フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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とりあえず鬼道と相談してみんなには、私の事情は伏せることにしたけれど、響木さんには話してもいいんじゃないか?と言うことで、あの場で電話をし、鬼道と2人で事の次第を話せば、そうだと思ったと言う答えが返ってきた。

気づいてたのか、と驚いていれば、響木さんはお前が病院に行けと言ったんだろうと笑っていた。
病院の件は笑い事じゃないんだけどね…。でも、それと異世界人の情報だけで察せるのか。

なんにも解決はしてないけれど、話したことで何となく肩の荷が降りたような気がする。


そして、そんな夜を過ごした次の日。
練習中の私たちの元に、空から綱海条介とサーフボードが降ってきた。
海辺のグラウンドとはいえ、どうなってんだよ、その飛行距離。超次元サーフィン恐るべし。

「よっ、探したぜ円堂!」

そう言って目に着けたゴーグルを頭の上にずらして、綱海はニカッと笑って見せた。

「綱海!」
「ちょっと!危ないじゃないですか!いきなりこんなもので飛んできて!!」

落ちてきたサーフボードがスレスレだった目金がボートを叩きながら怒ると、綱海は悪ぃ悪ぃと頭を掻いた。
今回ばかりは目金が正論である。

「お前ら見たらすっとんできたくなってな!」

「ったく、も〜」

綱海は犬か何かか。しかも目金はそれで折れてあげるのね。


「それより円堂!俺たちのチームとサッカーやらないか?」

「俺たちのチーム?」

円堂が首を傾げれば、綱海はどこから出したのか……いやホントにどこから出した?
とりあえず水色で胸元に海と書かれたユニフォームを頭から被って着てみせた。

「俺、サッカー部に入ってよぉ」

綱海のその一言に皆、ええっーー!!と驚きの声を上げた。

「この前なんか面白かったしな〜。まあ、ノリだよノリ!」

「ノリって…」

と秋ちゃんが呆れている。

『3年生で新入部員って受け入れてくれるもんなんだねぇ』

「おう!そこは皆ノリよく入れてくれたぜ!」

『よかったね』

普通3年生は引退する側なんだけどなぁ。

「ああ。で、皆にはお前らの事話したら、それはフットボールフロなんとかで優勝した雷門中で違いないってことになって……どうしても試合がしたいって聞かなくてよぉ。なぁ、いいだろ円堂?俺の顔を立てると思ってさ。…それに、」

ニコニコと笑いながら話していた綱海が、急に真剣な顔つきに変わった。

「俺もお前らともう1回サッカーしたいんだ」

「綱海……!!もちろんさ!なっ、みんな?」

円堂の問いかけに各々おう!やハイっすなどの返事が返ってくる。
やる気になりワイワイとしている雷門イレブン達だったが、

「その試合許可できません」

雰囲気をぶち壊す様に瞳子さんはそう言った。
えっ、とみんなが振り替えれば瞳子さんは真顔で仁王立ちしている。

「何この人」

ああ、綱海に会った日はまだ合流前だったか。

「アタシたちの監督」

塔子ちゃんが綱海に教えてあげている。

「監督ぅ?なんかノリ悪そうな顔してんなぁ」

本人を目の前によく言えるな。

「みんな、昨日のこと忘れたわけじゃないでしょうね」

綱海の言葉は気にせず、瞳子さんはそう告げる。

「昨日のこと?」

『プロミネンスってチームが現れたこと、だね』

「ええ。私たちの前には次々と強い敵が現れている。そんななんの練習にもならない地元チームと試合して遊んでる暇はないはずよ」

……やっぱちょっと怒ってんのかな。ノリ悪そうな顔とか言われて。

「よおよお監督さんよぉ。なんの練習にもならないってのは、ちょっと言い過ぎじゃねぇか?こう見えても俺たち大海原中は沖縄の中じゃピカイチ。フットボーなんとかにも出るはずだったんだぜ?」

そう綱海が誇らしげに言う。

「フットボールフロンティアに!」

一之瀬が興奮したように聞き返すけど……、あれ予選は参加費払えば出れるんだよなぁ。だって弱小の雷門が出れたんだから。
一之瀬は本戦始まってから転校してきたから知らないんだけど、本戦か予選か、どちらに出る予定だったのかで話はだいぶ変わってくると思うけど。

「ちょっと事情があってでられなかったんだけどな。地区予選の決勝やってる時に村祭りがあってよぉ……ノリまくって踊ってた監督が集合時間のこと忘れてたらしいんだ。で、気がついた時にはとっくに過ぎてて不戦敗」

ああ。ちゃんと予選の決勝か。
それにしても数日前までサッカーに興味なかった綱海が知ってるくらいだから学校でめっちゃ話題だったんだろうなぁ。

「マジっスか…?」

「ま!そういうこともあるわな〜」

「「「「「ありません!」」」」」

ニカッと笑って言う綱海に女子達が総出でツッコミをしてた。
私もノレばよかったな。知ってたからあの監督じゃな〜って思っちゃったわ。

「まあ、それより試合だ、試合!やってくれんだろ?」

「いいですよね!監督!」

監督!と懇願するようにみんなが名を呼べば、瞳子さんは黙ったまま考えだした。
これは、もう一押しだな。

『沖縄1のチーム。有力な選手がいるかもしれませんよ?』

実際ヤバいのいるし。

黙っていた瞳子さんの眉が一瞬ピクっと動いた。まだダメか?

「「「監督〜!」」」

もう一度みんなが呼ぶ。そうすれば瞳子さんは小さくため息を吐いた。

「……好きにすればいいわ」

そう言い放ち、瞳子さんは皆に背を向けた。



結局子供たちに甘い
厳しいことも言うしやるけど、こういう所が憎めないんだよねこの人。
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