フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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「まだ、他にいたなんて……」

ヒロトと南雲が消え去ったフィールドをみて、ぽつり、と瞳子さんが呟く。

「ジェネシスが最後じゃなかったのか…」

「話の内容からするとジェネシスと同格のチームのようだ」

「ああ…。エイリア学園には一体どれだけのチームがあるのか……」

もう1チーム……いや2チームあるよ。

「またまだ、戦って行かなきゃいけないんっスね……」

「風丸さん、さっさと撤退してよかったかもね」

木暮くん!と春奈ちゃんが叱るが、木暮が言うことも間違っちゃいない。

「炎のストライカーは奴じゃなかった。さあ、また1から出直しだ!」

切り替えるように鬼道が大声で仕切るなか、私はフィールドを出てベンチに寄る。

『土方ちょっといい?』

「ん?どうした?」

土方だけでなく、同じくベンチにいるマネージャー3人もこちらに視線を向ける。

本当は2人だけで話が出来れば楽なんだけど、ここで連れ出すのも変だし……。

『さっきの、どう思った?』

「さっきのって…」

ああ、一瞬にして色々ありすぎてわかんないか。

『南雲のシュート。土方ディフェンダーでしょ?止められると思う?』

「え?俺あんたにディフェンダーって言ったか?」

きょとん、として、聞いてきた土方に、しくったと心の中で舌打ちする。

『あー、見た目的にディフェンダーだと思った。違ったらごめん』

「いや、間違っちゃねぇよ。俺なら止められるかって事でいいのか?悪ぃが俺はチームには入れねぇぞ?」

『うん知ってるよ。兄弟の面倒を見なきななんでしょ?』

ああ、と土方が頷く。

『……それに今居候もいるしね』

そう小声で言えば、声には出さないが、なんで知ってる!?というように土方は驚きの顔を見せた。

彼の後ろのマネージャー達には聞こえていないし、土方の顔も見えていないようだ。

『それでも例えばだよ?土方がチームに入ったとしてさっきの止められる?』

話を途切れさせては後ろの3人が不思議がるだろうから話題を続ける。

「え、あ、……さあ、やってみないとなんともな」

少しテンパった様子で狼狽えた土方だったが、直ぐに意図に気がついたようで会話に乗った。

『まあ、そうだよね。残念。近々またエイリア学園と戦うことになるだろうから戦力が欲しかったんだけど……家族が優先だもんね』

「ああ……」

『それこそ、彼みたいな危険もあるしね……』

土方には意味が通じるだろう。彼が傍にいるのだから。

『でもまあ、応援も力になるから、もしエイリア学園との試合があったら、兄弟、と、一緒に応援しに来てね』

わざと変な区切りを入れて喋る。
当回しに豪炎寺を連れてこいってことなんだけど通じたかな?

「あ、ああ……。…っ、とそろそろ俺は行くわ。それこそ兄弟達が待ってるんでな」

『うん、それじゃあ。 』

よろしく、と口パクで伝える。
土方は小さく頷いてからそのまま帰って行った。













『さて、と』

みんなが寝静まったテントからそっと出る。

「こんな時間に何処へ行くんだ?」

『ちょっと砂浜を走って来ようかと……って?』

反射で答えてから、外にいた鬼道に気づく。

『鬼道こそこんな時間に……しかもなんでタオルケット持ってんの?』

「ああ、円堂があの上で寝こけてな」

そう鬼道が指したのはキャラバンの天井。
なるほど、いくら温暖な地域といえど夜は冷える。風邪を引かれたら困るもんな。

鬼道はカンカンとキャラバンに備え付けられたハシゴを登っていき、毛布を手早く掛けて、降りてきた。

「最近いつもこんな時間に起きてるだろう?」

『え?』

なんで知ってんの、と聞けば、鬼道は春奈がな、と言った。

「夜中にこっそり抜け出して、練習して戻ってくると聞いている」

『あれ〜静かに出たつもりだったんだけど起こしちゃってたのか』

まあテントの中も狭いし寝袋脱ぎ着してたら音が少しは立つもんなあ……。

「眠れないのか?」

『うーん、それもあるけど、1番はなにわランドの練習参加してなかった分の遅れを取り戻さないとって思って』

「それで走り込みか」

『うん。元々体力がないのが課題だったから走り込みで体力アップと砂浜で走る事で更に、足腰が鍛えられるからジャンプ力もあがるだろうし』

実際に砂浜でのトレーニングと言うのは効果があると言われているしね。

「なるほど。そういうことなら俺も付き合おう」

『えっ、鬼道、就寝時間ギリギリまで円堂と立向居と練習してなかったっけ。疲れてないの?』

「あれで逆に目が覚めたのかもしれんな」

『マジ〜?元気だねぇ』

「オーバーワークになると言うなら辞めるが…」

『いや、鬼道は自己管理できる方でしょ?とは言ってもやりすぎはやっぱり良くないし30分だけね』

タイマーセットしとこうと携帯を取り出す。

「ここからスタートするのか?」

『うん。このまま砂浜まで走っていって、後は海岸沿いを往復する』

「わかった」

そう返事をして、鬼道は地面につま先を立ててグリグリと足を捻った。
ストレッチが大事って、うちの元陸上部がよく言ってたもんね。

私も倣って軽く足首を解す。

『いい?』

「ああ、いつでもいいぞ」

『んじゃ、スタート』

ピッと、タイマーボタンを押して走り込みをスタートする。

「ひとつ、聞いてもいいか?」

『ん?なに?』

隣を並走しながら鬼道が聞いてきた。


「……お前は、宇宙人か?」

ああ。ついにその質問か。
鬼道はずっと勘繰ってたしねぇ。

『あながち間違いじゃないよ。君らから見たらね』

「そうか」

そう答えて、驚いたり、激怒したりしないところが鬼道だなぁ。きっと色々なパターンを推測してたんだろうけど。

「しかし、やけにあっさり認めたな」

『うーん、そうだね……。鬼道は、陽花戸中の時も同じこと聞こうとしてたでしょ?』

ああ、と鬼道は頷く。

『その頃から確信があるって事は、否定したところで意味無いもの』

何かしらの証拠がなければ、鬼道の性格上、問い詰めてきたりはしないだろう。

『それに、みんなの前で聞かなかったって事は、鬼道もこの事を隠すつもりでいるって事でしょう?』

「ことの次第によるがな」

うーん、冷静。
本当に中学生かよ。

「お前が宇宙人だったとして、確認しなければいけない点はひとつ。エイリア学園の者かどうかだ」

『ああ、それは胸を張って違うと言えるよ』

「まあそうだろうな。スパイだったとして、だとしたら、あんなわざとらしく絡んできたりしないだろうしな」

今日の南雲とヒロトの事が。潜り込ませるならわざわざ名を上げて目立たせる様なことはしない。

「エイリア学園に目をつけられてる、のは有りそうだがな」

『あー……。それは、まあチームに引き抜きとかじゃなく、たぶん別の観点から……』

「別の観点とは?」

まあ、気になるよね。

『さっき宇宙人か?って質問に答えたけど、正確には違うんだよね』

「俺たちから見たら、と言う点か」

『流石、ちゃんと聞いてるね。……正しく言えば私は異世界人だよ』

「……。その発言は影山の前でもしていたな」

『そう。たぶん鬼道はそれを覚えてるから、さっきの質問を否定しても意味ないとおもったんだよね』

「ああ。覚えている。この女は、何をわけのわからん事を言ってるんだと記憶したからな」

まあ、普通に会話聞いたてただけならそういう感想だよね。

「異世界人と分けて言うからには、違いがあるのか?」

『もちろん。エイリア学園の宇宙人たちは、この世界の宇宙人だもん。私は、この世界の外から来たから異世界人』

「ふむ…」

『図解しようか』

ちょうど砂浜に辿り着いたし、砂地に指で絵を描く。
小さい丸をひとつ描いて、その丸を取り囲むように大きな丸を描く。

『こっちの小さい丸がキミらの星で、この大きな丸が宇宙だとして』

それを大きな四角で閉じ込める。

『この宇宙含めてキミらの世界で、私の世界は……』

別の場所に同じように小さい丸の外に大きい丸を描く。
そしてその横に、瞳のマークを描いて、矢印で最初の四角で囲んだ世界に繋げる。

『こっちが私の世界で。私の世界から、キミらの世界を見る事ができる。君たちの方から認知する事はないけどね』

「まるで、お前から見たら俺たちの世界が箱庭だと言うようだな……」

『まあ、それが近いね』

「実際見ると言うのはどういう風にだ?映像として観察されている、と言うことか?」

『あー…観察というか……。ショック受けるかもしれないけど、いい?』

「異世界があるということ以上にか?」

『うん。私だったらしばらく寝込むよ』

そう言えば、鬼道は腕を組んで少し悩んだあと口を開いた。

「とりあえず俺だけだしな。話してみてくれ」

『あー、じゃあもう包み隠さず言うけど……。私の世界じゃこの世界、ゲームやアニメの世界なんだよね』

「は……?」

まあそういう反応よね。自分の世界がゲームやアニメってことは自分はその世界の登場人物って事になるわけだし。

主人公は円堂守
そして私は彼の身の回りに起きることを知っている。
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