フリースタイラーの変遷
□脅威の侵略者編
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今度はこちらのキックオフで再開するため、真ん中に染岡と風丸が立つ。
『風丸』
小さく名を呼べば、彼は小さく頷いた。
ピーッとホイッスルが鳴り、染岡が横にボールを軽く蹴り風丸に渡す。
そして今までと同じ瞬足で風丸は敵陣へと走り出した。ヒールでボールを後ろへ飛ばした後に。
全速力で上がる風丸に両サイドから松野と染岡が上がっていくのを見て、私は受け取ったボールを持って走る。
エイリア石で身体能力が上がっているとはいえ、トップスピードを誇る吹雪にはやはり簡単に追いつかれてしまう。
「水津さん！一緒にチームに居て欲しい。去ろうとしたボクに、そう言ったのは水津さんじゃないか！なのにどうして……！」
『そんなの君がいなくなると物語通りじゃなくなるからに決まってるだろッ』
ボールを取ろうと伸ばしてくる吹雪の足から逃げる。
アイスグラウンドで直ぐに固めて来ればいいのに、そうしないのは会話したいからなのか……。本当に甘いな。
「物語通りって……」
『鬼道から聞いてないの？アンタらは私にとって物語の中の登場人物に過ぎないの。今まではバカ真面目にその物語のシナリオに従ってた。私の知らない未来に変わることが怖かったから！』
ボールを両足で挟み、バク転で後ろへ引き吹雪と距離をとる。
『でも今は違う。何が起きても全部力で解決してしまえばいい』
誰もいない左前に、スルーパスを出せば、走り追いついた半田がそのままダイレクトに風丸へとボールを蹴った。
「染岡、マックス！」
風丸が2人の名を呼べば、おう！と返事をして彼らは風丸を中心に集まる。
『あんな風にね』
見てみなよ、と吹雪に示すように目線を送る。
「染岡くん………」
3人は一同にボールを蹴り上げて、宙に跳び、オーバヘッドキックでシュートした。
「「「ダークフェニックス」」」
紫色の禍々しい不死鳥がゴールへ飛んでいく。
「ムゲン･ザ･ハンド！」
立向居から伸びた沢山の手がボールを包み込む。
くっ、と歯を食いしばり立向居は踏ん張っている。
「ふっ、無駄だ」
風丸の言うように、立向居の頑張りは虚しくボールの勢いは止められず、ゴールへ叩きつけられるのだった。
「ダークフェニックスがムゲン･ザ･ハンドを打ち砕いた！これでダークエンペラーズの得点は3点！」
ダークエンペラーズが3点。雷門が1点。
『ふふ……』
本当なら雷門が2点を取ってから進むはずだった試合展開。いいね。ここからどんどん狂わせていこう。
雷門のキックオフで再開して早々に風丸が分身ディフェンスでボールを奪った。
風丸から半田へ、半田から私へとスムーズにパスが通る。
私の加入を1番2番に反対していた半田だが、それでもなんだかんだ連携が上手くいっているのは、フットボールフロンティアの頃から練習付き合ってたからだろうな。
ブロックにきた一之瀬を跳び越えて、後方から上がってきた栗松にボールを回す。
受け取った栗松がドリブルで前進すればその前1列に宍戸、風丸が並んだ。
「「「トリプルブースト！！！」」」
後方の栗松から、宍戸、風丸と順にボールを蹴りシュートを放った。
「これ以上の得点を許すな！守り抜くんだ！」
そう叫んだ鬼道と、おう！と返事した土門の二人でトリプルブーストを蹴り飛ばした。
ボールは弾かれラインの外に転がった。
なんとか防ぐ事は出来たものの、大きくダメージを受けた2人はグラウンドに膝をついている。
転がったボールのスローインはこちらから。
宍戸が外から投げ入れ、受け取ったマックスがそのまま半田だとシュートに向かう。
「「レボリューションＶ」」
放たれたシュートを今度は木暮と塔子の2人が身体を張って止める。
弾かれたボールをすぐさまシャドウが拾って、ダークトルネードで畳み掛けた。
それを今度は綱海がゴール前へ飛び込んで止める。
跳ね返ったボールは私の足元へ。それをつま先でぽんぽんと2回リフティングして大きく宙へとボールを蹴り上げて自分も上に跳ぶ。
「シュートは決めさせないッス！！」
「止めてみせる！」
レインドロップの体制に入った私を見て壁山が立向居の前に立ちは後ろから追いかけてきた吹雪も壁として立ちはだかった。
『止められるものなら止めてみせなさい！』
降り注ぐ雨と共にボールを蹴る。
「待て！それはシュートじゃない！」
遥か後ろから鬼道が叫ぶが遅い。私が蹴ったボールは左からゴール前に回り込んだ染岡へと飛んで行った。
「ドンピシャだぜ！」
そう言って染岡は飛んできたボールをゴールへ向かってシュートした。
雨の中からワイバーンより小型の翼竜が飛び出して、旋回とともに竜巻を起こしながらゴールへ入って行った。
「なっ、」
立向居は手を伸ばしたまま固まっていた。
ピピーッとホイッスルが鳴り響く。
「ダークエンペラーズ！水津と染岡の新たな必殺技で得点だァ！！」
これで4点目。
『よく合わせられたね』
シュートを決めた染岡に近寄れば、へっ、と鼻で笑われた。
「見てたからな」
『そっか』
レイニードレイク
その名になるのはもう少し後で。