Short Story

□永遠の温もりに
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ああ、またやってしまった…

はぁ、とため息が出てしまう

今週に入って、もう何度目なんだろう…

私は、自覚のある方向音痴

気付いたら裏山、なんてしょっちゅう

今私がいるのは、恐らく裏々々山あたり

もう、何でこんな所にいるんだろう…

もう少しで日が暮れてしまう

夕食を食べ損ねてしまうのだけは避けたい

(さて、どうしようか…)

無闇に動くと、更に変な所に行ってしまいそうだ

たまに目当ての場所に辿り着けるけど、本当にたまにだ

(う〜ん…。どうしよう…)

不破先輩のように、悩み始めてしまう

不意に、ぺしん!!と叩かれる

『痛っ!!』

「阿呆!!」

振り返ると、怒った顔の作兵衛

「お前なぁ…!!」

『うっ…。ごめん…』

はぁ、とため息を吐いて頭を抱える作兵衛

私が迷子になるのが悪いのだけど…

「全く…。無闇に動くんじゃねぇって、何回言えば分かるんだ?」

『ごめん…』

本当に、申し訳ない

心からそう思っている

私はいつも迷子になると作兵衛に見つけてもらう

そのたび、気を付けろと怒られる

「はぁ…。で、今日はどこに行こうとしたんだ?」

『えっと…。急に作兵衛に会いたくなったから…』

会いに行こうと、ね…?とだんだんと声が小さくなる

恥ずかしさのあまり俯けば、また作兵衛に叩かれた

「ったく、世話が焼ける奴…」

一回叩かれた後、優しく頭を撫でてくれた

『作兵衛??』

「ほら、戻るぞ」

私の右手を掴んで、スタスタと歩き出す

ちら、と見えた頬は赤みを持っていた

照れ屋な作兵衛だけど、私が迷子になった時は必ず手を繋いで帰る

ありがとう、という気持ちを込めて、手を強く握る

そうすれば、握り返される私の右手

いつまでも、こんな関係が続けばいいのに…


永遠の温もりに


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