フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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「おおっと!ダークエンペラーズ、後半メンバーを変更するようです。少林寺歩に代わり水津梅雨がMFに入るようです!」

角馬くんの実況を聴きながらピッチの土を踏む。
顔を上げて向こう側を見れば、皆が複雑そうな顔をしてこちらを見ている。

ああ。ゾクゾクする。それと共にドキドキもしている。脈打つ心臓に反応するかのようにエイリア石から力がドクドクと流れ混んでくる。

今からこの、誰よりも高く跳べて、疲れもしなくて、怪我もしない、最高の力で物語を壊すんだ。

「天才ゲームメイカーの幕僚だったお前の実力の見せ所だな」

前に立つ風丸が振り向いてそんなことを言ってきて思わず鼻で笑う。

『幕僚?違うよ』

「なんだよ。マネージャーやトレーナー方がいいってか?」

『ま、その肩書きも嫌いじゃないけどね。でも私は──』

ピーッ、と後半戦開始のホイッスルがなる。

『──フリースタイラーだッ』

雷門側のキックオフと共に走り出す。
キックオフされたボールは、最前線になる豪炎寺や吹雪ではなく、その少し後ろの一之瀬に回っている。
こちらのトップスピードである風丸がFW位置にいるから、早々に奪われないように、ってところだろう。

『半田、一之瀬をマーク!』

「言われなくても!」

そう言って半田が向かうが、一之瀬はユースに選ばれている天才。容易に躱すだろう。
そして躱してパスを送る先は………。

「鬼道!」

『だろうね』

飛んできたボールと鬼道の前に飛び上がってボールをカットする。
真っ向勝負じゃ鬼道に勝てないからアクロバットで跳びながら早々に彼から離れる。

「梅雨!何でだよ!」

そう叫びながら塔子ちゃんがマークに付いてきた。

『………』

今、パスが通せそうなのは………。

「どうしてなんだよ」

泣きそうな顔をして塔子ちゃんは両手天高く上げた。

「──ザ・タワー!!」

塔子ちゃんが手を振り下ろせば地面から土のタワーは生えてくる。
この技はブロック率が高い。今までの私なら簡単に止められていただろう。

『ブレイクリフティング!』

「なっ!?」

そびえ立った土のタワーを足場に跳んでリフティングしながら飛び越えた。
エイリア石で身体能力が更に上がった今だからこそ、容易に行えた。

『風丸!』

前にいる風丸へとボールをパスすれば、受け取った彼はドリブルで駆け出し目の前にいた円堂を抜いた。
だけど、円堂はそこで諦めず風丸の前へと躍り出た。
両手を伸ばして広くブロックしてくる円堂に風丸はイライラとした様子を見せた。

『風丸!1度後ろに……』

「邪魔だぁあああ!!!」

指示より前に風丸が怒りに身を任せ、ボールを円堂の腹に叩きつけるように蹴った。

「ぐあっ!!」

どさり、と円堂が後ろに倒れて、近くに居た吹雪が駆け寄って円堂を助け起こした。

「テメェ!!何すんだ!!」

転げたボールを足で拾う風丸の元へ怒鳴り声を上げながら、綱海が駆けった。

「お前!仲間だったんじゃねーのかよ!円堂をボールで吹っ飛ばしてなんとも思わねーのか!!」

そう言って綱海は、風丸の足元のボールへ足を伸ばそうとするが、風丸はヒールでボールを後ろに引いてそれを守る。

「そんなにエイリア石が大事かよ!!」

「お前に何が分かるッ!!」

風丸が綱海にチャージし、彼は地に転がった。

「いや、ボクたちだからこそ分かる」

円堂に手を貸して居た吹雪が立ち上がって風丸を見据えた。ずっと苦しんでいた彼はもう何処にもいない。

「オレこのチームが好きだ」

天邪鬼な木暮の素直な言葉。

「そして、心からサッカーを愛する円堂が好きだ。あんた達と同じなんだ!」

折れることのない真っ直ぐな柱のような塔子ちゃん。

「同じ………」

「キャプテン達に出会えたから今のボクらがあるんだ!!」

吹雪の言葉に風丸が胸を抑える。
それを見て、今だ!というように塔子ちゃんが大きく手を上から下に振った。下から生える塔に馬跳びのように腕を振りながら木暮と綱海が飛び乗った。

「「「パーフェクト・タワー」」」

塔子ちゃんが建てた新たな塔から、木暮と綱海が跳び降りながら大きく足を振り下ろせば、稲妻が走り、風丸はボールを置いて後ろに下がらざる追えなかった。
置き去りにされたボールを塔子ちゃんが確保し、その瞬間に豪炎寺と鬼道が左右にかけ出せば、ダークエンペラーズは二人にシュートを打たせまいと2方向に別れて守備に着いた。

『あほ……!!』

ゴールへ戻ろうと駆け出せば、直ぐに行く手を阻まれた。

「やっぱり梅雨ちゃんは気づくよね」

「でも、ここからじゃ間に合わないよ」

土門と一之瀬のダブルディフェンス。
道を塞がれた私の後ろで塔子ちゃんからショートパスを受け取った綱海がシュート体制に入っていた。
てか、前衛に回さず私に2人も付けるのかよ。
はーーー、これだから天才ゲームメイカー様は。

「ツナミブースト、てやあああ!!」

超ロングシュートが炸裂し、ゴール向かって飛んでいく。

「ダブルロケット!!」

杉森がロケット拳を2つ放ちシュートを跳ね返す。
だが、それを吹雪が拾って、彼はすぐさまシュート体制に入った。

「ウルフレジェンド」

うおおおおお!と背後に現れた狼と咆哮を上げ、シュートを放つ。
あまりのスピードに、体制の整っていない杉森が慌てて手を伸ばしたが追いつけなかった。
ボールはゴールに突き刺さり、雷門が得点を決めた。

あれが吹っ切れた吹雪の新必殺技か。

『ふっ………』

「なあ、梅雨ちゃん、もしかして……」

そう言って土門が手を伸ばしてきた。
その手が目の前で叩き落される。

「っ……!」

「なにするんだよ!」

痛みに声にならない声を上げる土門の代わりに怒ったのは一之瀬で、彼は上を向いて睨みつけていた。

「気安く触んじゃねーよ」

そう言ったもの、土門の手を叩き落としたのも染岡だった。

「行くぞ」

土門の手を叩いた手が、私の腕を掴んで引っ張る。
されるがままに引っ張られて行けば、スタートのポジションに戻された。

「おい、点取られたってのに何笑ってんだよ」

手を離した染岡が、不機嫌そうに睨みつけてきた。

『ん?ああ、いや、叩き潰しがいがありそうで良かったなぁって。一方的な試合なんて面白くないし』

でも……、

これ以上は
絶対に点はやんないよ。
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