dream
□2周年記念
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本当に乱世かっていうぐらい平和なある日の午後、私は廊下で気持ち良さそうに寝ている幸村様を発見しました。
それはもう見てるこちらまで幸せになるような寝顔で、涎まで垂らして……
「ってちげーよ!なんでこの人廊下のしかも真ん中で寝てんのよ!?」
私の声が煩かったのか、うぅーんと苦い顔で寝返りをうつ幸村様。
なんなのこの人、いや、ほんとに。
寝るのはいいけど、自分の部屋で寝なさい自分の部屋で!
暖かいから風邪は引かないと思うけど、紅蓮の真田幸村が廊下の真ん中で寝てるとか他の領地のやつらとか部下とかに示しがつかないでしょうが!
今日はうるさくいう忍頭がいないからってこんなにのびのびしちゃって……、まったくめんどくさい。
しかし一忍である私に放置するという選択肢はありえない。
何故ならば放置すると後々忍頭がうるさくてかなわないからだ。
別に私達が悪いわけじゃないのにな!
世の中理不尽なことだらけで辛い。
この気持ち良さそうに寝ている顔をふんずけてやりたい衝動に駆られるが、ぐっと飲み込み優しく肩を揺らす。
「幸村様、このようなところで眠られては風邪を引いてしまいますよ?起きてください、そして自室にておやすみくださいませ」
「ん〜」
「幸村様、朝ですよ幸村様!」
「やぁ……ここ、暖かいから、寝るでござるぅ……」
やぁ……とか色っぽい声出してんじゃねーぞ筋肉馬鹿!
「お部屋も暖かいですから!多分!」
「………由奈、うるさいでござる……」
「!?イタッ!!!っ、肘打った肘!!!ちょ、なにするんですか筋肉馬鹿!」
「お前もここで寝てみればわかる、心地よいでござるよ」
思いっきり足を引っ張られて、なんとか受け身を取ろうとしたものの両肘を強打。
突然のこと過ぎて筋肉馬鹿と言う本音も出てしまった。
忍のくせに避けれなかったし、受け身取れなかったし、何故か抱き枕見たいにされてるし、何なんだよ厄日かよ今日!
項垂れていると、幸村様が優しく頭を撫でてくる。
それが気持ちよくて、今の状況がどうでもよくなってきた。
確かに私、もしくは私達が後々困るかもしれないが、幸村様だって忍頭に怒られるんだ。
忍頭には大袈裟に説明しとこう。
幸村様がこってり絞られるように。
「忍頭にネチネチ言われても、私のせいじゃないですからね」
「わかっている、それにしてもこんな気持ちのよい日に由奈を独り占めしている……某はそれが今日一番の幸せでござる」
「直射日光でおかしくなっちゃったんじゃないですか?普段言わないような恥ずかしいことを言わないでください」
この筋肉馬鹿は、何いっちゃってくれてるんでしょうか。
太陽熱で暑い体が更に暑くなった気がする。
普段はそんなこと言ってくれないのに、こんな状態で言ってくるとかなんなんだ。
恥ずかしいやら苛立ちやらで悶々としていると、頭の方から寝息が聞こえてきた、寝やがりましたよ、おやすみ3秒ですよ。
上を見ると幸せそうな寝顔が見える。
不覚にも愛しいと思った私も、きっとこの陽気にやられた一人なんだろう。
「手間がかかる旦那様ですね、おやすみなさい、幸村様」
「……………おやすみ、由奈」
「旦那に由奈、アンタ達こんな昼間っから廊下の真ん中でなにしてんの?」
青筋を浮かべた忍頭に見つかるまで、あと数刻。
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