する」

「デザーム様...、」

がくり、とレーゼが膝から崩れ落ち、地に両手を着く。

打ちひしがれる彼に、いやジェミニストーム達に向かって、デザームは持っていたボールを真っ直ぐ下に落としたあとそのままシュートした。

どういう原理か、サッカーボールは彼らの前で止まり黒緋だった部分がピンク色に発光し、彼らを包み込んだ。
そして、その光が収束すればその場から何も無くなってしまった。

皆が驚いて、言葉にならない声を発して居れば、再び高台の方から眩いピンク色の光が溢れた。

「我らはエイリア学園、ファーストランクチーム、イプシロン!地球の民達は、やがてエイリア学園の真の力を知るだろう」

皆が、あんぐりと口を上げて見上げる中、イプシロンたちは光の中に消えて行った。

「イプシロン...!宇宙人との戦いはまだ終わってないんだ...!」


新たなる強敵
貴女の嫌な予感は本当に当たるわね...、と夏未ちゃんにため息を吐かれた。占い師にでもなったらどう?と言う彼女に、あははは...、と思わず苦笑いをした。
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