フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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「なあ、アンタの秘密ってエイリア学園に関係しとるん?」

「おい、リカ」

稲妻町にいる間は、木枯らし荘の私の部屋に泊まりにきているリカちゃんがお風呂上がりの髪を乾かしながらそう訊ねてきた。
そんな彼女と同じく髪を乾かしていた塔子ちゃんが小声で咎めるように名を呼んだ。

「いや、だって……あの場で言わんちゅうことはそう言う事なんやろかって疑問やって……」

『うーん。関係はないけど、エイリア学園の事を分かった上での方が説明しやすいんだよね』

そう答えれば、2人は頭の上にはてなを浮かべていた。

「それって結局エイリア学園に関係してるって事ちゃうん?」

『んー、エイリア学園ってかみんなに関係する事だから。だから出来れば、瞳子さんもみんなも揃った状態で話したい、かな』

「梅雨……」

少し心配そうな顔をして塔子ちゃんが私を見つめた。

「あのさ、あたしは雷門中のみんなみたいに梅雨が隠してる秘密っての、ピンと来てないんだけどさ………でも、信じてるから!」

「そんなんウチかてそうや!」

信じてる、か………。
信じてくれた分、この事実を知れば反動が大きそうだな。

『ありがとう。さて、と、私もお風呂入ってくるよ。2人は眠かったら先に寝てていいからね』

「あ、うん」

逃げるように2人に言って、部屋を出てお風呂へ向かうのだった。










数十分後。
お風呂を出て、パジャマに着替えてタオルで髪を乾かしながら浴室から出た。
リカちゃんや塔子ちゃんは髪が長いから乾かすの大変そうだけど、私はちょっと結べる程度だからあそこまで時間は掛からないので、直ぐに寝れるだろう。
2階へ続く階段を上がろうとした所で、階段正面にある木枯らし荘の玄関扉を照らすように光が差した。

『ん?』

誰か路駐でもしてんのか?
……いや、でも、建物に向かってこんなにライトを向けるか?
イタズラか何かか、と思っている内に外の一点に光が集束するように段々と弱まって消えた。

『……何?』

不審に思って靴を履いて、そっと、数センチだけ玄関扉を開けた。
空いた隙間から、外を覗き見る。

扉越しに見えていた光の収束地点であろう場所に、黒いサッカーボールが転がっていた。


『これは………』

扉から出て、音を立てないようにそっと閉める。
それから、ゆっくりとその黒いサッカーボールへ近づいた。

『どう見ても、エイリア学園の……』

「ああ。その通りさ」

その声に、ハッとサッカーボールを見ていた顔を上に上げた。
木枯らし荘の敷地内に、赤い縁取りの付いた黒いコートを来た人物が2人入ってきた。


『………!?』

このコートには見覚えがあったが、暗くて被られたフードの中身は見えない。
声から察する1人はあの子で、もう1人は結構ガタイがいい。

「流石の貴女でも、これは予想外だったようですね」

そう言ったのは、フードの2人ではなくその後ろでから現れた、青白い顔の男だった。

『研崎………!』

「ええ。お迎えに参りましたよ」

現れたのは、吉良星二郎の秘書をしている男だった。
向かえに来たってこのタイミングで?

『……吉良会長の命令?』

「やはり、私の推察通りのようですね」

質問には答えず、研崎はニヤリと口角を上げた。

『推察って……』

「先程も言ったように、私のこの行動は貴女に取って想定外だった。そうでしょう?」

『何を言って………』

「惚けても無駄だ。俺たちは、お前の正体を知っている」

さっきも喋っていた方のコートの人物がそう告げる。

『………吉良の秘書なら知ってるか』

ヒロトが知ってるぐらいだしな。

「………」

ガタイがいい方のコートの人物が、無言のまま痛いほどこちらを見てくる。

「ええ。旦那様が神などと崇拝する存在の話では、神の御使いで現れた貴女は、この世界における事の顛末を把握している。そうでしょう?」

……どうやら、神代ってのが直接関わりを持っているのは吉良のみのようだ。
研崎もヒロトも瞳子さんも、吉良から聞いた話で話している。

『そうだとして、何故今更?迎えに来たと言っていたけど、私がホイホイ着いていくとでも?』

「いえ、来ないでしょうね。簡単に着いてくる気でいるなら、最初の誘いの時に着いてきていたはずですから」

そう、陽花戸中で会った時は不思議なことに誘いを蹴った私を吉良は無理やり連れていこうとはしなかったし……。
あの後も、ヒロトの話では吉良は私を野放しにする方針のようだったけど……。

「何故今更という質問ですが、簡単な話ですよ。愚かなあの男と違って、私は貴女の存在の重要さに気がついた。だから、わざわざこうやって彼らを連れて迎えに来たのです」

そう言って研崎はフードの2人に手の先を向けた。

「雷門イレブン達のために動いている貴女なら、仲間の事は見捨てませんよね」

研崎がニヤリと笑えば、コート姿の2人はフードに手をかけて後ろへ降ろした。


ああ、やっぱり
明るみになった顔は、風丸と染岡だった。
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