Short Story

□crusher!!
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『あの、兵ちゃんいますか?』

「んあ? 兵太夫?」

3組の教室前で見つけた人

校内でも有名な加藤君に声をかける

兵太夫ー、と声をあげる加藤君を見ていたら、教室から兵ちゃんが出てきた

「絢乃…。今日は何を壊したの…?」

『えへへ…』

呆れ顔の兵ちゃんに、ポケットからソレを出して渡す

「ケータイ?」

『開いてみて?』

薄い水色のケータイ

高校合格した時に買ってもらったものだから、まだ1年経ってない

『急にプツッて電源入らなくなったの』

「はぁ…。ちょっと調べてくるから、待ってて」

ため息を吐きながら教室に入っていく兵ちゃん

私はよく物を壊す

別に悪気はないし、乱暴に扱っている訳でもない

ケータイはよく電源が入らなくなるし(充電は完璧)ドライヤーからは煙が出てきた(まだ買ったばかり)

そんな訳で、"壊し屋"とか"破壊神"とか呼ばれる

で、私が何か壊す度に直してくれるのが兵ちゃん

「絢乃…? あ、小日向か!!」

『!? 加藤君…?』

兵ちゃんを呼んでくれた加藤君

私の隣で何やら考えこんでいたと思ったら、いきなり叫んだ

その声で、3組の男の子達が集まって来ちゃったよ…

「団蔵、その子誰?」

「虎若か。兵太夫が時々話す小日向絢乃」

加藤君に話しかけたのは、佐武君

加藤君と並ぶ、校内の有名人の1人

「次屋先輩が、"女版七松先輩"って言ってた」

『そんなに危険じゃないです!!』

物騒な事を言ってくれたのは、皆本君

私の幼馴染みの次屋三之助の直属の後輩

「でも、あながち外れてはいないでしょ」

『兵ちゃん、酷いよ…』

私のケータイを片手に、再び廊下に出てきた兵ちゃん

「どんなに丁寧に使っても、絶対壊れるんだから」

「天才だな!!」

『加藤君、それ褒めてないよ』

「大丈夫。団蔵は褒めるつもりで言ってないから」

『兵ちゃんも酷いよ!!』

「事実を言ったまでだよ」

兵ちゃんは学年が上がるにつれてどんどん意地悪になった

それに比例して、その少し意地悪な感じが格好良いと言う女の子が増えた

みんな面白いよねぇ、意地悪な人が好きなんて

「もー、学校の物は壊すなよ」

『……努力はしてます』

「何だよ、今の間は」

『うわぁん、ごめんなさい。視聴覚室の引き戸を壊したの私ですぅ!!』

「はぁ!?」

ああ、言ってしまったよ…

絶対バカにされると思っていたから言わなかったのに

「で、壊した後はどうしたの?」

『あぁ、うん。三之助君に頼んで富松先輩に直してもらった』

兵ちゃん兵ちゃん、顔が"何こいつあり得ない"って顔になってるよ

「全く…。気を付けなよ」

『や、気を付けてはいるんだけどねぇ』

「別にいいだろ、気を付けなかくても」

『加藤君??』

「絢乃には兵太夫がいるもんな!!」

そう言ってニカッと笑い私の頭を撫でる加藤君

ちょっと七松先輩みたいでうれしい

昔よく遊んでもらったな〜

「馬鹿旦那、死にたいの?」

極寒な兵ちゃんの視線

加藤君かわいそう…

でも、加藤君の言う通りだね

私には兵ちゃんがいるから、何を壊しても大丈夫!!


Crusher!!


へーちゃーん…

どうしたのさ…?

ケータイの画面から液体が出て来た…

何をしたの!?




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