Short Story

□"もしも"があるのなら
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『ねぇ、喜八郎。もしも生まれ変われるなら、何になりたい?』

授業のない、穏やかな日

いつものように穴を掘る喜八郎

それを縁側で見ている絢乃

「生まれ変われたら…?」

『そう。今みたいな戦のある世の中じゃなくて、もっと平和な世の中に』

動きを止め、空を見る喜八郎

穏やかな青空に、時折雲が浮かんでいる

「穴を、掘っていたい」

『え…?』

唐突に返された問いの答えに、呆けた顔の絢乃

そんな絢乃の顔を見て微笑む喜八郎

「だって、穴を掘っていれば絢乃と出会えそうじゃない」

『あ……』

喜八郎の言葉に、絢乃の脳裏にはある出来事が浮かんだ

それは、学園に入学したての頃

喜八郎の掘った穴に落ち泣いていた絢乃

それを見て、謝りながら慰めた喜八郎

『昔みたいに…?』

「うん。だから、私以外が掘った穴には落ちないでね」

『そうね』

穏やかな、ある日の事だった


"もしも"があるのなら










絢乃、避けろ!!

っ!?

絢乃っ!?
絢乃ちゃん!!

……う、あ…










避けろと言った三木ヱ門の声に反応するのが遅れて
私の名を呼びながら近寄ってくる滝夜叉丸とタカ丸さんの顔は涙で霞んだ

ねぇ、喜八郎
貴方の姿を最期に見られなくて、寂しいわ










最後の方は六年になって間もない出来事
喜八郎はその時諜報で場を離れていました

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