Short Story

□それも愛
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『…………』

「…………;;」


数分間は続く沈黙

ああ、俺はそろそろ死ぬんじゃないか?

沈黙に耐えきれなくて…

『竹谷八左ヱ門…』

フルネームで俺の名を呼ぶ絢乃の声はこの上なく低くて

目の前に立つ恋人の顔を見る事すら出来ない

普段はおとなしい人が怒ると恐ろしい…

迷信かと思っていたその言葉を、今日現実で実感した

『今に始まったことじゃないのは分かっているのよ。それがしょうがない事も』

笑顔に黒いオーラを纏って語り始める

あれぇ…?

絢乃って、こんなに怖かったっけ…?

『委員長だからね、忙しいのは分かってる。生物委員がどんなに大変かも』

「…うん」

『けど、ね…?』

ああ、来るな…

『休みになるたびに約束守れないって何なのよ!?』

ドゴォ、と音を立ててヘコむ壁の一部

今日も用具委員に怒られるな、俺…

普段かなりおしとやかな絢乃だが、実はかなりの怪力

壁がヘコむなんて、しょっちゅうだ

今絢乃が怒っているのは、俺がまた街へ行く約束をすっぽかしたから

意図的にやってる訳じゃなくて、毎回毒虫が逃げてしまうから…

毒虫回収で丸一日潰してしまい、毎回絢乃にこうして怒られるのだ

『流石にそろそろ我慢の限界なのよね。だから、ね…?』

不敵に微笑む絢乃の顔を見て、俺の背中に一筋の冷や汗がつたう

「ちょっ、待てよ絢乃!!」

『何?』

「反省してるから!! 次の休みこそは、な?」

『竹谷八左ヱ門』

俺の必死の弁解に、満面の笑みを浮かべる

『ちょっと反省してきて』

「は? って、うわあぁぁあぁぁ!!!!」

いきなり地面がなくなった

垂直に落下した俺

…生きて外に出れんのかな、俺?



それも愛









…お前ハチの恋人だよな?

三郎?

いや、これって一年は組のカラクリだよな?

そうよ。しかも、上級者向けのね

死ぬなよ、ハチ…

あら。ハチはこんなので死ぬほど弱くないでしょう?

お前鬼だな…

ありがと

誉めてねぇし!!








私の中で、竹谷は憐れな感じです
とりあえず殴りたくなるのは何故でしょう?
.


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