フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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宇宙人が消えて直ぐに円堂は目を覚まし、起き上がった円堂は破壊された部室の前に立ち尽くした。
世宇子以上の破壊力、そして、円堂がマジン・ザ・ハンドを出す間もなかった程の速さ。それに皆、ショックで言葉も出さず立ちすくんで居れば、秋ちゃんと夏未ちゃんの携帯電話がそれぞれ鳴り出した。

秋ちゃんには一ノ瀬から、夏未ちゃんには理事長からの電話で、内容はどちらも宇宙人に関することだった。

一ノ瀬からの電話は、土門と共に訪れていた木戸川清修に宇宙人が現れて、西垣たち木戸川清修の選手が戦ったが敗北した、との事。
理事長からの電話は、宇宙人の現在の居場所を伝えるものだった。

その場所は隣町の傘美野中学校。

やられっぱなしじゃ終われない。皆その意思で、響木さんにバスを出してもらい傘美野中に向かった。


「決断したか?」

「はい。決めました。僕ら危険します」

傘美野中に着くと、入ってすぐのグラウンドに白と水色のユニホーム着た少年達と、少し高い所に先程雷門に現れていた宇宙人たちが立ち、対峙していた。
バカと煙と金持ちと偉そうな奴は大概高いところが好きだけど、いやはや宇宙人も高いところがお好きなようで。


「試合はしません!」

傘美野中サッカー部のキャプテンである出前がそう宣言すれば、宇宙人達は皆くすくすと笑いだした。
それに対して、静かに、というように抹茶ソフトの宇宙人が片手を掲げれば、他の宇宙人達は途端に笑うのを辞めた。

「弱き者め...」

そう言って、抹茶ソフトの宇宙人はまたあの黒いボールを蹴ろうとした。

「何するんだ!?」

「破壊だ。勝負を捨てるなど、自らを弱き者と認めたも同然。よって敗者と見なし破壊する!」

やめろ!!と傘美野中の選手たちは悲鳴に近い声を上げる。
そんな中、

「待て!」

我らがキャプテン、円堂がそう制止の声をかける。
それに対して宇宙人は動きを止めて、ぞろぞろと並ぶ雷門イレブンを目にして、鼻で笑った。

「雷門中のキャプテン!?」

驚く傘美野の選手たちの前に庇うように雷門イレブンは並び立つ。

「お前たちがこの者の代わりに勝負するというのか」

「ああ!そうだ!」

力強く円堂が頷けば、不安そうに傘美野の1人の選手が雷門の前に出た。

「...本当は俺たちが守らなきゃいけないのに。俺たちは棄権したんだ...逃げようとしたんだよ!」

俺たちの代わりに危険を犯す必要は無いと言わんばかりの、その表情を見て、風丸がふっと笑って見せた。

「学校を守るために危険を選んだ。それは恥ずかしい事じゃない」

風丸の言葉に、雷門イレブン達はああと頷いた。

「さ、始めようぜ、宇宙人!!」

円堂が彼らを見上げれば、宇宙人はいいだろうと頷いた。

「ボールを持ってこい」

そう、宇宙人に言われて、出前はオレ?と自身を指さした。

「行け!」

宇宙人が睨みを利かせれば、出前は、は、はい〜!と慌てて駆けて行った。

「そいつでやるんじゃないのか?」

円堂が宇宙人の足元にある黒いボールを指させば、お前たちのレベルに合わせてやる、と舐められたような事を言われ、円堂が、何っ!?と噛み付こうとする。

「落ち着け円堂」

監督!?と円堂が振り返ってこちらを向く。

「奴らのペースにハマるな」

『それに普通に考えて、あんな何が仕込まれてるか分からない怪しいボールで試合をするより、傘美野中にある普通のボールでやる方が安心でしょう』

そう言えば、確かに、と皆が頷く。
それを見て夏未ちゃんが不安そうに、みんな、と声を掛ける。

「豪炎寺くんも、一ノ瀬くん、土門くんも居ないのよ。現状では染岡くんのワントップになるわ。大丈夫なの?」

「問題ねぇよ」

いつものツンケンした様子で染岡がそう言えば、ああと鬼道も頷いた。

「バックアップは任せろ!」

「頼むぞ、みんな!」

そう言って、男の子達はグラウンドの中に駆けていく。

「本当に大丈夫かしら...」

不安そうに見つめる夏未ちゃんの手を取ってベンチに向かう。

大丈夫、ではない事は知っている。
世宇子中との試合から立て続けで、医療班に診てもらったと言えど、怪我も治りきった訳では無い。
その上、夏未ちゃんの言ったように3人選手が欠けている。
ただ、問題はその2つがなかったとしてもどうにかなる訳では無いと言うことだ。

グラウンドの真ん中に整列する両チームを見て、思わずため息を吐く。

「水津さん...大丈夫?」

夏未ちゃんがこちらを見上げてそう言った。

『大丈夫よ』

「けれど...、手が...」

夏未ちゃんに言われて繋いだ手を見れば、震えている。
情けない。自分が立ち向かう訳でもないし、これから起こりうる事はずっと前から分かっていたというのに。

「信じましょう、みんなを!」

そう言って私と夏未ちゃんの間に秋ちゃんが立ち、繋いでいた手を丸ごと両手で包み込んだ。

ベンチに座って並び立つみんなの背を見て、自身の最低さにため息を吐く。
物語が正しく進むために、今から私はこの子供達を犠牲にしないといけない。危険だからやめろと、試合をするのを止めるでもなく、ただみんながボロボロにされるのを見守るしかないのだ。そうでなければ、物語に異常をきたす。それだけの理由で。



「お前たちの名を聞こうか。俺たちは雷門中サッカー部!」

俺はキャプテンの円堂守!と胸に手を当て自己紹介する。

「お前たちの次元であえて名乗るとすれば...、エイリア学園とでも呼んでもらおうか」

「エイリア学園...」

「そして我がチームの名はジェミニストーム。我が名はレーゼ」

抹茶ソフトの宇宙人、レーゼは淡々と言った。



さあ、始めようか
無事を願うことすら、許されない。
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