フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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2日後、予告通り帝国学園へ現れたザ・カオスと雷門イレブンの試合が始まった。

前回戦ったダイヤモンドダストのメンバーがレベルアップしていて、数日前に止めれたはずのボールが止められず、あっという間に点が取られていく。
そんなダイヤモンドダストと一緒にチームを組めるほど実力があるプロミネンスもまた、アフロディのヘブンズタイムを打ち破り、こちらに点を決めさせない。

雷門は無得点のまま、カオスには10点も決められてしまい、前半戦も残りわずか、という所でバーンにボールが渡ってしまった。

「アトミックフレア!」

何本もシュートを喰らい、既にフラフラな立向居を見て円堂が慌ててゴール前へ飛び込んだ。

「メガトンヘッド!」

覚えたばかりの必殺技で、バーンのシュートを跳ね返したが、反動が大きく円堂の身体は吹き飛ばされてしまう。

「円堂くん!?」

ベンチで、秋ちゃんが悲鳴のような声を上げる。
フィールドの皆も、慌てて円堂の周りに駆け寄って行く。
そんな中、円堂はゆっくりと身体を起こした。

「大丈夫か円堂!?」

「キャプテン……!」

「…大丈夫、だ。このくらい、何でもない」

軽く額を押さえながら、円堂はみんなに笑顔を作って見せた。
痛みを我慢しているのはバレバレだった。

「くっ、」

右隣に座る吹雪が、自身の身体を守るように両手を肘に回し、ぐっと歯を食いしばっている。
悔しいんだろうな。吹雪のスピードとディフェンス力なら同じように立向居のフォローに入れただろうから。


フィールドは、円堂のおかげでディフェンスが軌道に乗り出してカットもセーブも上手く行きだした。
これを機にオフェンス陣も攻めに転じようとするが、カオスのディフェンスにことごとく防がれてしまう。

『これが雷門の弱いところ、だよなあ……』

「どういうこと?」

前回の怪我はもう完治したが、アフロディが加入した事でベンチへ回されたリカちゃんが、私の呟きを聞いて首を傾げた。

『DFに攻撃参加させすぎなのよ』

フットボールフロンティアの時から再三言っている。

「つまり?」

「ディフェンスラインが下がり過ぎると攻めに転じにくくなると言うことですね」

メガネのブリッジを押さえ、目金が正解を答えた。

『まあ、鬼道もそこら辺は分かってるだろうけど』

「えっ、分かっててなんでDFの土門や円堂と練習したんや!?最初からFWのうちらとやればええやん!」

『うーん、まあデスゾーンをやるなら最初はタイミングをきっちり合わせなきゃと思ってたし、鬼道的には同じ元帝国の土門と雷門よ中じゃ付き合いが長いというか因縁があるというか……、まあわかりやすいし、円堂が合わせやすいと思ったんじゃないかな?』

本当はどうか知らんけど。

「まあ、ウチもアフロディも雷門イレブンちゅー意味じゃ新参者やしな。豪炎寺はなんか何考えとるんか表情分かりにくいしな」

納得したと言うようにリカちゃんはウンウン頷いて言った。

『まあ、そういうわけで、どうにか向こうのリズムを崩して、前線をあげる必要があるわけさ』

「そのどうにか、が大変なんですけどね」

目金の言葉に頷きながら、ちらりと隣の吹雪を盗み見る。
吹雪は、膝の上に置いた掌をぐっと力強く握りしめている。
やはり、彼自身が1番分かってるんだろうな……。士郎(自分)なら、この状況を打破できるスピードもディフェンス力もあって、更に点を取る攻撃力もあるって。だけど、それは……、アツヤの力だって思っているから動けないでいる。


フィールドの方では動きがあった。
トゥントゥクトゥントゥクと呟いていた鬼道がネッパからヒートへ出されたパスをカットして奪った。
今が好機と、鬼道は円堂と土門の名を呼び、デスゾーンの態勢へ入った。

「デスゾーンが帝国の意思統一から生まれた必殺技だとすれば、デスゾーン2は個性のぶつかり合い!」

「デスゾーンが足し算だとすれば……」

「オレたちのデスゾーン2は掛け算だ!」

よく分からない理論を叫んだ円堂達はぐるぐると回転を早くしていく。

「「「デスゾーン2!!!」」」

3人の脚力で蹴られた禍々しいボールが、カオスのゴールへ飛んでいく。

「バーンアウト」

GKのグレントが燃やした両手でボールをキャッチしにかかる、が……。
デスゾーン2の威力に押され、グレントは後ろへ倒れボールがゴールへと突き刺さった。
先ずは1点と喜んだのもつかの間、センターにボールが戻され、ホイッスルが鳴った次の瞬間、ガゼルの蹴ったボールを受け取ったバーンが立ち塞がった鬼道をフェイントで抜き去り、チェックについた円堂を驚異的な跳躍力で避ける。

「立向居!」

抜かれて直ぐに円堂が叫ぶ。
このパターンは、南雲と彼が名乗ったあの時と同じだった。

「アトミックフレア!」

太陽のように燃え盛るボールがゴール目掛けて飛んでいく。
立向居は、ボールを前にぎゅっと目をつぶったかと思えば、ハッとしたように目を開け、両手を大きく外側に広げたあと、眼前でパンッと手を合わせた。

「ムゲン・ザ・ハンド!」

立向居の後ろから4つの黄色い腕が伸びてその手ががっしりとボールを掴み取った。

「で、できた……!」

止めた立向居が呆然とし、雷門イレブン達から歓声が上がる中、前半戦終了のホイッスルが鳴り響くのだった。

『10対1か……、ふふっ』

「どうかして?」

ベンチに戻ってくるみんなへ渡すタオルやドリンクの準備をしながら、小さく笑えば夏未ちゃんが不思議そうにこちらを見た。

『いや、普通なら絶望的な点差だけどみんなまだまだこれからって顔してるんだもん。世宇子中と戦う前なんか、秋ちゃんが10点取られた11点、100点取られたら101点取ればいいって鼓舞してたくらいなのにね』

「確かに……あれから皆、随分と成長したわ」

『夏未ちゃんもあんなに雑務は嫌よって言ってたのに、成長したよねぇ』

今じゃ秋ちゃんと春奈ちゃんと並んで、みんなへタオルやドリンク配る仕事もしてる。

「べ、別に、前は貴女も居たし、今は貴女が選手として出場して木野さんや音無さん2人では大変そうだったから……」

『照れるな照れるな』

ニヤニヤと笑いながらそういえば、夏未ちゃんはもう!と怒ってそっぽを向くのだった。


成長
みんな変わって行く中、私は……。
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