フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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青いゴッドハンドでがっしりとボールを掴んだ立向居を見て、皆あんぐりと口を開けている。

「わはは!ゴッドハンドだ!」

円堂が嬉しそうに笑って立向居に駆け寄った。

「凄いよ立向居!お前やるじゃないか!」

ぶんぶんぶん、と立向居の両手を取って円堂が振り回す。

「あ、ありがとうごさいます!」

「…でも、どうやって?」

円堂と立向居の様子を見ながら、風丸が呟く。そう、立向居には円堂のように秘伝書があった訳ではないのだ。

「アイツはゴッドハンドの映像を何度も何度も見て死ぬほど特訓したんだ」

戸田キャプテンは誇らしげにそう教えてくれた。

「見ただけで、身につけたって…」

「すごい才能だな」

塔子ちゃんが驚き、鬼道が讃頌する。

「夢ッスよね、キャプテン以外の人がゴッドハンド使うなんて夢ッスよね」

ちょっと頬っぺたつねって欲しいッスと壁山が顔を近づければ、木暮がその頬を容赦なく鷲掴みにした。

「いたーい!夢じゃないッス!!」

いててててと頬を抑える壁山に、まったく、とため息を吐く。

『円堂以外が使うのが夢なら響木さんが使ってたあれはなんなのよ』

イナズマイレブンのおじさん達との戦いの時に響木さんゴッドハンド使ってたはずだぞ。

「あっ、すっかり忘れてたッス」

響木さん可哀想…。

「でもでも、監督はキャプテンのおじいさんの教え子なんッスから使えるのは分かるッスけど、映像を立向居くんは見ただけでッスよ!?」

「なあ、それってそんなに凄い事なのか?」

きょとん、とした様子で木暮が見上げてきた。

「そうや。あんな手をびゃーっと出してぎゃーってやったら出来るんちゃうん?」

そう言ってリカちゃんが手を掲げて真似して見せる。円堂家に負けず劣らずな変な擬音だな。リカちゃんも感覚派っぽいもんね。

『まあ、そんな簡単にできるもんなら雷門中生たちがここまで驚かないよねー』

「ああ。円堂はゴッドハンドを身につけるために、それこそ血のにじむような特訓をしたんだ」

幼なじみだからこそ知ってる円堂の姿を思い浮かべながら、風丸が言う。

『だろうね。さっき戸田キャプテンも言ってたじゃん。立向居も死ぬほど特訓したって。それはただ才能があるだけでゴッドハンドを完成させたってことじゃないのよ』

努力ってのやろうと思えば、頑張れば誰でもできる。けどそれを完成まで続ける根性や忍耐力ってのはその人次第だ。


「なあ、立向居、手を見せてくれないか」

円堂にそう言われ、はい、と手袋を外した立向居の手は、思った通り凄くボロボロだった。

「やっぱりな。相当特訓したな!」

「いえ、それほどでも…」

「努力は必ず結果に繋がる!」

はい!と返事した立向居に円堂は何故か背を向ける。

「いくぞ!」

円堂がそう言えば意味がわかったのか、立向居はもう一度はい、と返事をして後ろを向いた。
そして2人は構えを取って、手を上に掲げ、体を捻りながらその手を前に突き出した。

「「ゴッド、ハンド!!」」

2つのゴッドハンドがぶつかり合い、眩い光を生んだ。


『なんだこれ』


いや、本当なんだこれ。青春??おばさんにはわかんないよ。

ごくり、と土門が唾を飲み込む。

「ほ、本物だ」


よく分からんけど、確かに凄かった。

「凄いよ立向居!お前のゴッドハンドは本物だ!」

「あ、ありがとうございます!俺、もっともっと強くなります!」

「その為にはもっともっと特訓だ!」

はい!と立向居が返事をし、そんな彼によかったなと立向居と声をかけながら戸田キャプテンが割って入りひとつの提案を出した。

「どうだい?俺たちと合同練習しないか?」

その言葉に円堂が二つ返事で答え、陽花戸中サッカー部も、イナズマキャラバンの面々もグラウンドの中に集まった。

「よかよか。青春たい!」

陽花戸中校長も嬉しそうでなによりだ。











合同練習の後は、陽花戸中のみんなも含めて一緒に夕飯のカレーを食べた。練習中に急遽、陽花戸中サッカー部も校内合宿をする事を決めて、みんな学校に泊まることになって楽しそうだ。

陽花戸中の子達は体育館、我々は相変わらず男子がキャラバン内で女子は外に簡易テントを張って眠る。



『…いや、眠れん』


すやすや、と寝息を立てる女の子達の中で、ゆっくりと寝袋の中を抜け出して、そっとテントの外に出る。

外に出たがどうしようか、と思っていればひそひそとキャラバンの方から話し声が聞こえた。

視線だけ移せば、キャラバンの天井で何やら真剣な顔して話す円堂と立向居の姿が見えた。それと、円堂の横に誰かが横になっている。

あれは確か……吹雪だっけ、この時いるの。

ダーンとか、ギューンとか円堂と立向居は繰り返し呟いているから必殺技の考察をしているみたいだけど……。

『吹雪、あの横で寝てうるさくないのかな…』

「あそこ居るん吹雪なん?アンタ目ぇいいんやな」

そんな言葉が後ろから小声で投げられて思わずバッ、と振り返ってみれば、リカちゃんが居た。

『ッ、び、びっくりした……』

はあ、と1つ息を吐く。いや、驚いて悲鳴とか上げなくて良かった。きゃあとか言ったらみんな起こす所だった。

「なんやねん、人をお化けみたいに。そんな驚くことやないやろ、ばあっ!とかした訳やないんやし」

『いや、夜中後ろから声かけられたらビビるって』

「んー、言われてみたら確かにそうやな」

納得したとリカちゃんは頷いた。

「ほんで、アンタはコソコソと何しとんの?」

『え?あー、寝れないから散歩でもしようかと思ったら話し声が聞こえたから様子を見てた、かな』

ふぅん、と呟いてリカちゃんはじっと私の顔を見た。

「なぁ、アンタ、吹雪の事好きなん?」

『はい?』

なんでそういう思考に至った???

『違うよ?』

「えっ、そうなん?キャラバンの席も一緒に座っとるし、アンタめっちゃ吹雪の気にかけてるみたいから、そうなんやと思っとったわ」

『ああ…、まあいろいろ心配だから気にかけてはいるけど、リカちゃんの思うような恋愛感情はないかなぁ』

「ふぅん。まぁなんかボケっーとしとって心配にはなるわな」

『うん。それもだし、あれだけ感情の起伏が激しいとね……』

「吹雪はあれやろ?ハンドル持つと性格変わるみたいなタイプやろ。最初は驚いたわ」

うーん、合ってるちゃあってるけど、若干違うんだよね。別に士郎の性格のままでのボールを蹴ることは出来てたんだし。

「なんか、そんな簡単な話やないっちゅう顔してんな」

意外と、と言えば失礼かもしれないが、さっきの事といい、よく見てるな。一之瀬にしか興味なさそうなのに。

「なにがそんなに心配なん?」

なにが、か。
難しいな。本人以外が勝手に話していい事じゃないだろうしな……。

『元々、普段は温和な性格なのにFWになると性格が荒々しく好戦的になる子だったんだけどね、それでもDFの時はDFとしての仕事を全うしてた。でも、今回の試合はDFに入れって指示だったのにディフェンスがまともに出来てなかった。好戦的な面でいる事が長くなるって怖くない?…元々の温和な吹雪が居なくなる、みたいで』

「確かに、そう言われればめっちゃ怖いな……。せやけど、今回の試合は白熱しとったからやないん?前回負けてからの再挑戦で、しかも、アンタともう1人おったっていうFWが減って1人で頑張らな〜って思っとったんやない?」

『…それもあるかもね』

私と染岡が離脱して、自分が決めなきゃって気持ちが大きくなったのは確かだろう。
それもあってか心配しても、心配かけまいと大丈夫って返されるのかもしれない。

「あんま気にしとると禿げるで?」

『えぇー』

「まあ、ホンマにヤバいんやったウチらで助けたったらええねん!」

そう言ってニカッと笑った、リカちゃんにぽん、と肩を叩かれた。

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