フリースタイラーの変遷

□フットボールフロンティア編
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「ディフェンスは攻撃陣を徹底的に狙え!オフェンスは守備陣を。キーパーは重点的に!」

アフロディの指揮により、先程よりもより攻撃的になった世宇子中のプレイングで遂に、負傷者が出た。
モニターに映ったそれを回避したくてわざわざ潜入したというのに、なんの意味もなかった。

小柄な少林寺、栗松、松野が、ダッシュストームの風圧に巻き上げられ地面に叩き落とされた。
少林寺と栗松は足を、松野は腕をやって交代して、半田、影野、宍戸が入る。

そしてすぐさまスローインのボールを受け取った染岡はマークに着いたディオの必殺技メガクェイクでせり上がった地面に持ち上げられ、バランスを崩して肩から落ちた後、グラウンドの上でのたうち回った。
肩の負傷者で交代するしかないが、
交代枠は残り1枠で、現状雷門のベンチで負傷していないのは目金だけだった。最初の帝国戦では逃げ出して、後の試合も土門に譲るなどして逃げてきた目金が、震える足で自ら立ち上がってフィールドに向かったが、無情にもFW陣に対する徹底的攻撃に目金もすぐさま退場となってしまう。
交代枠を使い切り、フィールドプレイヤーが10人になってしまった雷門に、世宇子中は容赦ない攻撃を繰り返していた。

神のアクアが切れるまでの間に徹底的に潰す。その意思が画面越しからもハッキリと見えて、拘束されたままの手を爪が刺さるほど握りしめた。

「そうだ。徹底的に潰せ」

モニターを見据え影山がそう言葉を吐いた。
初期鬼道及び帝国学園選手達もラフプレーが酷かったのにも関わらず審判はレッドどころかイエローカードも切らなかった。帝国学園と同じように影山の手で育てられた世宇子中はやはりラフプレーに抵抗がないようだし、やっぱり審判はカードを切らない。
分かっていたが最悪である。

「私の人生を狂わせた円堂大介。そしてサッカーに私は復讐を誓った。正にZ計画が完結しようとするこの試合の相手に円堂大介の孫...復讐の仕上げとして最高の舞台だ」

そうは思わんかね、と言って影山は私を見た。

「サッカーを憎む私が、未来永劫サッカー界の頂点に君臨する。これほどの復讐があるだろうか」

『未来永劫は無理じゃないですかね?人はいずれ死ぬし』

思わず素直に思ったことを口にすれば、影山はフッと鼻で笑った。

「だからアレの代わりにお前を後継者にと思ったのだがね」

そう言って影山はモニターの先のグラウンドに倒れている鬼道を見た。
ふぅん、後継者にか。やっぱり鬼道に愛着というか執着というか...、マントを買ってくれた時もそうだ。恐らく鬼道に与える物だと分かってて代わりに代金を支払った。なんだかんだ言って影山の中では、やはり鬼道は特別な子だったのだろう。

『私を後継者にだなんて貴方にしては随分と浅はかですね』

焦ったように、貴様いい加減にしろ、と拘束しているガードマンが後ろから言ってくるのに対し、影山は構わんと言った。

「私も同意見だからな。もう少し利口だと思っていたが、実に残念だ。謝った選択をした事を今更後悔しても遅いぞ」

そう言って影山が見つめるモニターの中では、アフロディのシュートが腹に決まりゴールの前に倒れている円堂の姿だった。
審判が左手を大きく掲げ、右手で胸元にぶら下げた笛を取った。

「終わったな」

『...確かに私がした事は意味のなかった事かもしれませんね』

「ふん、あのまま大人しくこちら側につけばよかったものの」

『いえ、そちらは後悔してませんよ』

そう言えば、影山は何?とこちらを見た。

『雷門を選択した事は間違いではないと言ってるんですよ』

モニターの方を見て言えば、影山は勢いよく振り返ってモニターに視線を移した。

「何故だ...」

モニターの中では、円堂が起き上がり勝敗の宣言を言いかけた審判を止めた。
それを皮切りに、豪炎寺に鬼道、一ノ瀬がまだ戦えると立ち上がる。同様に、風丸、半田、土門、影野、宍戸、壁山の6人も互いを支え合いながらボロボロの身体で立ち上がった。



折れない心
叩き潰すとアフロディが羽を広げ天に舞い上がった瞬間、前半戦終了の笛が鳴った。
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