ポケットモンスター

□バレンタイン
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最初はやっぱりレッド(学パロ)

「ねぇ○○、▼▼君に例のアレ、渡した?」

「うん///」


「ありがとう♪めッちゃ嬉しい!!」

「あたし、そこら辺の男子よりチョコもらってるかもw」

「ねぇ、何つくったの〜?」

「バレンタインって、絶対チョコ会社の陰謀だよね」


「皆、おはよ〜。」

ドアを開け教室に入ればピンク色の幸せオーラとチョコのふわふわな匂いで満たされていた。そう、今日はバレンタインなのだ。


「わぁ!おはようなまえ、早速だけど…」

朝からやけに元気な親友はかわいらしいピンクの袋をごそごそと漁っている。あたしの期待はその音によってどんどん上がってく。

「はい!上手く作れてるか心配だけど…、愛は込めました!へへっ!」

「君のの作るお菓子って全部おいしいから、安心して。もうね袋で分かっちゃうよあたし、絶対最高ってね!」


「ありがとう♪…なんだか自信がついた!あんたのおかげで先輩に渡せるかも?…なんてね。 ねぇねぇ、君はもちろんレッド君に渡すんでしょ?  なまえもファイトだぞ!」

「うっ!うん、頑張る…よ?」

じ、自信なくなってきちゃった。放課後に渡すのにすでに心臓が爆発しちゃいそう。  うまくいきますように!

一時間目の授業は渡すことを考えたらぜんぜん集中できなかった…。そんな感じで時間はあっという間に過ぎて放課後。これで私の人生決まっちゃうよぉ〜!どうしよう…。

一人、レッド君を待つ教室。余計なことまで考えてしまって、頭も爆発しちゃいそう。親友は絶対大丈夫だとしか言わなかった。も〜どこから来るんだよ、その自信はー…。


「うぅ〜。」

「なまえさん?そ、その…///どうした?」

やばい、爆発した。頭のなか、まっ白。

「―あ、ぁ、あぁあぁあのね。」

「うぅ、ん。」

顔から火が出そう。あちらも、大体分かっているのかそうでないのか分からないけれど、耳から首元まで真っ赤である。

「レッド君のおぉこ、っととがすすぅすす、好きです!つつつ付き合ってくださいぃぃ!」


あたしはその場の空気に耐えられなくなって、袋を押し付けた。

逃げようかと思ったけれど、足がすくんで動くことができない。


レッド君はぽかんとしている。

「………。ありがとう、俺でよかったら付き合ってやって。俺も好きだよ、なまえ。」

そういい終われば、グチャリと私達に挟まれた紙の袋がつぶれる音がした。

さっきまで動きたくて仕方の無かったのが、このままずっと止まっていたいと思うようになってた。




そんな二人をクラスの皆が冷やかしに来るまであと5秒。




next↓(グリーン)


今日は待ちに待った、一世一代の大勝負の日。ターゲットの周りにはすでに人だかりができている。さすが。次々と女の黄色い声が飛び交う戦場のベールを破り、突入を開始!



「グリーン!」

姿は見えているのに、後もうちょっとなのに、回りにかき消されて手が届かない、声も届かない。もがくうちにいつの間にか自分もその黄色の中に取り込まれてしまっていた。

幼いころは、簡単に届いたのに。あたしのこと見てくれたのに。

きっと周りの女の子達と違うあたしの本気で好きって気持ちも混ぜられて届いてない。所詮その程度なのか、いや、違うよ。頑張れあたし!!

また君に、振り向いて欲しいんだ!

「…今度こそ、今度こそ渡せるよ。」


その思いとは裏腹に何度も過ぎ去った塊をまた呆然と眺めた。

何度も下駄箱を見ても、あふれ出したチョコの山。


教室に帰れば、告白を受けている途中の君。


今度こそがいつの今度こそになるか分から無い。あたしの入る隙間など無くなってしまったかもしれない。けれど、きっと届くと信じた。


それはついさっきまでの理想。回りを見れば、時計の針が進む、無くなっていく友達のチョコ、嬉しそうなみんなの顔があたしをどんどん焦らせていた。簡単な事なのに、自分だけ取り残された。今は虚無感があたしを包む。


「渡したいのに、好きなのに。…っ伝え たいのに。今までとは違うのにっ。」


先生はチャンスは平等にあるといった。幼馴染だから、近いから、渡せるわけじゃない。皆にだって平等なのだ。

油断した、近いから楽をしてきた。誰よりも君を知ってると思っていた。だから負けてしまうのだ。そう思ってた、けど違う。皆とおんなじ思い方じゃないと駄目なの?

あたしだって、グリーンのことは誰よりも好き。苦手なお菓子作りも頑張った。

でも、でも、…



「グリーン、好きだよ。」


何も帰ってこない。

「好き、すき、スキ、あ ぃしてる…。」


また、一掃静かになった気がした。

徐々に冷たくなっていく手先。

反比例の目。

言葉を並べても君に聴こえない君だけに聴こえて欲しい言葉。

こんなのエゴでしかないかもしれない。

ぼろぼろと、悔しさが頬を伝い床を汚した。駄目なの?みんなと違うあたしじゃ駄目なの?

寒い地面のあたしみたいな影が濃く重なった。


「おまえは誰がそんなに好きなんだよ。」

「!?」

「まったく。これだからほっとけねーんだ。早く帰るぞ。あーあ、こんな冷たくなってよ。なにしてたんだよ。」

「なんで…」

「あぁ?!人がせっかく来てやったのにその言いようはないだろ!振り払うの大変だったんだからな!靴は取れない、どこにもいけない。飯も食えない、落ち着いてバトルもできない。トイレにまで行けなかったんだからな!」

気分じゃないけど、少し笑ってしまった。

「…よろしい、その顔いつもしてろよな。」





「おまえ、泣くのか笑うのかどっちかにしろよ。」

ぼろぼろのハートの傷が深く痛んでズキズキうるさい。いわなくちゃ、言わないと。きっと壊れてしまいそうで。


「ねぇ、あたしね、」
「言うな。」


一瞬の息を取られるような、切ない感触は夕日と共に溶けた。



「分かってる。俺から言わせろ、なまえのことが好きだ。」

つんつん頭のあたしの王子様は、そういい残して、袋を掻っ攫っていった。



「ばーか。普通、すること逆でしょ。」


自分も、いえない、かな?
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