Short Story

□巡り巡る、
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"もしも"があるのならの転生です


「喜八郎っ!!」

「滝、うるさい…」

穏やかな天気、屋上、食後

この3つの条件が揃えば、そこから導き出せるのは昼寝

そう思って目を閉じたのに、それを遮ったのは滝の声

「寝るな喜八郎!!」

「もう、何?」

嬉しそうな顔で"ある事"を告げた










『私立大川学園高等部、ねぇ…』

つい一昨日くらいまで、父親の都合でアメリカにいた

それが急に日本に帰る事になった

私は高校1年生

どの高校に入るのか、と考えていたら両親に高校が決められれいたのよね

なんでも私立大川学園は、両親が出会った場所なのだとか

そんな訳で、私は今大川学園正門前にいる

とにかく門が大きいな、おい

とりあえず、職員室を目指さないと

そう思って、門の中へ入り少し進んだ時だった

「絢乃、」

『っ!?』

ふいに私の右手側からやってきた1人の男子

パッと見、女子みたいだけど

『……誰?』

急に名前を呼ぶなんて、慣れ慣れしい

薄い紫のような髪色の知り合いなんていない

「おやまぁ、記憶がないとはねぇ〜」

さっきの叫び声とは正反対の、のんびりとした声

けど、少しだけ怒っているのは何でだろう

一歩、私に近付く謎の男子

更にまた一歩、無言で近付いて来る

得体の知れない男子に近付かれ、私も一歩後ろに下がった

『!!?』

ぼふん、と鈍い音

いつの間にか、少し遠くなった空

『落とし穴……?』

「これは蛸壺のターコちゃん。いつもより深いからマットをしいておいたよ」

蛸壺…?

聞いたことあるような…

ダメだ、思い出せない

「…絢乃、覚えていないの?」

え、何を言ってるのこの人

初めて会った人に覚えてないの、って言われるなんて

『誰かと間違っていませんか?』

「そんなはずはない」

断言したこの人、どうしよう

この学園での生活に平穏はなくなりそう…









『…なんてこともあったわねぇ』

「あの頃の絢乃は少し口が悪かったよね」

『そうだっけ?』

「うん。ツンケンしてた」

『そう言う喜八郎こそ、転校初日の私を穴に落としたじゃない』

「あれは仕方ないからいいの。ショック療法だよ」

『えー…、確かにそれで思い出したけどさぁ』

「全く覚えていないなんて、いい度胸だよね」

『えー…』

「次に生まれ変わった時も覚えてなかったら、もっと深い穴に落とすからね」

『うわぁ。大丈夫、次は絶対忘れない』

「絢乃、いい子」

『ありがと』









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