フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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濃い霧が雷門中一帯を包んで居た。
そこにキャラバンが入ってきて、中に乗っていた人達が降りて来たのを見て、研崎が歩みを進めた。


「お待ちしていましたよ。雷門のみなさん」

円堂達を前に足を止め、研崎はそう彼らを出迎えた。

「水津はどこだ!」

そう叫ぶ円堂を見て、研崎はニヤリと口角を上げた。

「水津さん達ならこちらに」

そう言って研崎は、手のひらを私達の方へ向けた。

「え?」

「……達?」

大半が濃霧で近くに居ることに気づいてなかったことに驚いたようだったが、数名は研崎の言い回しに疑問を持ったようだった。
じっと目を凝らせば、12人居るのが分かったのか、雷門イレブン達は少し警戒したようだった。
そんな中、彼らに分かりやすいように、とフードを着た中の一人が円堂の側へ歩み寄った。
そして、彼は被ったフードに左手をかけて、それを降ろした。

「えっ、風丸……!?」

驚く円堂を合図に、フードを被ったみんながゆっくりと自分の顔を出していく。

「染岡くん!?」

「嘘……」

秋ちゃんと吹雪が驚いた顔を見せた。
吹雪はもうマフラーを首に巻いてはいなかった。物語通り、ちゃんと吹っ切れたようだ。

「か、影野、半田!?」

「栗松、しょうりん……!?」

土門と壁山が、次々に見えた名を叫んでいく。
マックスや宍戸、杉森に西垣、シャドウの姿に、皆ざわめき立った。

「じゃあ、まさか……」

まだフードを降ろしていない最後の一人に視線が集まる。

「っ、水津さん……?」

そう訊ねてきた夏未ちゃんの声は震えていて、それに応えるようにフードを降ろした。
そうすれば、夏未ちゃんは両手で口元を抑えた。
賢い彼女の事だ。最後の戦いと研崎が呼び出し、そこに現れた12人が何を意味するのか、直ぐに分かったのだろう。


「久しぶりだな、円堂」

「ど、どういうことだよ……」

冷たい声で挨拶をした風丸に、円堂は呆然と聞き返す。

「ようやく私の野望を実現する時がきたのですよ」

風丸の代わりに答えたのは、研崎だった。
なに……?と円堂が眉を顰める中、風丸は、ずっとコートの中にしまいっぱなしだった右手を出した。
その手が掴んでいたのは、紫色のサッカーボールだった。

「あのボールは!?」

エイリア学園の物。
危険だと判断した響木さんが直ぐにマネージャー達を守るように、自分の傍に寄せた。

「再開の挨拶がわりだ」

そう言って、風丸はサッカーボールを自分の足元へ落とし、それを円堂へ向けて蹴り飛ばした。

「ぐあっ!?」

素手でキャッチしようとした円堂は、ボールの勢いに押され後ろに倒れた。

「円堂!」

雷門イレブン達が叫ぶ中、円堂は地に這うように身体を起こした。
それを見下ろしながら、風丸はニヤリと笑みを浮かべたのだった。

「風丸……!」

「俺たちと勝負しろ」

起き上がって驚く円堂は風丸を見つめて、ハッとした。
円堂だけではなく、夏未ちゃんも気づいたようだった。コートが風ではためいて風丸のユニホームの首元から紫色の光が漏れ出していることに。

「あの光は……!エイリア石!」

「なんだって!?」

「究極のハイソルジャー……吉良の言っていた通り、ジェネシスとは違う、エイリア石での強化戦士……」

響木さんがそう呟けば、ええ、と研崎が頷いた。

「旦那様は、何一つ分かっていなかったのですよ。エイリア石の本当の価値も、神の子たる水津梅雨の利用価値も、ね」

そう。未来を知ってるなんて能力、悪役として欲しがらない方がおかしいのだ。
こればっかりは本当に吉良は異常だった。
逆に危険だと思い監視しにきていたヒロトは、かなりまともだと言える。

「ですから、この私が正しい使い方で、必ずジェネシスを倒すあなた方との戦いに備え、究極のハイソルジャーを作り上げたのです」

「それで、風丸達が……!?」

「ええ。彼らが、我が究極のハイソルジャー、ダークエンペラーズです!」

ドドン、と研崎は大手を上げて我々を紹介した。
それを聞いた雷門イレブン達は空いた口が塞がらない、といった様子であった。

「今日は、我がハイソルジャーの力を証明するために、彼らが、あなた達雷門イレブンを完膚無きまでに叩きのめします」

「…………」

研崎言葉を聞いて、円堂が腿の横でぎゅうっと拳を握りしめた。

「こんなの嘘だ!」

そう言って、円堂は風丸の両肩を掴んだ。

「お前たちは騙されてるんだろ?なあ、風丸!」

揺ってくる円堂に、風丸は黙ったままそっと右手を差し出した。
それを見て円堂は、少し驚きながらも肩から手を離し、差し出された右手に合わせるように手を出した。
だが、それは、風丸の右手に拒否するように強く叩かれた。

「風丸…………」

円堂は絶望したように彼を見つめる。

「俺たちは自分の意思でここにいる!」

そう言って風丸は、胸元からエイリア石のペンダントを取り出して、自分の手のひらに乗せてみせた。

「このエイリア石に触れた時、力がみなぎるのを感じた。求めていた力だ」

「求めていた力……?」

「俺は強くなりたかった。強くなりたくても自分の力では越えられない壁があった。でもエイリア石が信じられない程の力を与えてくれたんだ!」

そう言って風丸は、コートを脱ぎ捨てた。

「俺のスピードとパワーは桁違いにアップした!この力を思う存分使ってみたいのさ!」

「ちょっと待てよ!エイリア石の力で強くなっても意味がないだろ!」

「それは違うでヤンス!」

円堂は、栗松……?と声の方へ視線を動かす。

「強さにこそ意味があるんでヤンスよ」

「俺はこの力が気に入ったぜ。もう豪炎寺にも吹雪にも負けやしねえ」

ぐっと、染岡は拳を握ってみせる。
その様子に、吹雪が悲しそうに眉を下げたくした。

「お前ら……」

「俺たちは、誰にも負けない強さを手に入れたんです」

「エイリア石の力がこんなに素晴らしとは思わなかったよ」

「いつまでも走り続けられる。どんなボールだって捌くことができる」

「全身に集まるこの力を見せてあげますよ!」

「俺はもう影じゃない。ついに存在感を示す時が来たのさ。フフフフフ……」

宍戸、松野、半田、少林寺、影野と雷門サッカー部の面々が次々に語る様子に、円堂は漠然としていた。

「水津っ……!お前は、違う、よな!今までだってみんなのために……!そうだ、こうなる事だって知って、みんなを守るために……!」

縋り付くような目で円堂が私を見た。
その様子にため息を吐けば、円堂はビクリと肩を揺らした。

『馬鹿だなぁ、円堂は。私はずっと最初から自分の事ばかりだよ?鬼道辺りから聞いたと思うけど、私は君たちの未来知っていたんだよ。それでね、帝国学園との最初の試合、覚えてる?君たちが帝国学園にボコボコにされるの知ってて見知らぬ顔をしていたんだ。最初からずっとね』

「それは……」

円堂の顔が歪む。
雷門イレブンの誰も驚きはしない所を見ると、やっぱり鬼道か響木さんかが私の事情を話しているようだ。

『なんでだと思う?我が身が可愛いからだよ?もう二度と怪我してボールが蹴れなくなるのなんてごめんなんだよ。だから君らを見捨てた。だけどね、罪悪感だってあったよ?ずっと嘘ついて騙してね。何度も思ったよ。私がこの世界の理を変えれるほど、チート級に強ければってね。だけど、私の力じゃ何も変わんない。むしろ、余計な事して、佐久間や染岡の怪我を酷くしちゃった……』

だからね、と円堂に微笑む。

『この力で、この世界をぶち壊そうかなって思うんだ』

たとえ、楽な道の先が崖だと知っていても。

Welcome to Underground
彼らと一緒に落ちる所まで落ちてみようか。
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