フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
122ページ/166ページ


「お待たせしました。エイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダストと雷門中の戦いが、今まさに始まろうとしています!」

いつものようにフットボールフロンティアスタジアムまで追いついてきた、角馬くんが実況を始めた。

ピピッーとホイッスルが鳴り響く。

「さあ、雷門のキックオフ……え、ええ!?」

角馬くんが早々に驚きの声を上げるもの無理はない。
ダイヤモンドダストのメンバーは、ゴールへの道を開けるように左右に別れた。

「なんと、ゴールまでガラ空きだ!どういう戦法でしょうか!?それとも攻めて来いと言う事でしょうか!?」

明らかな舐めプに、流石の豪炎寺も苛立ちを顕にして、目の前のボールをゴールへと蹴り飛ばした。
真っ直ぐ飛んでいく、と見せかけて、キーパーの目前で曲がったボールに、豪炎寺の隣に立つリカちゃんが拳を握った。

「決まったで!」

「ゴォオオオ、いや、違う!」

スレスレのところで、ダイヤモンドダストのキーパー、ベルガが片手を伸ばして軽々とボールを止めた。
そして、彼は、フンッとボールを思いっきり投げ返した。そのボールは、反対ゴールの円堂の元へ飛んでいく。

「ぐっ、」

円堂は両手で抱き抱えるように、何とかボールをキャッチした。


ゴールからゴールまでって肩よすぎでは?


「よぉし」

円堂が、チームメンバーにボールを渡そうと振りかぶった所で、既にFW2人と鬼道に1人ずつマークが付いていた。

「なんというスピード!あっという間に雷門サイドに入り込んだ!」

「くっ、土門!」

円堂は直ぐにまだマークの付いていないDFの土門へボールを回した。

「一之瀬!」

一之瀬へと飛んだボールを、彼の後ろにいた白い仮面の女選手が、瞬時に移動してボールを奪った。

「なにっ」

「おっと、リオーネがカット!ガゼルにパス!」

オーバーヘッドキックで、パスされたボールをガゼルが受け取り、彼はすぐさまボールをゴールへ蹴った。
真正面にきたそれを円堂は両手で抱きとめ、何とか白線ギリギリで止まった。

「ビリビリくるぜ……!」

「ふん」

どことなく円堂もガゼルも楽しそうに見える。


試合を観て入れば、ふと視線を感じて上を見上げる。
人のいないはずの観客席に、赤毛が2つ見えた。
顔色の悪い方の赤毛が、こちらに向かって。やあ、と言うように手を挙げた。
もうひとりの赤毛は、顎を軽く上げ、金の目がこちらを品定めするように見下ろしている。

『………』

よし、見なかったことにしよう。
ヒロトと南雲から視線をずらして、フィールドを見やる。


「一之瀬から鬼道へとパスが出た!攻め上がる雷門!」

「行けー!1点先取よー!」

ベンチから秋ちゃんが叫ぶ。

「一之瀬!」

鬼道から一之瀬へ戻り、そして一之瀬は直ぐにリカちゃんへボールを回した。
ボールを受け取ったリカちゃんに、ダイヤモンドダストの巨体の選手、ゴッカが詰め寄った。

「フローズンスティール!」

ボールへ向かって氷の道ができ、リカちゃんの足を凍らせ動けなくなった所を、ゴッカはスライディングで氷の道の上を滑ってボールを奪い去った。

「うわぁっ」

『リカちゃん!』

スライディングで吹き飛ばされたリカちゃんは、芝に転がり膝を右膝を抱えた。

「ああっー!?浦部負傷か!?」

「リカ!!」

「それが闇の冷たささ」

そう言ってガゼルが目を細める。
そんなガゼルへ向けてゴッカがボールを蹴った。

「ボールを奪ったゴッカ。ガゼルへとロングパスだあ!」

サッカーにはタイムがない。リカちゃんはフィールドに転がったままだ。
ボールをラインの外へ出すか、点を決めるかしなければ、彼女の手当も出来ない。


ボールを受け取りドリブルで上がるガゼルに、させるか!と土門が立ち塞がるが、ガゼルは見事なフェイントで、土門を避け、シュートを放った。
ゴール前へ塔子ちゃんが駆け込んで、わああああっと叫びながら気合いを入れる。

「ザ・タワー!!」

出来上がった塔がゴールの前で伸びるが、ガゼルのシュートで打ち砕かれて、塔子ちゃんは上から叩き落とされた。

「ザ・ウォール!!」

直ぐに、フォローするように壁山がザ・ウォールを発動し、その壁にシュートはぶつかって弾かれ、上手くフィールドの外、観客席の上の方へ飛んで行った。

「おっと、ゴールは何とか防いだあ!だが雷門辛い!ノーマルシュートでさえこの威力!2人がかりで止めるのがやっとだ!」

高いところから落ちたが、塔子ちゃんの方は直ぐに立ち上がっていた。
しかし、リカちゃんは未だに倒れたままで、急いでフィールドの傍へ向かう。
その時だった。
上から、フィールドの中に、ぽん、とボールが降ってきた。

「え?」

「戻ってきた……」

観客は居ないのにボールがひとりでに返ってきて、雷門イレブンどころか、ダイヤモンドダストのメンバーも驚いた。
先程観客席にいた、ヒロトと南雲がいた方向からでもなかった。

「あっ!」

円堂の驚きの声と共に、空からふわりとブロンドの天使のような見た目の美人が降りてきた。
地上に降り立った彼はちょん、とつま先でボールを蹴りあげて、それを器用に人差し指の上に乗せてクルクルと回転させた。

「アフロディ……!?」

突然の亜風炉照美の登場に、雷門中生徒一同は唖然とした。

「また会えたね、円堂くん」

「誰やのん、アイツ……」

一之瀬の肩を借りて起き上がったリカちゃんが、そう言って目を細める。

「フットボールフロンティア決勝で戦った、世宇子中のキャプテンだ」

一之瀬がそう説明する。
雷門中がフットボールフロンティアで優勝したのを観ていた塔子ちゃんと立向居以外の追加メンバーは、確かに知らないだろう。
神のアクアでドーピングして戦っていたチームのことなど。

「何しに来たんだ」

円堂が警戒した様子で訊ねる。

「戦うために来たのさ。君たちと」

お前もか、と言うように円堂はくっ、と唇を噛んだ。

「君たちと共に奴らを倒す!」

「なにっ!?」

思いもよらぬアフロディの言葉に、円堂は目を見開いた。

「そういうわけだ。水津梅雨さん、彼女の手当と僕のユニフォームを」

こちらを向いてニッコリと笑ったアフロディを見て、あっ、と思い出し急いでリカちゃんの元へ駆け寄るのだった。


救いの神
そういえば今回、ユニフォームの準備忘れてたな。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ