Short Story

□離したその手は彼方へと
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「絢乃先輩を、返せだと?」

「ああ。口の聞き方を気を付けろ、池田」

対峙する、四人と六人

一見四人の側が立場が弱そうに見える

四人の側が年下ということなら、尚更そう思えるかもしれない

しかし、四人は余裕そうな面持ち

寧ろ、六人の方が立場が弱そうに伺える

「何を仰っているんですか?」

飄々とそう訴えるのは、四人の中央に立つ三郎次

「先輩方が、絢乃先輩の手を離したんじゃないですか」

冷たく、非難するような口調の左近

それに続くのは久作

「長年共に学んでいた絢乃先輩を突き放し、見知らぬ女へと走ったのは先輩方でしょう」

かつては尊敬を含む眼差しだったが、今は微塵も感じられない

悔しげに唇を噛み締める六人

この六人は、ふわりと舞い降りた天女に虜になった

そして、一年の頃から仲のよかった絢乃に見向きもしなくなった

「先輩方が絢乃先輩の元を去った時の、絢乃先輩の気持ちが分かりますか?」

心優しい、四郎兵衛の言葉

今は、六人の心に突き刺さる刃となる

「分かっている…。だから、絢乃に会わせてくれ…」

懇願するように、同じ委員会の後輩を見る三之助

しかし、四郎兵衛の瞳は冷たいままだ

「先輩方には分からないですよ。絢乃先輩が負った傷は…」

天女が舞い降りた時、真っ先に天女の魔の手に掛かったのは六年だった

五年である四人も続くかと思われたが、四郎兵衛により正気に戻らされた

四年は、い組は彦四郎、ろ組は平太のお陰で無事だった

は組に至っては、全員の堅い絆により、誰一人天女に見向きもしなかった

「言葉で言って言う事を聞いてくれないなら、強行突破だけど?」

「強がって言ってるの、バレバレですよ。浦風先輩」

六年が離れていった後の絢乃の荒れようは酷かった

左近を筆頭に保健委員で心を安定させる

天女に危害を加えられる可能性があったので、絶対安全なカラクリ部屋へ保護された

「四人しかいない五年で、僕達に勝とうって言うの?」

「三反田先輩、ずっと鍛練を怠ってきた先輩方に負ける気はしません」

睨む合いが続き、やがて誰かが苦無を投げた

学園が元に戻る日は来るのだろうか


離したその手は彼方へと









正直、傍観は苦手です...
長編で書こうか悩んでいるのですが、書かないかもです
書いたとしたら、学級・保健寄りかな。。

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