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□[54]儀同三司母
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『雷蔵、私の事好き?』

誰もいない、静かな図書室

本当は、今日の当番は雷蔵と久作なのだけれど

二年生は揃ってお使いのため、今はいない

「急にどうしたの?」

『不安になるの。私という存在が』

「不安??」

『そう。私という存在は、簡単に崩れてしまいそうな気がして』

読書中の雷蔵に背中を預けながら問うた言葉

本当に、不安になるの

私は存在していていいのか、って

「僕はなまえが好きだよ」

背中越しに伝わってくる温もり

温もりは、この不安定な戦乱の世でも確かに存在する

『でもね、雷蔵。ずっと、何があっても、同じ心で居続けるのは難しいんだよ』

"ずっと"や"いつか"なんて、忍の世界にいる限り不確かで不安定なもの

それならば、確かに存在する"今"を永遠にしたいと思わない?

私がそう言えば、少しだけ背中の温もりが減った気がする

「なまえ、どういう意味?」

『ふふ。私は、一生雷蔵の心に存在していたいなって事よ』

雷蔵の顔を見ると、何やら渋い顔をしていた

実は、私の心を見透かしてるのかな?


今を永遠に
(私を殺して、)
(そう言ったら、あなたは怒るかしら)





忘れじの
行く末までは
かたければ
けふを限りの
命ともがな
(儀同三司母)






一生君だけってあなたは誓うけど
人の気持ちは移ろうわ
だから私は今日死にたい
最高に愛されたまま

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