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□出会いは突然に
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『…………』

穴、の中に、人?

状況が掴めていないあたし

『何してるの』

抑揚のない声

質問しているつもりなのに、疑問でなく肯定のようにとれる

そんなあたしの声に気が付いたのか、顔を上に向ける人

あたしと同じくらいの年に見える

忍たまの3年、かな

「落ちちゃったんだ。今上がるから、ちょっと避けててね」

頬を少し擦りむいている、その人物

穴は結構浅かったみたいで、手を伸ばせば地面に手が届く

辛うじて届いた手の指先に力を入れ、這い上がろうとする

すると…

「うわあぁ!!!!」

見事に、指先が触れていた地面の土が崩れた

『何してるの…』

声は掛けるけど、助けない

だって面白いんだもん

しばらく穴の縁から見てたら、更に5回くらい同じ事を繰り返した

…忍たま、だよね?

どんくさいなぁ…

『ん、』

上に向かって伸びてきた手に、あたしの手を差し出す

最初はきょとん、としていたその人もすぐに分かったみたい

私の手を掴んだ

よいしょ、と心の中で呟いて引き上げる

出て来たものの、服も、顔や髪も泥だらけ

「ありがとう!!」

そんな見た目とは裏腹に、太陽のような笑顔

あたしには、少し眩しすぎる

「同い年だよね?? 名前は??」

先程まで穴にいたとは思えないほど、明るい声

そんな声と笑顔に負けて、あたしは答える

『篠原架南』

「架南ちゃん、ありがとうね!!」

初対面なのに、普通に名前で呼んでくる

あたしには、そんな事出来ない…

「僕は3年は組、善法寺伊作。よろしくね」

よろしくねって、何を?

そんな事を考えていたら、誰かが来たみたい

「伊作、大丈夫か?」

同じ色の服で、また同い年の子みたい

「うん!! この子に助けてもらったんだ」

この子、と言って、あたしを見る

「そう。ほら、部屋に戻ろう」

大して興味はないようで、やって来た忍たまは彼の腕を掴む

そして、そのまま引っ張って行ってしまった

最後に振り向いて、彼…

善法寺伊作は、口パクでこう言っていた

今度はちゃんと話そうね

と…

あたしが何も言わなかったから、会話になっていなかったのを気にしていたのか

まぁ、どっちにしても面白い人を見つけたものだ




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