フリースタイラーの変遷
□脅威の侵略者編
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「癖があるんだよ。パスを出す方向が分かるんだ」
さっきパンドラからボールを奪った一之瀬は、なぜ分かったんだ？と言う鬼道からの問いにそう答えた。
そして、一之瀬はジェミニストーム側のスローインでボールと取ったパンドラの前に、塔子ちゃんと共にマークに着いた。
パンドラがパスを出せば、その方向に飛び出した一之瀬がすかさずカットしてみせた。
「なっ！」
「またも一之瀬がボールを奪った！」
実況の声も上がる中、一之瀬が駆け上がりセンターラインを越えてきた。
「さあ！俺にシュートを打たせろ！」
そう言った吹雪に一之瀬が真っ直ぐパスを出した。
「奴を止めろ！」
レーゼの指揮に、ジェミニのFW陣が一斉に吹雪の方にマークに付いた。
「来たな！染岡ァ！！」
そう叫んで吹雪はシュートでは無く真横にボールを蹴った。
「！」
吹雪からの唐突なパスを受け取った染岡は、驚いた後、ふっと笑ってボールを蹴りあげた。
地面から翼の生えた竜が現れ、空へと羽を広げた。
「うらァ！いけぇええ！！」
落ちてきたボールを染岡が今度はゴールに向かって蹴れば、それは咆哮をあげながらゴールに向かって飛んで行った。
「何っ！」
DFたちと同じように吹雪の方につられていたGKゴルレオは慌てて、飛んで来たボールに手を伸ばすも、指先に触れることなく、ボールはゴールへと突き刺さった。
ピピッー！！とホイッスルが鳴り響いた。
「よぉっしゃあああああ！！」
染岡が大きくガッツポーズをしながら叫ぶ。
「やったー！」
「ついにエイリア学園からゴールを奪ったぜ！」
わー！と喜びの声を上げながら皆が染岡の周りに駆け寄って、円堂なんかは飛び付いている。
『ナイスアシスト』
そう言って吹雪の肩をポンと1つ叩き吹雪が、ハッと笑うのを聞いてからみんなの中に混ざりに入った。
「よぉし！やったぞ染岡！」
「どうだ！決めてやったぜ！」
染岡は心底嬉しそうに笑って拳を握った。
「あの技はドラゴンクラッシュの進化版。ワイバーンクラッシュと呼ぶべきでしょう！」
キランと目金が眼鏡を光らせれば、少し後ろでみんなを眺めていた吹雪がへっ、と鼻で笑った。
「まだ勝った訳じゃねーだろ。決勝点は俺が決めてやる」
「な、」
吹雪の言葉に染岡がムッとしたような表情になる。
コレはまた喧嘩になるか？...しょうがないな。
『あら、私だって決めてやるわよ』
強気なフリしてそう言えば、吹雪がハハハ！と笑い声を上げた。
「いいぜ、決勝点と言わずもっと点取ってやろうぜ」
そう言ってFW位置に戻っていく吹雪に習って、みんなも顔を見合わせて頷く。
「俺達もやるぞ！」
円堂がそう叫べば、皆で、おおー！と声を上げて、ポジションに戻る。
ジェミニストーム側のキックオフで再開された試合は、奪っては奪われの接戦し後半の残り時間を使い切った。
「さあ！白熱の試合もいよいよロスタイムに突入！」
壁山がボールを止め、風丸にパスが繋がれ彼がドリブルで駆け上がる中、ロスタイムが告げられる。
「我々が失点...？こんな事が...」
ラインを挟んだ先のセンターサークル前に立つレーゼは、じっ、と自分の手のひらを見つめ、それをギュッと握った。
「我々エイリア学園がただの人間に敗れるなどありえない。あってはならないのだ！」
「何っ！」
ギュンッと言う効果音が合うような速さで、真正面から風丸の足元のボールをレーゼはかっさらって行った。
「ディアム！」
レーゼが叫べば、ディアムも物凄い速さで彼の元に寄った。
「ディフェンス！来るぞ！」
円堂の合図で、壁山と塔子ちゃんがおう！と返事し前に立つ。
そんな彼らの前でレーゼとディアムは1つのボールを2人で上空に打ち上げた。
眩い光を放つそのボールに、2人は宙へ跳ね上がって飛び蹴りをした。
「「ユニバースブラスト！！」」
宇宙の輝きを秘めたそのシュートが放たれ、塔子ちゃんがザ・タワー、壁山がザ・ウォールで迎え撃つ。
先に塔が砕かれ、壁山が粘ったが、壁も破壊されてしまう。
しかし、2人のおかげで円堂がシュートコースを見切る時間と、技を放つ為の気を溜める時間が出来た。
「マジン・ザ・ハンド！！」
真正面から手のひらで円堂ががっしりとボールを受け止めてみせた。
「何っ！？」
「円堂、止めたァアア！！」
実況の叫び声と共に、ベンチの女子達のキャーっと言う歓声も沸き立つ。
「行くぞ反撃だ！」
そう言って、円堂が大きく蹴りあげたボールが私の足元に飛ばされる。
頷いてそれを受け取って右から駆け上がる。
そうすれば、ギクとガニメデがこちらに釣られる。それを見て思わずニヤリと笑う。
『決めろ染岡！』
そう言って反対のサイドにいる染岡にパスをする。
「止めろ！シュートを打たせるな！」
先程と同じパターンだと思ったのか、慌てたようにレーゼが叫ぶ。
左サイドのDFのコラルとカロンは言われたように染岡のマークに付いた。それを見てまた、笑う。
「吹雪！」
染岡はシュートを打たずに中央の吹雪にパスを出した。
「染岡！？」
「行けッ！吹雪！」
ボールを受け取った吹雪は、おう！と力強く頷いて、シュートの体勢に入った。
「吹き荒れろ！エターナルブリザード！！」
吹雪の足から放たれたボールは、吹雪を産みゴルレオを吹き飛ばし、氷塊となってゴールに突き刺さった。
「ゴォール！！凄まじい威力！エターナルブリザード！！雷門イレブン逆転！」
よぉし！と皆が喜び声を上げる。
『ナイッシュー』
ゴール前から戻って来る吹雪に、そう声をかける。
「結局決めたのは俺だったな」
『あら？ナイス連携決めて上げたでしょうよ』
そう言えば吹雪は、へっ、と鼻で笑った後、センターラインの方に歩いていく。その途中で、
「ナイスアシスト」
そう言って吹雪は染岡の後ろを通り過ぎた。
「なっ、」
染岡は驚いたような顔をして、その後ふっと笑った。
雪裏清香
まだ雪解けはしてないだろうけど、まあまあいいんじゃないですか？