イナイレ

□いつものキミ
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『剣城!一緒にサッカーしようよ!』

『剣城ー!なんで練習来ないんだよ?』

『なぁ、つーるーぎー!』

鬱陶しい、邪魔、うざい、しつこい


フィフスセクターの命令で雷門のサッカー部に来てからというもの
毎日くるこの新手の極悪勧誘
…こいつ、喋ってないと死ぬのか?


どうせ今日もアイツしつこく来るだろうな…
と思ったらまったく来ない
さすがにアイツも諦めたのか…?
ま、俺にはどうでもいいが

にしても恐ろしいほど静かに感じる
誰にも邪魔されないし、いいことなんだが
「…調子狂う」
なにか物足りない気がする


「あっ、剣城だ〜」
前から声を張り上げたのは西園…つうかチビ
「おい、松風はどうした」
無意識に出た言葉がこれだった

「天馬なら今日風邪引いて休みだよ〜」
西園は疑うこともなくあっさりと答えた
…てっきり何か言われるかと思ったが

「はっ。バカでも風邪は引くんだな」
嫌み混じりでそれだけ言ってその場を去った

…なに聞いてんだ俺
なんで俺はアイツの心配してんだ
てか、なんでアイツのこと考えてんだ
居なくてせいせいしてるはずなのに

考えれば考えるほどわからなくなって
胸が少し締め付けられてモヤモヤして
「あ゙ぁ゙!ムカつく」
自分がコントロールできない
なんなんだ、なんなんだよ!


次の日になっても苛々募るばかりだった
そのオーラが滲み出てるのかいつも以上に周りとの距離が遠い

そんな中
「剣城ー!おはよーっ」
唯一俺に近づいてくる声に思わずハッと振り返った

いつもと同じうるさい奴
アイツの顔を見たら心に突っ掛かったものも、苛々も、スッとどこかへ行ってしまった

「今日こそ一緒に練習行こうぜ!」
来た、極悪勧誘

「それより、か…風邪は大丈夫なのか」
もう自分でもなにを聞いているのかわからなかった
というか、どうでもよかった

「うん!もうサッカーしたくてたまんない!」
とこれでもかと満面の笑み
「そ、そうか」
自分のペースが完全に崩れていって
皮肉を言う余裕さえなかった


「そーれーで!練習、行くよな?」
迫真の顔でどんどん迫ってくる
ち、ちけぇよ…
自分の顔が赤くなってる気がして
「わ、わかったから離れろ」
焦って咄嗟にオーケーしてしまった

「ホントに!!?やった〜!!」
昨日今日となんか変だ俺
自分が自分じゃない気がする

「じゃあ、また放課後な〜!」
と言い残し、疾風のように去っていった

「…練習出なきゃいけねーのか」


この気持ちを形にするのはもう少し後で


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