リク部屋

□仲良くお風呂にはいりたい!
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「おー、広いなー。」

正十字学園の土地内にある温泉は、基本的には生徒や職員も一般の人も使用は自由だが、その日は入口に「理事長貸し切り」の札がかかっていた。


「なかなか立派なものでしょう。今日は燐のために貸し切りにしておきましたから、どうぞ、のんびりしていってください。」


塾も終わり、寮で漫画を読んでいた燐は、突然現れたメフィストに「温泉に行きましょう!」と、半ば強引に腕を引っ張られた。慌てて雪男がそれを妨害しようと椅子から立ち上がったが、それ以上にメフィストの動きは早く、あっという間に燐を連れて煙と共に消えてしまった。

意味が良く理解できないまま、連れてこられたのがこの温泉である。


「(燐と一緒に風呂……これは私、チャンスですね。)……しかし、」


すっかり服を脱いで、腰にタオルをまいた燐に、「眼福だ……」と熱い視線を送っていたメフィストだったが、計画通りにいかなかったことがひとつある。

「なぜお前がいるのだ――――アマイモン。」


「なぜって、兄弟で仲良く入浴する計画に、ボクが仲間ハズレって酷いじゃないですか。」

湯けむりで、身体のラインがハッキリ見えるか見えないかの、その境界が楽しいらしく、今日の彼は珍しく薄く笑っている。


「ねー、燐。兄上と二人きりよりも、ボクがいたほうが楽しいですよねー?」


「おう!人数は多いほうが楽しいに決まってるからなっ!」


ニコリ、と、さながら太陽のように笑う燐に、メフィストは思わず口をつぐむ。

こんなに嬉しそうにする燐を目の前に、へたにアマイモンを追い出すこどができなくなった。


「……アマイモン。まずはかけ湯からだ。いきなり湯船に飛び込もうとするな。」


諦めたようにため息をもらす。

――――私と燐の間には、いつも邪魔が入る。


イライラを燐の笑顔ですっかり取り払われたメフィストは、末の弟に弱い自分に苦笑した。





「あー、、、あったけぇー。」


燐を真ん中に、三人並んで湯につかると、一番に口を開いたのは燐だった。


「気持ちいいでしょう。ささ、燐、もっと近づいて。」


さりげなく距離を縮めようと、自然な動作で燐の肩に手をおくメフィストを、アマイモンは横目で見て、聞こえないように舌打ちする。


「お、おう?」

それにまったく警戒もしないで近づく燐の腕を、アマイモンは素早く掴んだ。


「ボクをおいて兄上のところにいっちゃうんですか。寂しいです。」


「アマイモン……べつにそんなんじゃねぇよ。ほら、お前も来いよっ!」


「ワーイ。」


「……おのれ、愚弟め……」


二人の間に、かなり近い距離ではさまれた燐だが、とくに気にした様子もなく、むしろ嬉しそうだ。


「なんか、こうゆうのもたまにはいいよな―――ひとり足りない気もするけど。」


「?ダレですか?」

「……えーと、メガネとかホクロとかメガネとか?」


「まぁまぁ、そんなこと気にしなーい☆――――それとアマイモン。燐の腰から手を離せ。」


「イヤです。……燐、濁り湯でよく見えませんが、そういえば今はタオルも何もつけていないんですよね。」

意味ありげに下げられた視線を打ち消すため、メフィストは素早く燐を抱え、自分の膝の上に乗せる。


「妙な視線を燐に向けるな!」


「兄上だって……」

「黙れ――――「お前ら、うっせぇ!!」

アマイモンに対して「説教」しようとしたメフィストだったが、それは燐のひと声で中断された。

「なんだよお前ら!仲良く入るってことできねぇのかよ!――――もういい、俺ひとりであっちの杉の木の風呂行ってくる。」


ばしゃり、と、メフィストの膝から立ち上がった燐は、それはもう男らしくタオルも身につけないで湯から出ていく。

ズンズン進むキレイな線の、ほどよく筋肉がついた白い背中に見とれていた二人は、それを止めることもできず、燐を逃してしまった。

杉の木風呂のある扉がピシャリと閉まって、背中がすっかり見えなくなってから、アマイモンがぼそりと言う。

「……ボクたち、フラれましたね。」


「なにを……フラれたのはお前だけだ。」

それからお互い、素早く距離をとり、湯に広がる波紋に愛しい子を想いながら、ため息をもらした。




「なんだよアイツら。……俺は二人とも好きだって。」


燐のそんな呟きは、扉の向こうには届かない。



おわり!
――――――――――――ハル様、リクエストありがとうございました!……これでよろしかったでしょうか?書き直しの希望などがありましたら、お気軽にどうぞ♪

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