フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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南雲を連れて円堂たちと合流すれば彼は、相応しいかどうかテストしてくれよ、なんて自らそう言い、南雲対雷門イレブンで一点先取の試合をすることになった。

捜索中、円堂達が出会った土方雷電という割烹着を着たガタイのいい少年が、サッカーをしても大丈夫な広場を紹介してくれてそこのグラウンドにみんな並んだ。

『瞳子さんも合流できたんですね』

いつの間に合流したのか、しれっと瞳子さんもいる。

「ええ。道中、目金くんが海に落ちたという事以外は問題はなかったかしら?」

『はい。昨晩連絡した通りです』

「そうならいいわ」

そう言って広場に備え付けられたベンチに腰を下ろす瞳子さんを見て、マネージャー3人と控えGKの立向居、それに土方も腰を下ろす。

「オイオイ!」

私も倣って座ろうとしたら、後ろから南雲に声をかけられた。

「水津!何ベンチに行こうとしてんだよ、アンタも出ろよ」

『えっ、いや…今ちょうど11人だし……』

「俺は宇宙人を倒した奴らとやりてぇ、そう言っただろ?…そこの眼鏡の奴と交代しろよ。アンタの方が強いだろ?」

『えー、と』

目金もやる時はやるんだけどな。
どうしようかなと思い目金を見ると彼は、ふっ、と笑って眼鏡のブリッジを中指で抑えた。

「フッ、たかだかテスト如きにこの僕が出るまでもありません。水津さん、この無礼者をやってしまいなさい」

キランとメガネを光らせながらグラウンドを出ていく目金に、なんのキャラだそれ、とツッコミを入れて、致し方ないので代わりに入る。

南雲は満足したように、よし、と笑って、地面にボールを置いた。

「準備はいいかね?」

そう聞きながら古株さんがホイッスルを手にする。

「んなもんとっくに出来てるよ。円堂!覚悟しな」

ゴールを守る円堂を見据えて、南雲はボールから1歩下がった。
それを見て、古株さんがピィッーとホイッスルを鳴らした。
それを合図に、こちらの皆は一斉に走り出す中、私は逆に後退する。

「梅雨!なにやっとんのや!」

リカちゃんが、前衛なのにボールを取りに行かない私に気づいて怒る。

「あんた賢いな!あんたらは俺からゴールを守るんだから、一気に突っ込むのは悪手だぜ?」

そう言って南雲はニヤリと笑って、皆が狙う目の前のボールを真っ直ぐ頭上に、高く、高く飛ばした。

「なんやっ!?」

えっ、と皆の視線が上に向いた隙に彼自身も高く飛び、南雲からボールを奪おうと前に向かったリカちゃんと一ノ瀬を軽々と抜いた。

「こんなのさっきは見せなかったぜ!?」

土門が言うように、さっき私たちに見せたアトミックフレアは、豪炎寺のファイアトルネードと変わらないくらいの高さで打っていたが、今はそれよりも更に高いところにいる。
そしてその1番高い到達点からボールが重量に従い落ちるよりも早く、南雲はボールを下に叩きつけるように蹴った。

「ディフェンス!!」

鬼道がいち早く指揮を取れば、最後尾の壁山と木暮が驚いて動けない中、DF位置に近いMFの塔子ちゃんが1番に向かった。

「ザ・タワー!」

塔子ちゃんの足元から塔が生える。
その間に、瞬間移動でもしたのかという速さでボールよりも先に地上に降りた南雲が、足がスプリングにでもなってるのかよ、というような勢いでまた飛び上がり落下中のボールを蹴ってボールに軌道変更と更なるパワーを与えた。
ザ・タワーが砕かれ、その後ろから吹雪がフォローに入る。

「アイスグランド」

他のゲームだと火属性と氷属性って相性悪いけど、イナズマイレブンの属性はなんと風林火山の4属性。
アイスグランドは風属性で、火属性との相性は良くも悪くもない普通。だけど、いつもならがっちりと凍らせて止めていたボールが、氷の壁を滑るように飛び跳ねた。

それに吹雪自身も驚いたように目を見開いている。
南雲の実力の方が上だから、それとも吹雪が今、DFの士郎ではなく、FWのアツヤだから威力が落ちたのか分からないが、呆然とする吹雪の上を軽々と飛び越えた南雲がボールをさらっていく。

「水津!」

鬼道が止めろ!と言うように名を叫ぶ。

『あいよ!』

横から走り込んで、南雲の高さに合わせて跳ぶ。

「やっぱりアンタも良く飛ぶなッ!」

そう言って南雲は空中にいる状態から更に上にボールを蹴った。

『はあ!?』

「だけど、俺はもっと高いぜ!」

あろうことか南雲は私の肩を踏み台にして、もっと上に飛んだ。しかも踏切のパワーで私は下に落とされる。

『っ、』

最悪なんだけど!
頭を庇いながら下に落ちる。ゴロゴロと転がって衝撃を減らし、上を見る。

「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる!」

南雲はまだ空中に居て、そこから必殺技の体制に入った。
滞空時間もだけど体幹もどうなってんだよ。

「──アトミックフレア!」

オーバーベッドキックで南雲はボールをゴールに向かってたたき落とした。

「よし、来い!」

円堂はぐっと、拳を握り、マジン・ザ・ハンドの溜めに入った。

「マジン・ザ・ハンド!」

ぐっと握った拳を開いて後ろの魔神と共に思いっきり突き出す。けれど、受けきる事が出来ずにそのままボールの勢いに押されゴールへと叩きつけられた。

ピッピーと古株さんが終了の笛を鳴らす中、ゴール内に転んだ円堂は上半身だけ起こしてブルブルと頭を振った。

「すっげーな!南雲!」

キラキラと目を輝かす円堂を見て地上に降りた南雲は得意げに胸を逸らした。

「当たり前だ。俺が入れば宇宙人なんかイチコロなんだよ」


篝火狐鳴
宇宙人がよく言うよ。
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