お題

□空のナミダはあたしのナミダ
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「絢歌…?」

『あら、左門』

今朝降り出した雨は、夜になっても降り続いている

しとしとと弱く、でも途切れることなく降っている

『こんな時間にくのたま長屋まで来たの?』

「部屋が迷子なんだ!!」

『三之助みたいなこと言っちゃって』

左門は六年になって、前よりは迷子癖は治った

けど、時々迷子であたしも捜索に駆り出される

「絢歌はこんなところでどうしたんだ?」

蝋燭の仄かな灯りのみの、くのたま長屋の縁側

今日は月明かりもないから、一段と暗い

『なんとなく、眠れないの』

そんな訳で、あたしはしばらくここでぼーっとしていた

「絢歌は雨嫌いか?」

『どうしたの、急に』

「今日は空が一日中泣いていたな」

『左門?』

訳の分からないことを言い始める

どうしちゃったのかしら、今日の左門

「空が泣くのは、絢歌の代わりなんだぞ」

『へ…?』

「どんな事があっても泣かない絢歌の代わりに、空が泣いてくれるんだ」

きっぱりとそう言い切った

そんな左門は、とてもきりっとしていた

「何かあったんだろう?」

ずるい、変な時にだけ鋭いんだから

「今日は一日中雨だったんだ。よほどの事があったんだろう?」

『…うん』

「私は聞かないぞ。一緒にいてあげるがな!!」

昔は頼りないただの方向音痴だったクセに

逞しく成長して、格好良くなった

「今日たくさん泣いたからな。明日は笑顔の絢歌が見られるといいな!!」

ニカッと笑いながら言う左門

『そうだね』

明日はあたしも左門みたいに笑おう

空があたしの代わりに泣いてくれたから、明日は笑える気がする


空のナミダはあたしのナミダ



左門、部屋戻れる?

嫌だ!!

は?

今日は私が一緒に寝てやる!!

えー…

大丈夫だ、さあ寝るぞ!!

(作兵衛に怒られる…)











左門は迷子治っていますよ、多分
昼間絢歌の元気がなかったので様子が気になったのです

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