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□[56]和泉式部
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(あーあ、何やってるんだろ…)

もう、意識が薄れて来ている

そろそろ、限界かもしれない

場所は戦場、時刻は夕刻

上手く行っていれば、今頃は学園に帰っていたはずなのに

実地忍務で赴いていた戦場

忍務内容は、この戦場で争っていた2つの城の調査

別に戦場のど真ん中に入っていく必要なんてなかった

けど、2つの城が選んだ戦場が、全くの無関係の村だった

多くの村人は、危なくなった時点で一緒に来ていた友人とで避難させた

たとえ村が戦場でなくなってしまったとしても、命があれば何とかなるから

何とか村人全員を避難させ終えたところで、2つの城が南北からやって来て衝突

あっと言う間に村は焼け野原になった

そんな中だった

どこかに遊びに行っていたであろう数人の子供達が、この村に帰って来てしまったのだ

何にも知らず、子供達は焼け野原に入っていく

が、まだ城の忍が村をうろうろしていて

私と友人は子供達を救うために動いた

私は時間稼ぎ、友人は子供達の避難

あの子たちは、無事に逃がせたかな

思ったよりも敵の数が多く、最後の一人はほぼ相討った

ああ、ごめんなさい兵太夫

次の休みは一緒に町に出掛ける約束をしていたのにね

約束、守れなくなっちゃった

私が忍務で学園を出て来た時、兵太夫も忍務でいなかったから

兵太夫に会いたいなぁ

きっと私はもうじき死んでしまうから

最期に、兵太夫の顔を脳裏に焼き付けておきたかったのに

でも、これは誓うわ

たとえ死んでも、私はあなたを愛し続ける、と


永遠への誓い


バカなまえっ!!

へー…、だゆ…??

すぐ学園に連れて行くから、乱太郎がいるから大丈夫だから

へいだゆ、私……。大好き……

知ってる。死んだら許さないから

う、ん…







あらざらむ
この世のほかの
思ひ出に
今ひとたびの
あふこともがな
(和泉式部)











死ぬ前にもう一度だけあなたに会いたい
愛したあなたの思い出を抱いて
この世から旅立ちたい

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