フリースタイラーの変遷

□脅威の侵略者編
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「ん、なんだあれ...?」

バスの窓から遠目に雷門中が見えてきた頃だった。
円堂の言葉に皆、窓の外を見上げた。

『ああ...遂に、か...』

雷門中の方に黒い何かが飛んで行ったな、そう思った瞬間、紫色の眩い光と共に大きな音と振動が稲妻町一帯を呑み込んだ。


皆、声も出ず驚愕している間に、響木さんの運転するバスは雷門中の前に辿り着いた。

「何て事...」

バスから降りて、建物としての跡形もなくボロボロになっている雷門中の全容を目にし、夏未が唖然とした様子でそう言った。

「何が起こったんだ...」

「酷でぇ...」

瓦礫の山になってしまった雷門中に皆は理解が追いつかないまま、その現状を見詰める事しかできないでいる。

「君たちなのかね...!」

そんな声と共にフラフラとした足取りで瓦礫を避けながら火来校長が現れた。

「校長先生!」

「ああ...!円堂くんか!」

「何があったんですか!?」

「う、宇宙人だ!」

校長のその言葉に私を覗く全員が、え?と聞き返した。いきなり宇宙人だなんて言われても意味が分からないのが本当である。

「宇宙人?」

「そうだ、宇宙人だ!宇宙人が攻めてきたんだよ!!」

その言葉に、皆は校長がおかしくなったんじゃと顔を見合せたりしている。

「そんな、冗談でしょ、校長先生...?」

円堂が困惑して校長に聞く後ろでパラパラと砂や小石が流れる音がして、そちらを振り返ってみれば、瓦礫の中から古株さんが頭を出した。

「古株さん!」

『大丈夫ですか!?』

そう言って一緒に駆け寄った風丸と染岡が、辺り一帯を見て、これは...!と息を飲む。
古株さんだけではなく、イナズマイレブンこと雷門OBのおじさん達もボロボロの様子でグラウンドに横たわっている。

「酷い...」

「どうしてこんな事に...」

「大丈夫ですか!」

「場寅!!」

皆が慌てておじさん達の元に駆け寄っていく。

『みんな、無理に起こさないで!校長、救急車は!』

「救急隊には先程連絡をいれてあります」

そこのところは流石大人だ。119を押そうと、取り出そうとしていた携帯電話を仕舞う。

「古株さん、あんた...!」

「おお、響木か...。昔取った杵柄。久しぶりにキーパーの名乗りを上げたんだかな...。奴はには通用しなかったよ...」

古株さんは掠れた震えた声でそう話す。

「本当に宇宙人と戦ったのか!?」

響木さんの問に、古株さんも校長先生もああと頷いた。

「サッカーで戦いを挑んできたんですよ!」

サッカー?と円堂は首を傾げる。
サッカーで戦って学校がこんなになるなんて意味不明すぎる。

「どういうことですか!?」

「ん?」

どこからともなく不穏な音が聞こえた。
まるで雨が降る前の様に薄暗い空からゴォオオという低く響き渡る様な音と、それに混じって何かが素早く回転する様なシュシュシュシュンというところが聞こえる。

「円堂!」

誰よりもいち早く、鬼道がそう叫んで円堂を振り返った。
眼前を守るように身構えた円堂の上空を素早い軌道で真っ黒い色のサッカーボールが3つ飛んで行く。
3つのサッカーボールは1箇所に集まって回転し、渦巻いた。
そしてその紫色の光の渦から一瞬で、同じ格好をした3人が現れた、

「う、宇宙人だ!?」

「嘘だろ!?アレが...!?」

1年生達は困惑して、震えている。

「お嬢様!奴らです!奴らがサッカーを挑んできたのです!」

「お、お前たちが宇宙人なのか!?」

円堂が問えば、柳色の髪の毛を抹茶ソフトの様に逆立てたセンターに立つ少年がニヤリと口角を上げた。

「我々は遠き星エイリアよりこの星に舞い降りた。星の使徒である。我々はお前たちの星の秩序に従い自らの力を示すと決めた。その秩序とは...」

そう言って自称星の使徒の少年は足元の黒いボールをつま先で軽く蹴りあげて片手で掴んで見せつけた。

「サッカーだ」

そのボールをヒョイと隣のピンクの髪色の女の子の宇宙人にボールを渡す。
彼女はガシャンガシャンと到底普通のサッカーボールからは聞こえない音のするボールを軽々と蹴りリフティングしてみせる。

「サッカーはお前たちの星において戦いで勝利者を決める手段である。サッカーを知る者に伝えよ」

女の子の宇宙人から今度は彼女とは反対側に立っていたガタイの良い青緑色の髪の毛宇宙人にボールが渡り彼はそれをトラップして、センターの宇宙人に返した。

「サッカーにおいて我々を倒さぬ限り、この地球は...存在出来なくなるであろう」

そう言って彼は戻ってきたボールを踏み付けた。

「だから...!だからイナズマイレブンのおじさん達と戦ったって言うのか!?」

フルフルと肩を揺らしながら円堂が叫ぶ。

「だったら!次は俺たちと勝負だ!!」

その言葉を聞いた宇宙人は嘲笑った。

「見よ。この学校は既に崩れ去った。即ち勝負が終わった証。もっともっとアレが勝負と言えるものなのか...」

そう言って、何が面白いのか、彼は地に伏せるおじさん達を見下ろして笑っている。

ぐっ、と唇を噛む円堂の横に、染岡が駆け寄って並び立つ。

「宇宙人だかなんだろうが、学校ぶっ壊されて黙ってられっか!」

「染岡...!」

驚いた様に染岡を見上げた円堂に彼はふっと笑った。
そんな彼らの周りに、そうだと言わんばかりに雷門イレブン達が並び立つ。

「みんな!」

うん、と皆が顔を見合わせて頷く。

「見せてやろうぜ、俺たちのサッカー!」

おお!と皆が団結し声を上げれば、その必要はないと、宇宙人は黒いサッカーボールから足を下ろした。
そして、宇宙人はそのボールをまるでキックオフの時の仲間にボールを渡すかの軽々しいキックでシュートを放った。

『みんな!なにかに捕まって!』

「え!?」

「マジン・ザ...」

ボールを中心とした黒い渦が突風となって吹き荒れ一直線に飛んで行く。

「うわあああああ!!」

マジン・ザ・ハンドでボールを止めようとしていた円堂がそのボールの勢いに飛ばされた。

『円堂!!』

円堂を吹き飛ばし真っ直ぐ飛んで行ったボールは、校舎から離れていた場所にあったからか、唯一形が残っていたサッカー部の部室までも一瞬で破壊した。

「円堂!」
「円堂くん!しっかりして!」

風丸と秋ちゃんが慌てて後ろ頭から倒れた円堂に駆け寄る。

「水津ちゃん!円堂くんが!」

泣きそうな声で叫ぶ秋ちゃんの傍により、円堂の様子を見る。
意識が飛んでるが...、大丈夫。息はしてる。

「なんということを...!」

怒りを含んだ声色で響木さんが、宇宙人を睨み付ける。
その様子に興味はないといったように彼はまた黒いサッカーボールを手にした。
そのボールから紫色の光が放たれて当たりを包んで、そのまま何も無かったかの様に3人の宇宙人は消えていった。



襲来
一瞬の静寂の後、皆慌てて円堂に駆け寄った。
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