Short Story

□いつか巣立つその日まで
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「………」

『あ、三郎ー。おかえりー』

部屋の襖を開けた途端固まる三郎

顔がいつになく渋くなっている

「何してるんだ」

『ほのぼの??』

聞かれたから答えただけなのに、三郎ははぁ、と大きなため息

『何よ、姉さんが来たのが嬉しくないの!?』

「そうじゃねぇけど…」

何を隠そう、私は鉢屋絢乃

正真正銘三郎の姉

「嬉しくないのかって…。あんたそろそろ結婚すんだろ…」

『しないわよ』

「…は?」

三郎のぽかんとした顔

雷蔵に変装していても、本当の三郎の顔がぽかんとしているのが想像出来る

『だから、結婚しないわよって』

再度私が繰り返せば、三郎は呆れたような顔

「せっかく貰い手が見つかったのに、いいのか?」

『いいのよ。私は結婚するよりも忍として生きたいの』

「今からフリーのプロ忍になるのか?」

『さて、私はどうするでしょう??』

はぁ、と再度ため息を吐く三郎

「で、どうするんだ?」

いけしゃあしゃあと…

考える気が全くないみたい

『ここで働くのよ』

「嘘をつくな、嘘を」

『本当よ、もう。学園長にも許可を貰ったわ』

ほら、と言って証明書を見せつける

「いいのか?」

『当たり前でしょ。私の人生、好きに生きたいじゃない』

政略結婚なんて、まっぴらだった

私はこの学園に入った時から、女としての人生を全うしたいとは思っていなかった

『と言う訳で、よろしくお願いします』

三つ指ついて頭を下げる

その時、ろ組の2人が帰って来た

「あれ? 絢乃先輩?」

「え、マジ?」

雷蔵とハチの驚きの声

久しぶりのその声に、帰って来たのだと安心する

『空き部屋がないんだって。だから、泊めて?』

「いいぞ!!」

「うん。絢乃先輩ならいいよね」

『ありがとう!! ハチ、雷蔵!!』

「おいコラ。勝手に話を進めるな」

折角話がついたのに、止めに入る三郎

全く、なんなのよ…

「なんなのよ、じゃない。雷蔵はいいとしても、ハチはダメだろ」

『心を読まないでよ』

「おい三郎!! 何で俺はダメなんだよ!?」

怒るハチ

そりゃ、そうよね

1人だけハブにされるんだもの

「当たり前だろ。ハチがいたら姉さんが危ない」

「確かに」

三郎の言葉に頷く雷蔵

雷蔵、辛辣な子に育っちゃって…

「って事で、ハチは兵助達の部屋に行ってくれ」

ポイッとハチを部屋の外に出す三郎

かわいそうなハチ…

「で、姉さんはいつまでいるんだ?」

『さぁ?』

「いいじゃん、三郎。絢乃先輩がいたいだけいれば」

『雷蔵優しい〜』

「…まぁ、いいけどさ」

渋々といった様子だけど、首を縦に振ってくれた三郎

結局は、三郎はいつも私のお願いを聞いてくれるのね

いつか私から離れて行くのだろうけど…

それまでは、あなたの姉でいさせてね


いつか巣立つその日まで




どうせ下らねぇ事考えてんだろ

三郎??

姉さんの考えてる事くらい分かる

三郎には敵わないな…

当たり前だろ。私を誰だと思っているんだ?









姉には優しい三郎が書きたかった…!!
三郎が弟だったら、姉さんは甘えてしまいます

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