フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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奈良シカTV内のエレベーターに乗って最上階で降りればそこは眩い紫の光で溢れていた。
紫の光を放つサッカーボールを中心に11人の影が集まっている。

「レーゼ!!」

円堂が叫び名を呼べば、11人の中心に居た宇宙人がゆっくりと振り返った。
宇宙人達にビシッと人差し指を向ける円堂の横で、豪炎寺が何かにハッとした後、俯いた。

「探したぜ!エイリア学園!」

「探した?我らに叶わぬ事が分かり降伏の申し入れか?」

眩かったサッカーボールの光がゆっくりと消えていく。

「だが、ゲームは始まったばかり。地球人は真に思い知らなければならない。我らの大いなる力をな」

「誰がお前らに降伏なんか。俺たちが探してたのはコイツでもう一度勝負する為だ!」

パンッと円堂は持っていたサッカーボールを両手で挟んで見せた。

「勝負?」

「学校めちゃくちゃにされて黙って引き下がれるか!」

「マックスや半田、みんなの為にも今度こそお前たちを倒してやる!」

染岡と風丸が意気込んでそう言えば、エイリア学園の宇宙人たちはクツクツと笑い声を上げた。


「勝負だ、レーゼ!」

「フン、我らも甘く見られたものだ...。いいだろう!」

え?あれ...ここ否定されなかったっけ...???

「二度と立ち上がれないよう叩き潰してくれよう」

ああ、そうか。これも私のせいか。私がさっきの試合のままユニホームを着てるから11人でカウントされてるのか。

「円堂、あたしも一緒に戦わせて。パパを取り戻す!あんた達を倒してね!!」

まあでも、塔子ちゃんがちゃんとチームに入ってくれるならいいか。
これで私もお役御免だろうと瞳子さんを見れば目が合った。

「水津さん財前さんにユニホームを」

『あ、はい。塔子ちゃん着替えもあるから1度キャラバンに戻ろうか』

「うん、分かった!」

『秋ちゃんと春奈ちゃんも、ドリンクとタオルの準備あるし一緒についてきて』

はーいと返事をしてくれた2人と塔子ちゃんを連れてエレベーターに乗り込み、1階で降りて外に停めたキャラバンに向かう。

キャラバンの荷台を開けて、ダンボールからユニホームを取り出す。
確か塔子ちゃんは...8番だったよね?

『塔子ちゃんこれサイズどう?』

「多分大丈夫だと思う!」

『じゃあこれで』

どうぞ、と手渡せばその場で着替えようとするから、キャラバンの中で着替えてと塔子ちゃんを押し込む。

「ドリンクボトルと、タオルと...救急箱...後スポドリの粉ね」

「お水はどうします?」

「テレビ局内の水道借りましょう」

『2人とも荷物おっけー?』

大丈夫だと2人が頷いたので荷台を閉める。

「梅雨先輩、1番重いの頼んでも良いですか?」

『いいよいいよ。粉よね?』

スポーツドリンクの粉、缶のでっかいやつだから重たいんだよね。

「はい!」

『ドリンクボトルも1セット持とうか?あー、けどタオルの方が大変かな』

「そうねぇ」

うーんと秋ちゃんが頭を悩ませたところで、キャラバンの中から塔子ちゃんが降りてきた。

「荷物持ちが必要ならあたしも手伝うよ!」

おお、ユニホーム姿いいね。しっくりくる。

『じゃあお願いしようかな』

「任せてよ!」

トンと胸を叩いた塔子ちゃんにタオルを半分、もう半分を秋ちゃんが、春奈ちゃんは救急箱とドリンクボトル6個分が1セットになってるホルダーを持ってもらって、再び屋上に戻る。

「スターティングメンバーを発表するわ」

戻ってベンチに荷物を置いていれば、そう言って瞳子さんが注目を集めるように手を叩いた。

「FWに豪炎寺くん、染岡くん。MFに鬼道くん、一ノ瀬くん、風丸くん、財前さん。DFに壁山くん、栗松くん、土門くん、目金くん。GKに円堂くんで行くわ」

「えっ、ボクですか!?」

目金は動揺した様子でオロオロとしている。
不安そうな目金には悪いが、ああ、良かったと一息つく。

「なんか、ポジション奪ったみたいで悪いなぁ」

隣でそう言った塔子ちゃんにイヤイヤと首を振る。

『私そもそもマネージャーだから気にしないで』

そう言えば塔子ちゃんは、え?と驚いた顔を見せてくれた。

「そうなのか!?」

『うん』

「じゃあ、梅雨の分もあたしが戦ってくるよ」

そう言って塔子ちゃんはグッと拳を握って見せた。

『うん、任せたよ』

そう言えば、ああと力強く頷いた後、彼女はにっと笑って見せた。

「さあ!雷門中対エイリア学園の試合、まもなく開始です!実況は本日も角馬でお送りします」

何とも都合のいいことに、屋上はサッカーコートにもなっている。
てか屋上にサッカーコートがあるテレビ局ってなんなの?なんかの収録のセットなのかなコレ。


「頑張って...みんな」

ぎゅっ、と秋ちゃんが両手を握って祈っている。

結果を知ってるとはいえ、私も不安ではある。
緊張の面持ちでフィールドを見つめる。

『あ、』

もう居るよ、余計なの。
坊主頭にグラサンの怪しいおじさん3人がフィールドの向かい側に立っている。

「......」

視線を感じて振り返れば、瞳子さんがこちらをじっと見ていて何だろうと首を傾げれば、目を逸らされた。

そんなことをしている間に、スミスさんが試合開始のホイッスルを鳴した。


「豪炎寺のキックオフで試合開始!一気に上がる雷門中!相手陣内に攻め込んだ!」

早々にFWとMF全員で攻め上がっている。ショートパスで繋いで前線に押し上がったが、塔子ちゃんから豪炎寺へと出されたパスをジェミニストームの2番コラルにボールを奪われてしまう。

「雷門ボールを奪われたー!!」

コラルから6番のパンドラへとパスが渡され、今度はジェミニストーム側が攻めに転じる。
11番のディアムにボールが渡されて、駆け上がってくるのを前に円堂がゴール前で構える。
必殺技ではないただのシュートが、あっという間もなく、円堂ごとボールをゴール内に叩きつけた。

「円堂くん!」

「なんという速さ!?エイリア学園、開始30秒で先制です!」

やっぱり円堂が必殺技出すまでに至れていない。今までならゴッドハンドが間に合わなければ、熱血パンチででも食らいついていた円堂が反応出来ないんだもんなぁ。

勝負はこれからだ、と皆が切り替えて試合再開したはいいものの...、圧倒的速さでジェミニストームに翻弄されては点を奪われを繰り返す。


「エイリア学園が更に追加点!ついに得点は10対0...!」

すっかりみんなはボロボロになって疲弊した様子だ。

「これじゃ前回と同じじゃない...」

そう言う夏未ちゃんの傍で秋ちゃんが監督...、と振り返って見るが、瞳子さんはただ何も言わずフィールドを見ている。

試合が再開して直ぐにジェミニストームがボールを奪い、雷門側の必死のディフェンスを意図も簡単に掻い潜っては精密なパス回しで進んでいく。
そんなみんなのディフェンスが躱される中、3番ギクから5番カロンへのパスを鬼道がカットしてみせた。

「豪炎寺!」

鬼道からフリーだった豪炎寺へとセンタリングが上がる。

「ファイアトルネード!...!」

渦巻く炎はジェミニストームのゴールへと飛んでいきクロスバーにぶつかってゴールの外に弾かれた。

「外した!?豪炎寺がファイアトルネードを外しました!」

「豪炎寺が...」

「ファイアトルネードを外すなんて...」

一同が壮絶となる中、ふと、3人のおじさんを見れば彼らはニヤリと笑っている。

ドンマイドンマイと円堂が切り替えるように叫び、鬼道が風丸と豪炎寺に何かの指示を伝えてポジションに戻ったところで試合が再開される。
ジェミニストームボールで始まれば、彼らは早々に雷門FW陣を避け上がってきた。8番イオから4番のガニメデに、そこから直ぐにパンドラへと蹴られたボールを今度も鬼道がカットした。

「いけ!豪炎寺!風丸!」

前線に上がった2人へと鬼道からパスが回され、2人は共にボールを天に蹴りあげた。

「おっとこれは...!」

「「炎の風見鶏!!」」

2人で打たれたシュートは、今度は先程より大きくゴールの頭上を通り過ぎて行ってしまった。
そしてシュートミスをした豪炎寺は、蹴る際にバランスを崩したのか、肩から地面に落ちた。

『「豪炎寺!?」』

大丈夫か、と見れば風丸がすぐさま駆け寄って豪炎寺を起こしている。

「失敗です!雷門中またもや必殺技が決まらず...!」

ちゃんと肩から落ちていたし頭は打ってないと思うが...。

「そんなことってあるのかよ...豪炎寺が2回も外すなんて」

土門の呟きに言葉を返す者はいなかった。



エースの不調
そんな中、前半戦終了のホイッスルが鳴り響いた。
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