ポケットモンスター
□俺のために毎朝味噌汁を作ってくれ!
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次は、グリーンさん
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ぽかぽかと暖かい日差しに雪がキラキラと溶ける音がする。
小春日和っていいね、今の状況とはちょっと違うかもしれないけれど。
隣のサボりの常習犯はうつらうつら。どうやら夢の世界と現実を行ったりきたりしているようだ。
少し間の抜けた表情でなんだかかわいい。
「グリーン… グリーン♪」
名前を呼んでみたかったけど、なんとなく照れくさいし、自分らしくないから。
あ…起きた。
「呼んだか…?」
「ううん、歌ってるだけ。」
「そうか。」
今度は本当に寝てしまうようだ。
「あおぞらにーは lala みどりが うたーい〜♪…やーめた。」
寝ているグリーンの肩にもたれかかれば、ほんのりと太陽のにおいがするようになっていた。
それでも、起きる気配は無い。いや、もしかしたら目を瞑ってるだけかも。
ぼーっと景色を眺めればさっきと変わらなくて、傾いている。
冬の気迫が薄れて、幻を見てるみたいに暖かい今。気まぐれなこの季節はグリーンみたいだ。
普段はぴりぴりと張り詰めた顔して頑なになってるけど、本当は繊細で表情がいっつも変わって、心配性で、優しくて。
”がんばり屋さんなんだよね”
今の君が居るのは人知れず頑張ってきたからで、今も頑張ってるから頑固なのは小さいころから変わってない。
そのせいでよくケンカしたっけ。あ、今もしてるか。
たとえば、小さいころチャンピオンになるって言って、10歳でどっかいって
ホントにチャンピオンになって帰ってきたときは、嬉しいのやら、心配やら、安心とかでケンカしちゃうぐらいだったものだ。
それでも愛しい日々。今は一緒に居られる。居てくれる。
こんな幸せずっと続いて欲しいな。
「ありがと。」
そう小さくつぶやけば、「「気にすんなって」」いってるみたいに肩に乗る大きな手。
「どっかで、あたしの手を離したら許さないんだからね。」
「分かってるよ。つーか、お前が嫌がっても、腕を切り落とされても離す気は無い。」
ワンテンポ遅れてかえって来る返事がゆっくりとした時間の流れをよりいっそう長く伸ばす。
「そろそろ帰らないとな。」
「やっと帰る気になりましたか。ジムリーダーさん?」
「うるせー。はやく行くぞ。」
手をとれば、左指の付け根からかちりと表情豊かに金属的な音がした。
誰も居なくなったベンチにはまた雪が二人の代わりに何度も積もった。でも幻は一日ずつ現実になって一つ一つ輝いて夢の中みたいに溶けるようにゆっくりと流れた。
このことは永遠では無いけど、きっとそれに近いことを語っていた。
それからあの日の幻が恐ろしいほど鮮明に思いだせてたのに、今はかすむ。
今が美しいからだね。
一生幸せにしてくれる?
ぜってーしてやる。なまえ、覚悟しとけよ。
君って本当に頑固だから、夢は現実にしてくれる。そう思うんだ。
だから誓うよ、一生君を愛することを。