フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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(円堂視点)

みんなもオレと同じ気持ちだった。
監督が率いてくれたおかげでここまで来れた。
最後まで一緒に戦って欲しいと伝えれば、瞳子監督は大きく頷いた。

「しっかし、監督の秘密は分かったけどよ……水津は結局なんなんだ?」

「そうっス。エイリア学園に連れ去られたんじゃなきゃ水津先輩はどうしていなくなっちゃったんっスかね……」

「お兄ちゃん、異世界がどうとかって言ってたよね?」

綱海が口火を切れば、壁山も不安そうに口にする。そうして、春奈が鬼道に質問した。
鬼道は腕を組み、うむ、と考え込んでいた。

「水津の事は俺から話そう」

そう言ったのは響木監督だった。

「えっ、監督も何か知ってるんですか!?」

そう聞けば響木監督は、ああ、と頷いた。

「そもそもアイツにお前たちに黙っておくように言ったのは俺だからな」

どういうこと、とみんながざわついた。

「まず、俺が以前、お前たちに言った水津の記憶喪失の話だが……、あれは全部俺のでっち上げだ」

「え……?」

たしか、あれは世宇子中との戦いの前で、俺が無茶な特訓をして倒れて来々軒に連れて行かれた時だったはずだ。
響木監督が俺たちに聞かせた水津の身の上話。

「無茶な練習をして、頭から落ちて脳震盪を起こし、そのせいで水津は1部記憶障害を起こしていて、家族の事など特定の事の記憶が欠落している……。監督が言った言葉です」

まるっと記憶していた豪炎寺がそう言えば、ああ、と響木監督はもう一度頷いた。

「無茶な練習をして脳震盪を起こしたことがある、と言うのは本当らしいがな。記憶喪失うんぬんは俺が、決勝戦前で水津の正体がどうとか言ってチームの輪を乱すのは良くないと思ってついた嘘だ」

「………」

当時雷門中サッカー部に属していたみんなが、押し黙る。
あの頃は確かに、俺も世宇子中との戦い前に焦っていたし……。

「チームの輪を乱す程の理由ってなんなんだ?」

「俺も正直最初は信じてなかったんだがな……。水津は異世界からやってきたらしい」

まじ?と言うようにみんなが顔を見渡す。

「それをわざわざ分けて言うって事は、宇宙人とは違うって事ですね?」

確認するように夏未が聞く。

「ああ。エイリア学園の真実を知った今だからこそハッキリ言える。アイツは異世界人だ」

「響木監督、ひとつ疑問なんですけど」

はい、と土門が軽く手を上げる。

「それ、エイリア学園が現れたあとなら隠す理由も分かるんっすけど………」

「その理由はあいつがただの異世界人じゃないからだ」

「どういうことですか?」

そもそも異世界人ってだけでも普通じゃないのに………。

「お前たちは水津の言動に違和感を持ったことはないか?」

「違和感?」

言われて、うーんと考える。水津の行動って言うと……初めて会った時はまこ達とリフティングしてたんだよな。それで、サッカー部に勧誘したら断られて………。
尾刈斗中との戦いの後からサッカー部に入ってくれて………。
うーん、分からない。

「梅雨ちゃんって、妙に感がいいというかなんていうか………、俺がスパイだってのもまるで知ってたかのような………」

「ああ。実際、知っていたんだよアイツは」

土門の言葉に、鬼道がそう言った。

「は?」

「知っていたんだ。最初から全部。俺たちの事をな」

事前に聞いて水津の事を知っていると言っていた鬼道の言葉だから嘘じゃないのは分かるが、意味が分からなかった。

「ああ、それで………」

なにかに納得したように瞳子監督が小さく呟いた。
それを聞いてみんなからの視線が集まる。

「彼女、私が話す前から吹雪くんが二重人格だと言うことを知っていたわ」

えっ、と吹雪の瞳が揺らぐ。

「それに、ハッキリとは言わなかったけれど、エイリア学園の正体も、私の正体も知っているような素振りをみせていた。最初から全て知っていたのなら納得だわ」

「エイリア学園の正体も知っていた……?」

「いや、そもそも最初から全部ってどういうことだよ」

「言葉通りだ。水津は帝国学園が雷門中に練習試合を申し込んだ理由が、豪炎寺であることも、その豪炎寺がサッカーを辞めた理由も、帝国学園が土門をスパイとして送り込んた事も、俺や一之瀬が雷門に入る事も、俺たちがフットボールフロンティアを優勝することも。その後エイリア学園の襲撃が始まり、離脱者が出ることも、追加のメンバーが入ってくることも、真・帝国との戦いで佐久間達が禁断の技を使うことも………」

「なんだよ、それ……。そんなのまるで未来を知ってるみたいじゃん………」

木暮が震える声でそう言えば、そうだ、と鬼道も響木監督も頷いた。

「じゃあ、水津は知ってて全部黙ってたのか!?エイリア学園にどれだけの学校が襲われたと……!!」

「知ってたんなら、エイリア学園に簡単に勝つ方法だってあったんじゃ……!」

「それだ。俺が水津に嘘をつかせるようにした理由は」

そう響木監督は少し大きな声で言った。

「水津のことを知れば、それを利用しようとするものが現れる。なんたって、未来を知っているんだ。危機を回避することも、どんな困難も楽にクリアできるようになるだろう。だからこそ、影山も水津を手に入れようとしていた」

「う……」

お前たちの考えは影山と同じだと遠回しに言われているようだった。
確かに、水津が未来を知ってるからって……本来は未来なんて分からないものなんだが、それを利用するのは神のアクアやエイリア石を使うのと変わらないはずた。

「まあ、そもそも水津の知る未来は、水津本人が居ない未来だ。アイツが関与した場合……、事態が悪化する事もある」

「鬼道、水津が居ない未来って……」

「言っただろう。アイツは異世界人だと。元々この世界には存在しないんだよ」

いないひと
本当はいない、だなんて、俺が馬鹿だから理解できなかった。
だって、水津は俺たちの仲間で………。
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