dream
□2周年記念
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「さっむい、しかしやめられん」
「夏にラーメンと同じ感じだよなー」
俺達はデッキ片手にこのくそ寒いなか、外でアイスを食している。
お互い唇を青くしながらアイスを食べている姿は周りから見たら明らかに変人なんだろうけど、これを言い出したのは俺ではなく由奈なわけで。
寒くて頭が痛いから最初話してたデッキ組み直しの話もどこかへ吹っ飛んでしまった。
それ以前になんで外でデッキ組み直しの話をしていたのかさえ、この寒さでどうでもよくなってしまっている。
とりあえず由奈に話を合わせながら必死にアイスを食べているけど、手が小刻みに震えて上手く口に運べない。
「十代、寒いな」
「寒い、寒すぎて震えが止まらない」
「俺何でアイス持ってた……あ!そうだ、先生の手伝いして買ってもらったんだった!折角なら十代と食べようと思って……」
「いや、めちゃくちゃ嬉しいんだけど何も外で食べなくても」
「さっき十代いってたじゃん!ラーメンみたいな感じって。それと同じ!寒いときにより寒いところでアイスを食べる、これ最高の食べ方!しっかし寒いなー」
ニコニコと上機嫌でアイスを食べている由奈に怒る気力もわかず、どうにでもなれと一口で食べたのがいけなかった。
先程とは比べ物にならない頭痛が襲い、痛すぎて呻き声が出る。
あははは!十代ばっかじゃねーの!とか言う声が聞こえてくるが、俺はそれどころじゃない。
痛い、思ったよりも痛くて目がチカチカするっ!
「一口でいったらそうなるって……まったく十代ってば」
「いってー、まじで痛い、しゃれにならん」
「んー……これでちょっとはましになるんじゃない?」
ふわりと頬を包まれて少しだけ暖かくはなったけど、次は由奈の顔が近すぎてドクドクと血が頭に回って痛い。
あんなに寒かったのに、今は熱い、顔だけ。
寒いのと熱いのが短時間に繰り返されて俺の体は大丈夫なんだろうか。
それにしても、何にも考えてない天然って恐ろしい。
「由奈、近い」
「近くないよ、普通」
「お前みんなにそんな至近距離で話してんのか!もう痛くないから大丈夫、離せよ」
「十代にはこれぐらいの距離で話すのが好きだ、あともうちょっと離したくないから離さない」
「っ〜お前な!これ自覚あってやってんだろ!?そうなんだな!?」
「いいや、ただ俺がしたくてやってる。自覚があるかと言われればあるんじゃないか?」
「あー……、わかったわかった、俺の負けだよ」
「んじゃしばらくこのままな」
楽しそうに笑う由奈を見て、俺はデュエル以外で絶対こいつに勝てないと思った。