Short Story

□思い通りにいかない貴女
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「鉢屋先輩、その変装技術誰から学んだんですか?」

「………」

「あれ、三郎? 言わないの?」

いつものように学級委員長委員会は仕事がない

そのため、私を含め四人でお茶をしていた

急に聞いてきたのは庄左

全く、嫌な事を聞いてくる

「いいじゃん、三郎〜。言っちゃいなよ〜」

ニヤニヤと一人楽しそうな勘右衛門

「誰ですか?」

彦四郎も興味津々だ

さて、どうしたものか…

「俺達より二つ歳上の先輩でね…」

「勘右衛門っ!!」

「いいじゃんかー、絢乃先輩の話くらい」

『呼んだー??』

「「え?」」

襖が開き、中に入って来たのは…

「絢乃先輩っ!!」

『勘ちゃん!! 元気だった?』

一年前に卒業したはずの、絢乃先輩

「絢乃先輩ー、会いたかったですー」

絢乃先輩にぎゅーって抱き付いている勘右衛門

まずは何で絢乃先輩がここにいるのかを聞くべきだろ

…いや、聞かなくても分かるか

「絢乃先輩、迷子癖治ってなかったんですね」

『さぶちゃん、皮肉っぽく言わないでよ〜』

「後輩の前でさぶちゃんて言わないで下さい」

『いいじゃない、さぶちゃんはいつまでも私の可愛い後輩なんだから』

絢乃先輩は、いつもこうだ

如何なる場合においても、常にマイペース

それでいて立花先輩達を率いて忍務に行くだけの統率力も持っていた

二つしか歳が変わらないというのに、その二年の差というものを思い知らされる

「絢乃先輩、こんなところにいて大丈夫なんですか?」

『大丈夫よ、一昨日大きな仕事を終えてね。しばらくは仕事入れてないから』

学園を卒業した絢乃先輩は、フリーのプロ忍になった

あれから、学園に帰ってくるのは初めてだ

「庄左衛門、彦四郎。三郎に変装を教えた絢乃先輩」

「あっ、おい!! 勘右衛門ッ!!」

「別に隠す事ないじゃんかね、絢乃先輩」

『そうよそうよ!! 全く後輩可愛いわね!!』

「話が繋がっていないです絢乃先輩」

『細かい事は気にしない!! さぶちゃん、男でしょ?』

「はぁ…」

全く、この人は…

卒業してプロ忍になっても変わらない

無邪気さというか、幼さというか…

そういったものを、今でも忘れていない

だからこそ、こんなに笑っていられるのだろうが

『さぶちゃん、暇?』

「聞かなくても分かるでしょう?」

『そうよね。学級は暇なのよね』

「喧嘩売ってるみたいです、その言い方」

『もう、一々文句言わないでちょうだい』

ぷくっと頬を膨らませる

あんた何歳だよ…、とは聞かないでおく

『仙ちゃん達の所連れて行って!!』

「何でですか…」

『仙ちゃん達も、私の可愛い後輩だから!!』

「お断りします」

『えー!! 何でよぅ!!』

ああ、もう

この人は本当に分かっていない

この人を私のペースに持ってくるなんて、絶対に不可能だな


思うようにはいかない貴女


尾浜先輩…

ん、彦四郎?

あんなに人に流されてる鉢屋先輩、初めて見ました

そうだね、よく見ておいた方がいいよー

絢乃先輩って、どんな人なんですか?

庄左、これは秘密だよ?

はい

絢乃先輩は、三郎の初恋の人…

勘右衛門っ!!




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