フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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上から見るフィールドに、駆け足で雷門イレブンたちが散る。
GKは円堂。FWに染岡と吹雪。MFに鬼道と一ノ瀬と塔子と風丸。DFに土門と栗松と壁山、そして怪我をした目金の代わりに木暮が入る。

「へぇ、君の代わりはあの子が入るんだね」

『.........』

いや、私の代わりっていうか、そもそも木暮が入るのが正しい道なんだけど。

「試合出たかった?」

『...嫌な事聞くなぁ』

そもそも試合に出させないようにここに連れてきたのはヒロトなのに。
小暮をチームに引いきれる為にはメンバーの欠如は必要不可欠だったから助かったけどさ。

サッカーする事自体は楽しいから、SPフィクサーズ戦や白恋中戦みたいな試合なら出たいと思うかもしれないが...、エイリア学園との戦いとなると、怪我のリスクも高いし、何より大事なストーリーの主軸に関わって良いものかはばかられる。

『そんな事より、そろそろ教えて欲しいな。誰から聞いた?』

「せっかちだね。誰か、は俺もよく知らないんだよね」

『...え?』

「試合始まったね」

下のフィールドを見ながらそう言うヒロトの横顔を見つめる。

『あの人って言ってたじゃない?』

河川敷で話した時に、あの人と明確に誰かを指してたはずだが?

「ああ。名前を知らないから。父さんはあの人の事を神の使いだなんて呼んでいるけれど」

『は?』

思わず口をぽかんと開けたまま考える。
彼の言う父さんは分かるが、それが神の使いなんて呼んでる人物なんていたか...?イナズマイレブンで神と言えばアフロディだけど、それの使い?
神を使う者ならば、影山が思い浮かぶがそうではないし。

『そもそもそいつはなんで私を知ってるんだ...?』

純粋な疑問を口に出せば、ヒロトはさあ?と首を傾げた。

「でも、あの人が言ったように君は俺を、俺たちを知っていた」

『いや、それはどうかな?』

「今更否定しても遅いよ」

ちょっとボケたつもりだったが、真顔で返された。

『...君たちの事を知ってるとなると不利益になるでしょうよ。それなのになんで、私を排除しないんだ?』

考えれば考えるほど、エイリア学園側が私を今まで放置していた理由が分からない。レーゼはセカンドチームだったから知らなかったのかも知れない。今この下にいるイプシロンが白恋中に現れた時も、デザームが私の事を特に気にかけている様子もなかったし、きっと聞かされてはいないのだろうが...。

1番最初から接触してきたこの男は、河川敷で話すだけ話して帰って行ったし...。

「そうだね。俺もそう思うよ。でも父さんが君には手を出すなって。でも俺は、父さんの邪魔になりうるなら排除すべきだと思って、あの日、君に会いに行ったんだけど...。拍子抜けだった。
君は酷く臆病で、世界を変える事が出来ない」

ヒロトはこちらを見向きもせずそう言いながら真っ直ぐな目で、フィールドを見詰めていた。
フィールドの上では、まだ開始して2分も経っていないというのに雷門イレブンがボロボロの状態で、イプシロンのボールを避ける木暮だけが駆けずり回っている様子だった。

『...っ、みんな』

「こうなると知ってただろう?そもそも、拘束だってしてないんだから、俺を振り切って試合に参加する事だって出来たはずなのに、しなかった」

やっとこちらを向いたヒロトから言われた残酷な事に言葉を詰まらせた。

『っ、...それは』

私が居たら、木暮をチームに引き入れる事が出来ないから、で...。

「1番最初のジェミニストーム戦でも、フィールドに立とうと思えば立てたはずだ」

『...、』

そう、彼の言う通り、公式戦じゃないんだからいつだって乱入できた。

「悪いことじゃない。君は自分の知る未来を守ろうとしているだけ。本来、君が居なかったであろう未来を」

そう言って目を細めたヒロトはもう一度フィールドを見た、彼につられて下を見ればデザームがこちらを見ていて視線が合った。

デザームは直ぐに前に向き直し、人差し指を天に掲げた。
それから十日の後に再試合をすると宣言した後、生き残って居ればな、と告げゴール前からボールを蹴った。

必殺技シュートとも変わらぬ威力で蹴られたそのボールに、吹雪が止めようと突っ込んで行き弾き飛ばされた。
凄い勢いで飛んでいくボールが周りに起こす砂嵐への防御や既にボロボロで倒れているためMF陣もDF陣も反応出来ずに、あっという間に最終ディフェンスラインまでボールが迫った。
唯一傷を負っていない木暮は、やってくるボールに背を見せて逃げるなか、倒れていた壁山の足に引っかかって、頭からコケた。
木暮の身体は頭倒立するようになってその足にちょうどボールがやって来て、その勢いに流されて木暮はぐるぐるとその場で回転した。
最初はぐるぐるぐるぐると凄い勢いで回っていたが、だんだん回転が緩やかになって、やがてピタッと止まった。

木暮がどてっと地面に落ちると共にサッカーボールも軽く地面を跳ねながらその場に転がった。

「未来を変える気のない君は、俺たちの脅威にはならない。あの人の言うことを信じた父さんの判断が正しかったんだ」

何も言えなかった。
本当に未来を変える気なんてなかったから。
1番最初に、帝国との試合で豪炎寺が現れなかった時にも後悔したのに、また同じ事を繰り返している。



人は簡単には変わらない
誰より自分が1番知っていた。
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