Short Story

□その名は枝毛量産機
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「絢乃ちゃん…」

『………;;』

目の前には、笑顔で鬼のような形相のタカ丸さん

私は、壁際に追い詰められる

…馬鹿だ、私

「いくらさ、委員会で忙しいからってねぇ」

また一歩、私に近づく

この部屋の住人、滝ちゃんと綾ちゃんは呑気にお茶を啜っている

三木ちゃんはユリコの散歩に行ってしまった

目が、本気だよ…

私に勝ち目はないね、うん

「絢乃ちゃん、話聞いてる?」

『は、い…』

ああ、もう…

普段は敬語なんて使わないのに!!

こういう時のタカ丸さん、怖いんだもん!!

「今日こそは…」

そう呟いたタカ丸さんの目は、キラーンと光ったように見えた

そしてスッと鋏を取り出す

「ああ、もう!! 枝毛!!」

私の髪をじとーっと見つめ、叫び声をあげる

枝毛ねぇ…

だって最近、予算会議が近くて寝るの遅いし

お風呂の後、乾かす時間もなく寝ちゃうし

もう、どうしようもないよね…

「もったいないなぁ…」

はぁ、と短くため息を吐くタカ丸さん

「真っ黒で、細くて。良い髪なのに」

『予算会議が近いんだもん、仕方ないよ』

タカ丸さんの呟きに答える
すると、またため息

「はぁ…。けど、女の子なんだから…」

『ま、タカ丸さん達はアイドル学年だからねぇ』

「何言ってるの。絢乃も同級生でしょ」

『私はいいの。皆が目立てばいいんだから』

私がそう言うと、いつの間にか滝ちゃんと綾ちゃんが両脇にいた

「うわぁ〜。酷いねぇ」

「これは…、酷すぎる」

私の髪を一房取り、好き勝手言い始める2人

「もう少しで竹谷先輩といい勝負…」

「ああ。かなりヤバいな」

『それは酷い!!』

毒舌になる綾ちゃんと滝ちゃん

綾ちゃんはSだけど、滝ちゃんまでSだなんて…

「コラコラ、2人共。絢乃ちゃんで遊ばないの」

苦笑しながらたしなめる

「絢乃も、言われたくなかったらちゃんと手入れしようね〜?」

『…しないよ』

ピタ、と動きが止まるタカ丸さん

私、そんな変な事言ったかな??

『だって、自分でしなくてもタカ丸さんがしてくれるじゃない??』

後ろにいたタカ丸さんに振り向きながら言うと、照れたような顔

「嬉しい事を言ってくれるね」

『そう?』

「うん。でも、僕でいいならいくらでも」

『ふふっ。よろしくお願いしま〜す!!』

再び私の髪をいじりだす

枝毛を見つける度に、タカ丸さんに怒られたけど…


その名は枝毛量産機







枝毛量産機は私です
最高で1本の髪が4本になります
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