dream
□遊戯王GX
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あっついなー早く寒くならないかなぁーと思っていた自分よ、全力で夏に謝りなさい。
毎年毎年夏が来れば寒くなれと思い、冬が来れば暑くなれと思うのを止めたいと思いつつ止めれない。
まったく人間は我儘な生き物だと思う。
隣にいる十代も「へくしゅんっ!……いきなり寒くなりすぎじゃね?」と体を震わしている。
だよね、何故こうも唐突に寒くなるんだろうか……。
アカデミアは海が近いから尚更寒く感じるんだろう、朝と夜が本当に辛い。
レッド寮はボロいから朝寒くて布団からなかなか出れないし、夜は夜で布団がなかなか暖まらなくて眠れないし、しょうがないから十代の布団で一緒に寝ていたりする。
現在進行形で。
「なぁなぁ、由奈は寒くないのか?」
「寒いよ、肌寒い。暑すぎるのも嫌だけど、こうなんていうかちょっと寒いのも嫌だ」
「んー、寒いんだったらもっとこっち寄れよ!人肌って暖かいんだぜ」
「ん………、なんかさ、これ、入ってきたやつびっくりしそうじゃね?男二人で同じ布団とかさ」
「そうか?別に気にしなくてもいいじゃん!一人で寝るより暖かいし!」
「そりゃそうなんだけども、」
そう、一番困るのはこの状況を他のやつに見られてしまうこと。
十代は俺より体温が高いから、確かにくっついてて暖かいし安眠出来るんだけど、この姿を翔や剣山に見られた日には、多分俺死ぬかもしれない。
同室だからとかいう理由では逃れられない気がする。
しかし寒さに耐えて風邪を引くくらいなら死ぬほど怒られる方がマシか?
俺は頭一個分ぐらい十代より低いから、必然的に近寄ると首もとぐらいの位置が定位置になるんだけども、布団でこんな至近距離だとなんだかいけないことが始まりそうな気がしてならない(俺はノーマルだし、ムッツリでもないぞ!!!)
おまけにさっき近づいた時に、何故か十代が抱き締めてきたもんだからどうすればいいかわからず、抱き締め返すということを反射的にしてしまって今更払いのけることも出来ずに固まっている。
どうすればいいんだ、このまま寝るのか、いや眠れないだろこれ!
今まで同室だけどこんな至近距離になることなんてなかったし、何より十代が風呂上がりのいい匂いだから困っている!
うっかり首もとにすりよりたくなる状況だ!
でも俺ノーマルだから!ノーマルだから!
そんなことやってみろ、絶対危ないやつだと思われるぞ。
そんな俺の葛藤など知らない十代はまたぎゅぅっと抱き締める力を強めてくる、なにこれ、ノーマルなはずなのにドキドキする。
「十代、あのさ、ちょっとこれ近すぎじゃない?」
「だって由奈いい匂いするからさ、しかも小さいから抱きつきやすいし」
「う、うっせーな!小さいは余計だし俺はお前の抱き枕じゃない!」
「いいじゃん!サイズちょうどいいんだよ!」
今度は俺の首もとにすりよってくる十代。
髪の毛が当たってくすぐったいけど、がっちりとホールドされているからなすがままだ。
畜生、どうすればいいんだ!
相手は男なのにドキドキするとか、やめてくれ。
こんなに近いとバクバクいってる音が聞こえてしまいそうだ。
「十代、くすぐったい」
「んー由奈いい匂い……安心する」
「わ、わかった、わかったから首もとすりよるのやめろ」
「…………由奈さ、俺とくっついてるから心臓ドキドキしてんの?」
「違う!くすぐったいから!」
「えー違うのかよ、そうだったらめっちゃ嬉しかったのに」
「……え」
それどういう意味だと聞こうとした瞬間、チュッという可愛らしいリップ音と共に唇が塞がれた。
一瞬にしてフリーズして抵抗でいないのをいいことに、十代は何度もキスをしてくる。
十代から、キス、されてる……
「っ!!!おま、なんの冗談っ、」
「俺は由奈と同じ布団にいるってだけでこんなにドキドキしてんのに、由奈だけずるいよ。それに冗談なんかじゃない、本気だから」
「いや、本気って、なに」
「俺さ、ずーっと、アカデミア入学した時から由奈のこと大好きだった。同室だった時もすげぇ嬉しかったし、今こうやって由奈を抱きしめられてることも幸せ過ぎて夢なんじゃないかと思ってる。好きなやつがこんなに近くにいたら、止められなかった、ごめんな」
ちょっと寂しそうな十代の顔を見上げて胸が締め付けられた。
十代のことは嫌いじゃない、むしろ俺も大好きだ。
でも十代の大好きと、俺の大好きは違う。
でもキスされて嫌じゃなかったってことは、これからLikeからLoveに代わる可能性がないとも言い切れない。
「俺さ、まだ十代のこと友達としか思えない」
「そうだよな、悪かった、いきなりあんなことして」
「で、でも!キスされて嫌じゃなかった、ちょっときゅんてしたし……まだ時間かかるかもしれないけど、十代は待ってくれるのか?」
「俺はこれからもずっと由奈が大好きだ、これは変わらない」
「……じゃあ、もうちょっとだけ時間くれよ」
そう言って俺は十代を抱き締める腕に力をこめる。
十代は優しく俺の頭を撫でながら「待ってるぜ」と言ってくれた。
十代に抱きしめられるのも、撫でられるのも、キスされるのも嫌じゃない。
むしろ心地いい。
あとは俺のちょっとの勇気が必要なだけだ。
だから十代、もうちょっと待っててくれよ。
自分の気持ちを自覚して、恥ずかしくてそんなすぐには返事出来そうにないからさ。
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