Short Story

□小さな世界と小さな戦士
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「おやまぁ、絢乃がいる」

『きはち、ろ…』

私が今いるのは、喜八郎が掘った蛸壺の中

それほど深くない蛸壺を覗き込んでいる喜八郎

頬や額には、小さな擦り傷や切り傷…

昨日実習があって、その時に出来たものだ

喜八郎だけでなく、滝や三木、タカ丸さんも傷だらけ

裏々山で、6年生との合同実習だったそうだ

容赦のない6年生に、相当苦戦したのだろう

「絢乃、」

ふっ、と顔を上げると、私の隣に喜八郎がいる

この蛸壺は2人入っても、それほど狭くない

「心配した??」

『ん、』

「ただの実習なのに…」

『それでも、皆が怪我するのを見るのは嫌…』

体を小さく、膝を抱え込むようにして座る私

喜八郎は、私の頭を撫でる


『私は、ずっと学園の中で過ごしていたから。学園が私の全てなの』


私は、所謂戦孤児

幼い頃に家族を失い、学園長先生に引き取られた

だから、入学する前から学園にいた


『学園の中の誰かが死ぬことは、私の中の世界が崩れるのと同じことなんだよ』


喜八郎は、黙って聞いてくれる


『私には、"学園"と言う世界しか見えない。世界の一部が崩れるのを見るのは嫌だよ…』


自分が甘い事を言っているのは分かっている

ここは忍術学園

門から一歩外に出れば、危険がすぐ近くに迫ってくる

卒業してプロ忍になれば、それこそ死と隣り合わせ

分かってるんだ…

いつまでもこのままじゃダメだって事くらい…

「絢乃」

ぽんぽん、と私の頭を叩く喜八郎

そして、暖かさに包み込まれる私の体

「絢乃は、バカだねぇ」

ぎゅっ、と私の体に力を込める

伝わってくる暖かさが心地良い

「いいんだよ、そのままで。絢乃は私が守るから」

『え??』

「絢乃の世界は、壊させないから。私が守るよ。」

『喜八郎…』

「私だけじゃない。滝達だって、きっと一緒に戦ってくれるよ」

『でも…。それで皆が怪我してたら、意味がないんだよ?』

「そしたら、絢乃が手当てしてよ」

ふわっとした、柔らかい表情になる喜八郎

今日はいつもより、表情豊かだ

『分かったよ。ありがとう、喜八郎』

「どういたしまして」

私の小さな世界を守るために、戦ってくれるのだそうだ

喜八郎は優しすぎるよ

ありがとう、と言いながら抱き付けば、

どういたしまして、と抱き締め返してくれた

私は一生、小さな世界から出られない

だって、喜八郎が守ってくれるから…


小さな世界と小さな戦士





無駄に長い割に、意味がよく分からないお話
喜八郎が偽物過ぎる...
とりあえず喜八郎に守ってほしかっただけ

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