フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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(響木視点)


雷門中がジェネシスに勝ち、負けを認めた吉良星二郎が、利用してきた子供達に謝罪をした。そこでひと悶着ありはしたが、それでも吉良を父親だと慕っていた子供達の心が、全てを丸く収めた。
現場にやってきた鬼瓦の問い詰めで、吉良は5年前に降ってきた隕石、エイリア石の力に魅入らされ今回の復讐計画へと至ったのだと語った。
吉良が罪を認め、これで終わりだと思った矢先だった。

ボォンという音と共に、スタジアムにある大きなモニターが付いた。
なんだ、と一同が顔を上げればそこには、青白い顔をしたスーツの男が映っていた。

「研崎……?」

吉良が男の名を呟く。
そうか、あいつは吉良の秘書だった男だ。そんな奴がなぜ今モニターに、とサングラス越しに映像を睨みつけた。

《雷門イレブンの皆様、勝利おめでとうございます。勝利したあなた方を最後戦いへと招待いたします》

「最後の戦い……!?」

「エイリア学園は、ジェネシスが最後じゃなかったのか!?」

困惑する雷門イレブンは、吉良やジェネシスの子供達を見た。だが、彼らもまた同じように困惑しているようだった。

《エイリア学園などという中途半端なソルジャーとは違う、究極のハイソルジャーがお相手いたしますよ》

「究極のハイソルジャー……?」

「どういうことです、研崎!」

画面の向こうへと吉良が叫ぶ。しかし、その言葉への返答はなかった。

《あなた方の探している水津梅雨と共に、雷門中にて待っていますよ。まあ、生きてここから出られれば、ですが》

その言葉と共にブチン、と映像が途切れた途端、爆発音や破裂音が至る所から聞こえ、星の使徒研究所全体が揺れたかと思えば、パラパラと天井から瓦礫が落ち始めた。

「水津だって!?」

子供達が驚きの声を上げているが、今はそれどころではない。

「いかん、崩れるぞ!」

落ちてきた天井により、入口が塞がれた。
そんな危機的状況に、フィールドの中へイナズマキャラバンが飛び込んできた。
イナズマキャラバンを運転する古株のおかげで、俺たち雷門イレブンと吉良を含むジェネシスは何とか施設が全壊する前に脱出することができた。

崩れゆく星の使徒研究所を見上げながら、間一髪だった状況に皆ほっと息を吐いた。
数分もすればパトカーがサイレンを鳴らしながらやって来て、鬼瓦の部下たちがエイリア学園の他の子供達を無事保護したことを報告した。

「そうだ、監督!水津のこと、助けに行きますよね!」

そう言って円堂が駆け寄ってくる。その後ろの子供達も俺の方をじっと見上げた。

「ああ。だが、行く前に確認しておきたい」

吉良を見れば、奴は複雑そうな顔をしていた。

「究極のハイソルジャーとは何だ」

「……恐らくは、ジェネシスとは違いエイリア石で強化した戦士でしょう。あの男もまた、私と同じようにエイリア石に取り憑かれていますから。しかし、神の子を手中に収めているとなれば……一筋縄ではいかないでしょうね」

その言葉を聞いて、そうだ、と思い出す。

「お前さんには聞かなきゃならん事がある。お前の言う神の子、いや、そもそも神とはなんだ?」

「神は、私にエイリア石が降って来ること、その石が私の復讐を叶えてくれると教えてくれた存在なのです。残念ながら姿形が毎度違う上、一方的に現れる存在ですので、私も詳しいことは分かりません。そして、前にも話しましたが、水津さん。神は彼女の事を全てを知りそれを正しく運ぶための目であるのだと仰っていました。私はそれを都合よく、神が与えてくれた自分の復讐を見守るための役割を持った者だと勘違いしていましたがね」

「神はエイリア石が降る前から知っていて、水津もまた全てを知っている、か…………」

神の子と呼ぶのも分からんではないが…………。
しかし、なるほどな。研崎という男もそれで、水津をさらったわけか。

「恐らくジェネシス以上に危険な試合になるかもしれない。それでもいいか?」

雷門イレブン達の顔を見れば、彼らは強く頷いた。
愚問だったか。ジェネシスの試合の前から、水津を助ける覚悟は決まっていたからな。

「響木。連行したら俺も直ぐに雷門へ向かう」

そう、鬼瓦は俺に声を掛けたあと、行こう、と吉良やジェネシスの子供達に声をかけた。

「響木監督」

そう言って瞳子監督が、真っ直ぐこちらを見た。

「水津さんの救出、任せてもよろしいでしょうか。本来なら、私が彼女に謝罪と礼をしなければならないのは分かっています。ですが……、今はヒロト達と一緒に居たいんです」

「ああ」

瞳子監督は深々と頭を下げた。

「それにアイツなら、自分のことより傷付いた子供達を優先しろと言うだろう」

「そうですね。彼女は優しい人ですから」

顔を上げてそう言った瞳子監督は、雷門イレブン達へと礼と謝罪を述べに行った。




向かうは雷門中
到着したそこは、濃霧に包まれていた。
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