フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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皆、試合再開の為ポジションに帰っていく。

『少林。入っていいわよ』

「え、いいんですか?」

『うん。ちょっとやらなきゃいけないことあるし』

やらなきゃいけないこと?と少林寺は首を傾げた。

『立向居、おいでー』

「え、俺ですか?」

キョトンとした表情を見せたあと、立向居は駆け足で寄ってきた。
ついておいでと立向居に言って雷門のベンチの方へ向かう。

「あの……」

『手、痛いでしょ?手当てしましょう』

そう言えば、立向居もベンチにいたみんなも、ああ、と納得した

「ほんなら立向居の代わりにウチが出る!」

バッとリカちゃんが勢い良く立ち上がった。

『でもリカちゃん怪我……』

「もう大分ええし、大丈夫や!」

そう言った彼女の顔サッカーしたくてたまらないといった顔をしている。

『そう。じゃあ交代ね』

「よっしゃー!やったるでー!」

腕を軽くグルグルと回した後、リカちゃんはフィールドへと駆けて行った。

『じゃあ、立向居、そこ座って手出して』

「はい」

大人しく座った立向居の差し出された両手を、彼の前にしゃがんで見る。
自分達がやっといてなんだけど、酷いな。

『ごめんね、痛かったでしょ』

「い、いえ、これくらいなんとも」

『強がらんくてもいいよ。……えっと、先ずは冷やさないと……』

ベンチにあるであろう救急セットを探そうとした私の目の前にヒョイと小さな巾着型のアイスバックが差し出される。

「コレですよね!」

差し出してきたのはニコッと笑った春奈ちゃんだった。

『ありがとう。流石ね』

そう言って氷嚢を受け取って立向居の手に当てる。

『痛いだろうけど、少し我慢してね』

「あ、はい」

『手、開いたり閉じたりしての痛みはない?』

「はい。腫れが痛いだけなので、折れたりはしてないと思います」

『そう。よかった………』

ほっと、息を吐く私の横で、春奈ちゃんがニヤニヤと笑っていた。

『どうしたの?』

「いえ!やっぱり梅雨先輩は梅雨先輩だなって!」

『う、うん?』

「人の本質は簡単に変わらないって、先輩が言ったんですよ」

ああ……。確かに、お兄ちゃんとの事で悩んでた春奈ちゃんに言った気がする。

「やっぱり雷門サッカーのお母さんだなーって!」

『ああ、前もそれ、言ってたね』

「はい。梅雨先輩はいつだって優しいですよ。さっきの試合だって、風丸さんや染岡さんがラフプレーしないように、円堂さんや吹雪さんから離すように指示してたじゃないですか」

相変わらず目敏い。流石鬼道の妹。

だってあれはあの状態の2人にとって存在が地雷なのに円堂も吹雪も向かってくるんだもん。もはや魚雷じゃん?そんな相手来たら手酷くなるのはしょうがないって分かる。けど、

『優しいかは知らないけど、あまり酷い事すると、後々2人が気まずいだろうなぁって思って』

円堂や吹雪側が気にしなくても、した方が気にするよね。

「ふふ。それが優しさですよ」

ねー、と春奈ちゃんは立向居に同意を求めた。

『えー、でも、それをしなきゃ、立向居はこんなにシュート受けなくてよかったんだよ?』

「そう言えば、さっきも得点数が違うって言ってましたよね?」

『うん。私が知ってる限りでは、2-2になったところで立向居と円堂が交代するんだったんだけど……思った以上に耐えたよね』

腫れた立向居の手をそっと撫でる。

「あ、でも、俺………ゴールは守れなかったから」

『そりゃあ、まあ、守らせないように仕向けたし?』

「みなさん強かったなあ………まだまだ、円堂さんには追いつけそうもないです」

そう言って立向居はフィールドで、ゴールを守る円堂を見つめた。

『でも諦めないでしょ』

試合中だってもっと早くに円堂に交代することも出来なかった訳では無い。それでも、立向居は手が使えなくなるまで諦めないであの場所に食らいついていた。

「はい。俺、もっともっと強くなります!」

「その意気よ、立向居くん!」

バシン、と立向居の背を春奈ちゃんが叩く。

「痛いですよ、音無さん」

『ふふ………』

痛がってはいるが、立向居も春奈ちゃんも楽しそうだ。
フィールドでサッカーをするみんなも。

『さて、と。じゃあ後は春奈ちゃんに任せようかな』

よいしょ、と立ち上がれば、2人がえっ、と顔を上げた。

「水津先輩、何処に行くんですか……?」

春奈ちゃんが少し不安そうな顔をしていて、思わずその頭をひと撫でした。

『大丈夫。ちょっとこのユニフォーム恥ずかしいから着替えて来ようかなって』

「「あー」」

なるほど、と2人の視線が上下した。
ボディーラインがハッキリと分かるこのユニフォームに、2人の頬がちょっと赤くなっていった。

「そ、そうですね。着替えてきてください」

春奈ちゃんの言葉に立向居も無言でコクコクと頷いていた。

正気に戻れば
普通にこのユニフォーム恥ずかしいんだよね。
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