フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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約束の朝8時。
再建設中の雷門中のグラウンドに停められたキャラバンの前に、既にほとんどのメンバーが集まっている中、

「大変やー!」

そう叫びぶリカと塔子が走って現れた。

「どうした?」

彼女らの酷く慌てた様子に鬼道が聞き返せば、キャラバンの前で足を止めた2人は荒くなった息を整えるため大きく息を吸った。
それから、塔子が口を開いた。

「それが……、梅雨が居なくなったんだ」

その言葉に雷門イレブン達は、は?と聞き返したり、えっ?と口を開けて呆然とした。

「それって、どういうこと……?」

瞳子監督のあの態度では、富士には行かないと言っていた一之瀬が、同じように反対していた土門と共にキャラバンの裏から現れて聞き返す。

「ダーリン!来てくれたんやな!」

現れた一之瀬に嬉しいとリカはハートを飛ばしながら、彼の腕に抱きついた。

「梅雨ちゃんが居なくなったってどういう事よ?」

ちゃんと説明してくれ、と言うように抱きつかれた一之瀬の隣で土門がリカを見下ろして聞く。

「それがな、昨日の晩、梅雨がお風呂入って来るって部屋出ていってな、うちら疲れとったから戻ってくるの待てずに寝てしまってん。そんで、今朝起きたら梅雨部屋におらんくて……」

「いつも先に起きて朝ごはん用意してくれてるから、今日もそうだろうなーって台所に向かったんだけど、そこにも居なかったんだよ」

しゅん、とした様子で話すリカに続いて塔子も説明するが、その顔は同じように曇っている。

「管理人さんのおばちゃんもな、何も聞いてへんって言うし、書き置きとかもあらへんで……」

「それって……」

みんなが、まさか……と言うように顔を見合せる。

「実は宇宙人で、バレると思って逃げたって事か?」

綱海がそう聞けば、黙って話を聞いていた鬼道が、いや、と呟いた。

「アイツは自ら話すと言ったんだ。逃げる気であるならわざわざ昨日、話をするなんて言わないだろう」

「アタシもそう思う」

力強く頷いて塔子は、それがさ、と話を続けた。

「財布や携帯もそのまま部屋に置きっぱなしだったんだよ。逃げるにしたって財布はないと困るんじゃないか?」

「それは確かにそうッス」

塔子の説明に納得したようにウンウンと壁山が首を振った。

「だとすると………、誘拐や拉致」

「エイリア学園にか」

鬼道のつぶやきに豪炎寺がすぐさまそう返した。

「ああ。エイリア学園にとって水津が話す内容は都合が悪かった……」

「だから拉致したと?」

そう夏未が聞けば、小さく鬼道は頷いた。

「あくまでも可能性だがな」

「攫われたんだとしたら、悲鳴とか聞いてないわけ?」

木暮がそう言ってリカと塔子の2人を見る。

「うちら寝とったから分からんけど、流石に叫び声とかしたら起きたと思うけどなあ……」

「まあそもそも梅雨先輩って、驚いた時とかビクッとして固まるタイプの人だから大きな悲鳴とかは上げなさそうですけどね」

「そーいえば、カエルで悪戯した時も梅雨さん反応薄かったっけ」

春奈と木暮がそういえば、皆、それなら気づかないかもと納得する。
そんな中、近づいてくる足音にみんなは顔を上げた。

「監督!」

円堂がそう呼べば、足を止めた瞳子監督はキョロキョロとみんなの顔を見た。

「……来ていないのは水津さんだけのようね」

「それが……」

かくかくしかじか、と円堂は瞳子監督に水津が居なくなった事と皆の考察を説明した。

「そう………。もし、あなた達の考えの通り、エイリア学園に連れ去られたのだとしたら、恐らく彼女も富士山麓に居るはずだわ」

「なら、助けに行かないと!」

そう言って円堂が手のひらに拳を打ち付ける。

「そうだな」

「ああ、行こう」

鬼道や豪炎寺を初めに、口々に皆がそうだと言って頷く。

「みんな富士山麓へ行く。それでいいのね?」

確認するように瞳子監督はみんなの顔を見た。

はい!とみんな力強く頷いてキャラバンに乗り込むのだった。








「なあ、鬼道は水津の秘密っての知ってんだろ?それって結局なんなんだ?」

富士山へ向かって走るキャラバンの中で、綱海が疑問を口にした。
投げかけられた鬼道は、腕を組み考えるように黙った。

「鬼道?」

「まあ、本人が居ないのに勝手に話すわけには行かないか」

気を使って一之瀬がそう言えば、鬼道は、いや、と首を振った。

「というよりは、内容が内容でな……」

ひとり事情を知る鬼道は頭を悩ませていた。
正直、簡単に説明出来るような話では無い。
それに、自分の考えが正しければエイリア学園は……。

「恐らく、富士山で監督の話を聞いた後の方が、説明しやすい」

水津も同じように思ったから昨日そう言ったのだろう。

「そういうことならしょうがねえ!水津を助け出して本人に聞く方が早いかもな!」

カラッとした様子で聞いた本人である綱海がそう言えば、他に追求する者はいなかった。
それに少しほっとしながら、鬼道はまた考える。

本人は話す気でいたが……

果たして
真実を話ていいものか。
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