フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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円堂がリベロとしての特訓を始めてから3日。
シュートを受ける練習をしていた円堂がついに、額から拳を飛び出させてボールをカットした。
何かを掴んだ様子の円堂に、鬼道が必殺技で試してみるか?と円堂を拘束していたタイヤを外す。

「こいつを打ち返すパワーがあれば本物だ」

そう言って鬼道は、ぴゅい、と指笛を吹いた。
地面から、ボコボコとペンギンたちが頭を出した。

「皇帝ペンギン……」

「「2号」」

鬼道の蹴ったボールを前に立つ一之瀬と豪炎寺が更に蹴りパワーを上げた。そのボールの周りをペンギンたちが共に飛んでいく。

「よし来い!」

そう言って円堂は手を大きく外へ広げた後、眼前で拳をクロスするように戻し身体にパワーを溜めていく。
そうすると大きな手のひらが円堂の頭上に現れた。

「はああああ!!」

円堂が力むと、手のひらはグッと拳をつくり、飛んできた必殺技シュートとを受け止めた。

おおっ、とみんなが見つめる中、シュートを受け止めた拳はボールを弾き返すことに成功した。

「できた……!よっしゃあ!」

「円堂!やったな!」

喜ぶ円堂を見て、一之瀬もガッツポーズを上げた。
やった、とみんなが喜ぶ中、目金が、眼鏡のフレームを持ちキラリと光らせた。

「閃きました。この絶対的なパワーによるヘディングをメガトンヘッドと名ずけてみてはいかがでしょうか」

おお!とみんなから歓声が上がる。

「メガトンヘッドかあ。へへ、その名前もらったぜ!」

ぐっ、と円堂が親指を立てて目金に向けた。

「円堂さん!俺も究極奥義ムゲン・ザ・ハンドの特訓頑張ります!」

円堂に感化されて、立向居が更にやる気を出す。

「円堂!まだまだパワーアップを続けるぞ!」

鬼道の言葉に、おう!と円堂が返事をする。

「何でも来い!」

「その意気だ。エイリア学園マスターランクチームに勝つには俺たちに限界があってはダメだ。もうひとつ必殺技を覚えてもらう」

おう、と円堂はボールをひと叩きする。

「なんでも……ん?その必殺技って……?」

円堂は、不敵な笑みを浮かべる鬼道を不安そうに見つめた。

「鍵は帝国学園にある」

『なんでもするって言ったもんね?』

「いや、言ったけど……」

鬼道の表情に、本能的にかヤバそうだと思った円堂の顔が引きつっている。
必殺技を一緒に考えてもらったから気持ちはわかる。スパルタ鬼コーチだからな鬼道は。

『まっ、てなわけで、片付けてキャラバンに集合ー!』

「え、練習はいいんですか監督?」

勝手な事言って瞳子さんが怒らないか?とみんなが不安そうに、ベンチにいる彼女を見た。

「問題ないわ。事前に2人から円堂くんのヘディング技が完成したら次のステップのため帝国学園へ向かう要請があったから把握済みよ」

「えっ、水津は何するのか知ってるのか?」

『そりゃあねぇ、一応トレーナーですから』

この数日の内に、鬼道からこのヘディング技が完成したとして、それで戦力が足りると思うか?という相談を受けた。
まあ相談に来た時点で、足りないと思ってるから聞きにきたんでしょ、と答えれば、そうだな、という返事をもらった。
そこからは、確信的なことは濁しつつ、こういう風にすればいいんじゃない?と案をだして、最終的には鬼道がやりたい必殺技をやる案で決定した。

『とにかく行けばわかるよ』


さあ、行こうとみんなをキャラバンへと急かした。






帝国学園に到着するなり鬼道の案内で帝国スタジアムへ入る。
フィールドへ入るなり鬼道は、ゴールポストに手を置いて感傷に浸った。

『久しぶりだなぁ、ここのフィールドで練習するの』

そう言えば雷門中生たちが、うん?と首傾げた。

「梅雨先輩、あの時風邪ひいて観客席でしたよ?」

試合前の、軽い練習には参加してなかったはずだと春奈ちゃんが首を傾げる。

「先輩、ボケるの早いっスよ〜」

『いや、ボケじゃなくてね。地区大会の決勝より前にここでちょっと練習させられたことがあって……』

「ああ、あったな」

当時もここに連れて来た鬼道が思い出したように頷いた。

『懐かしいよねー』

「は?なんでそんな前に帝国に?え?意味わかんねえ!?」

土門が混乱した様子で、私と鬼道を見つめる。

『え?スパイしてたのに土門は私が影山さんに呼ばれたの聞いてなかったの?』

「いや、知らねえよ!?聞いてないですよ鬼道さん!?」

思わず昔の呼び方に戻ってる。

「そうか、伝えてなかったか」

「ええー!?忘れてただけ……?」

『どんまーい』

ぽん、と土門の肩を叩く。

「そんな事より、土門、円堂。デスゾーンをやるぞ」

「え、デスゾーン?」

「いや、でも円堂のじいちゃんの裏ノートに書かれてる技の方がいいんじゃねえか?」

「デスゾーンだ」

困惑する2人に鬼道はもう一度そう告げる。

「は……」

ポカンとする土門を円堂が見上げる。

「やろうぜ土門!鬼道には何か考えがあるんだよ!」

「…なるほどな。梅雨ちゃんもニヤついてるし、なんかあるんだな」

おっと、慌てて口元を隠すように抑える。

「まあ、そうじゃなきゃわざわざ帝国まで来ることないか。よし乗った!」

土門がそういえば、鬼道は静かに頷くのであった。


デスゾーン(練習)開始
3人はデスゾーンで、他の子達は各々の練習を開始だ!
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