フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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「鬼道、タイミングは帝国の時と同じなんだよな?」

繰り返し試すが成功しないデスゾーンについて、息を切らした円堂が鬼道に尋ねる。

「ああ。全く同じだ…、!!」

返事をしながら、何かにハッとするように鬼道は顔を上げた。

「雷門にいる方が……」

そう小さく呟いた後、鬼道は円堂と土門の名を呼び何やら説明しだした。

「何か見つけたな、鬼道」

ベンチの隣に座る佐久間が、そう言って口角を上げた。

「いけー!」

「鬼道!」

フィールドでは辺見が目金からボールを奪い寺門へ繋ぎ、寺門が鬼道へセンタリングを上げた。
鬼道と共に円堂と土門も飛び上がり宙に浮いたボールの周りで身体を回転させる。

「たあああああ!」

「うおおおおお!」

「まだだ、まだ……」

鬼道は何かを見計らうように、回転を続けている。

「回転のタイミングがあっていない!?」

先程までは、3人ともが正面にボールを迎えるタイミングが合わさっていたのに今は、1人がボールの正面なら他の2人は後ろや横を向いてしまっていた。

『てか、わざとずらしてるよね』

「どういうつもりだ……鬼道」

流石の佐久間も、先程まであっていたものを崩した理由は分からないようだった。


「今だ!」

鬼道がそう叫び、3人はボールに両足を揃えて突っ込んだ。

「「「デスゾーン!!!」」」

紫色のオーラに包まれたボールが、今まではゴールの目前で威力が無くなって居たのに、今回は威力を保ったまま、立向居の待つゴールへと飛んで行った。

「これは……!」

立向居が驚いて目を見開いた瞬間に、デスゾーンはゴールへと入ってしまっていた。

「やった!」

「鬼道!」

地面に着地するなり、土門と円堂が嬉しそうに鬼道へ声をかける。

「ああ!デスゾーンの完成だ!」

高らかに鬼道が宣言する中、佐久間も興奮してか、ベンチから立ち上がっていた。
佐久間だけならず、雷門ベンチのマネージャーたちや、フィールドにいる雷門選手も帝国選手も鬼道たちの傍に駆け寄って完成を喜んでいる。

「でも、どうして出来たんだ?」

今まで全く出来なかったのに、と円堂は首をかしげる。

「タイミングだ。帝国と雷門は違うチーム。雷門には雷門のタイミングがある」

「そうか!俺たち3人のタイミングだったから出来たのか!」

きっちり規律を守る感じの帝国とは反対に、雷門は割とマイペースな子が多く、特に土門は試合中にウインク投げてきたり、ぬるっと練習サボったりするような自由なタイプだし、円堂は円堂でキーパーなのにゴール開けてシュートしに行くような自由なタイプだしね。

「ああ、成功したのはみんなのおかげだ」

そう言って鬼道は帝国の皆に礼を言うが、正直、この2人のタイミングを調整出来る鬼道の腕あってこそだろう。

まあでも、完成と言えどまだこれはステップ1なんだけどね。
新たなる必殺技、デスゾーン2のための。








そして、数十分後。
デスゾーンをデスゾーン2へと昇華させた、彼らの元に、黒いサッカーボールが落ちてきた。

煙が晴れると共に現れたのは、赤毛の宇宙人と白髪の宇宙人。

「ガゼル!バーン!」

「「我らはカオス」」

2人は声を揃えてそう名乗る。

「猛き焔プロミネンス」

「深淵なる冷気ダイヤモンドダストが融合した最強のチーム」

2人のキャプテンの後ろに、それぞれのチームメンバーがずらりと現れた。

「我らカオスの挑戦を受けろ!」

「宇宙最強が誰なのか、証明しよう!」


試合は2日後、この場所、帝国学園で。
受けなければ、帝国学園を破壊する。
そう一方的に告げて、彼らは黒いサッカーボールと共に去っていった。


『………』

ふむ。ガゼルは前回もこちらに興味すらないようだったけど、今回も変わらずそのようだ。
バーンも、今回は何も言ってこないし、やはり沖縄の時はグランへの対抗心から絡んで来ていただけで、何かを知っているようではなさそうだ。

グラン……ヒロトなぁ。
あからさまに接触して来なくなったよな。
不本意だったけどイプシロン戦に出て、雷門が勝利したけど、その後何も言ってこないのは少し、不思議なんだよなぁ。1番最初の時みたいに、父さんの脅威になるなら、と来そうなものなのに……。
ヒロトはこの間のダイヤモンドダスト戦も見に来ていたから忙しいわけでも無さそうだし。


「水津、難しい顔をしてどうした?」

そう豪炎寺に声をかけられ、ハッと意識を戻す。
周りを見れば、皆、帰るために片付けを始めていた。

『あー、いや、混成チームかぁ、と思って』

「ああ。予想外だったな」

いや、予定内だよ、とは返せないので、小さく頷く。

『まあ、うちだって今混成チームだもんね』

雷門中、帝国学園、SPフィクサーズ、白恋中、漫遊寺中、大阪CCC、陽花戸中、大海原中、世宇子中とよりどりみどりよ。

「確かにそうだな。エイリア学園も俺たちと同じようにチームの強化をしているということか」

同じように、ね。


ある意味真理
かもしれない。
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