フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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試合はイプシロン改ボールでスタートした。
マキュアのキックオフでゼルがボールを受け取りすぐさまメトロンにパスを出した。

通さへん!と立ち塞がるリカちゃんをメトロンはファドラとのワン・ツーパスで切り抜けた。

以前より攻撃のテンポが速い。

一之瀬と塔子ちゃんがメトロンの元に向かうが、メトロンは空中に飛び上がりメテオシャワーという隕石を落とす必殺技で抜けられてしまった。
2人を回避したメトロンは、地面に着地し、ちょんとボールを軽くけりゴロゴロとゆっくりボールが転がっていく。
そのボールにチャンスとばかりに綱海と壁山が駆け寄る。

『あちゃあ……』

2人がボールを目前にした所でマキュアすかさず滑り込んでファドラにパスをだした。
DF2人がつられて前に出たので、ゴール前が空いてしまった。そこに向かってボールをもらったファドラが大きく、高く蹴りあげた。
そしてそこにメトロン、マキュア、ゼルが走り込んできた。

「おっーと!これは前回円堂からゴールを奪った必殺技か!?」

ハアッ!!とメトロン、マキュア、ゼルは気合いを入れるように腰元でグッと腕を曲げた。その衝撃で地面がえぐれ、飛び上がった岩石がボールにまとわりついた。

「「「ガイアブレイク!!!」」」

3人で同時にボールを蹴る事でまとわりつい岩石を打ち砕き、その勢いに乗ったボールが雷門ゴールへ向かって飛んでいった。

「今です!円堂さん!」

立向居がそう叫び、円堂は構える。

「行くぜじいちゃん。究極奥義──」

円堂はグッと左足を天へ上げる。その足を振り下ろしその勢いで腕をひねりながら拳を突き出した。

「正義の鉄拳!!」

円堂の前に現れた黄色の光の拳がガイアブレイクのボールとぶつかり弾いた。

うわああああああ!!と観客席が湧き、フィールドではイプシロン改たちが驚いたような顔をしている。その中でデザームだけがニヤリと楽しそうに笑っていた。

「すごい……!すごいですキャプテン!」

「ええ。どこまで強くなる気なの」

「円堂くん……!」

マネージャー3人が感極まる中、目金がくいっとメガネを持ち上げる。

「間違いありません!これこそ最強のキーパー技です!」

ね!と言うように隣りに座る彼は私を見上げてきた。

『あー、うん』

これから先まだまだあるんだよなぁとは言えないし。

「なんですか、歯切れが悪いですね」

『いや、なんか……』

「何かあるの?」

ベンチに座らず立ったまま試合を見ていた瞳子さんが見下ろしてきた。

『いえ、なんかちょっと違和感があって』

「違和感?」

『どう言ったらいいんでしょう……。なんとも言えない感じがするんですよ』

話を逸らすようにフィールドを見れば不思議そうな顔をした立向居がいる。1人だけ正義の鉄拳の違和感に気づいた、そんな彼の気を置いて試合が再開する。

「円堂に負けちゃ居られないぞ!」

そう言った土門を始め雷門の士気が、ぐんっと上がった。

ボルケイノカットにフレイムダンス、旋風陣と、試合中に何度ボールを取られてもみんな幾度となく必殺技でボールを取り返す。
木暮が止めたボールをリカが受け取り、シュートに入る。

「ローズスプラッシュ!」

美しいバラのシュートが花弁を散らしデザームの待ち構えるゴールへ飛んでいく。

「ワームホール」

両腕を時計の針のようにぐるりと、回したデザームは空間を歪ませ、トンネルのような空間領域を作りそこにボールを吸い込ませて、下にたたき落とした。

それに悔しそうにリカちゃんが拳を握る。

「浦部のシュートがデザームには通用しない!前回、デザームから唯一得点を上げている吹雪はいつシュートを打つのか!?」

角馬くんの実況を聞きながら眉間にシワが寄る。

「お前だ!お前が打ってこい!」

更に吹雪を名指しし挑発するようにボールを吹雪に蹴り飛ばした。
吹雪はそれを地面と足で挟むように受け止める。

「吹雪さん、大丈夫でしょうか……」

不安そうに春奈ちゃんがこちらを見つめた。

『どう、だろうね。あんなふうに挑発されたら……』

好戦的な彼、は…………。
フィールドでは鬼道が、気にするな、と吹雪に声を掛けているが…………。

「お前は自分のプレイをすればいいんだ」

「わかってる」

鬼道に吹雪はそう返して、ボールをドリブルし始めた。

「最初からそのつもりだァ!!」

声を張り上げ叫んだ吹雪に、雷門中一同は驚いている。

「吹雪!?」

「どうして……!?」

『いくらみんなが彼の事情を知って、DFに下げたところで、彼の中からアツヤの人格が居なくなったわけじゃない』

いや、むしろここ数日はずっと士郎のフリをしたアツヤの人格だった。
本人は上手く隠してるつもりだろうけど、口調が士郎の時より荒々しかったり、士郎だったら君付けで呼ぶはずの名前を呼び捨てで呼んでたり、些細なことだがよく見ていればわかる。

皆は意を決したように攻め入るアツヤのフォローに回る。
彼の力に頼りすぎないよう、共に戦う気なのだろうけどだけど、それじゃあ……士郎は…………。

いや、士郎の方は大丈夫か、なんて、知っててまたみんな黙ってた私が言えたことじゃないか。

「シュートを決める……!それが俺がここにいる意味ッ!!」

『ここにいる意味、か…………』

私がここにいる意味は、なんなんだろう。
ずっと疑問で何も分からない。
なんのために私はこの世界にいるの?

「──エターナルブリザード!!」

吹雪がシュートをうち、氷のボールがゴールへ飛んでいく。

「予想通り、楽しめそうだな!」

口元を歪めたデザームは、天高く手を突き上げる。

「ドリルスマッシャー!」

手に大きなドリルが付き、デザームはそれを吹雪のエターナルブリザードにぶつけた。

「……!」

ドリルスマッシャーとエターナルブリザードがぶつかり合い、ぽん、とボールが弾けて地面に転がった。

「勝ったのはデザームのドリルスマッシャー!エターナルブリザードが敗れたァァ!?」

頼む角馬くん煽るな。

「なんだ……今のは?」

ドリルから戻って拳をデザームは不思議そうに見つめ、その様子を見たアツヤはギリと悔しそうに歯を食いしばった。

「もう一度だ!俺にボールを回せ!」

振り返って吹雪はみんなに叫んだ。


焦慮
アツヤは明らかな苛立ちと焦りをみせていた。
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