お題

□初雪が降るまでに
1ページ/1ページ


「あ、絢歌。それはここに置いて」

『分かった』

自身の持っていたプリント類を教卓の上に置き、私もそれに倣う

学級委員として、放課後にプリント運び

こんな仕事、学級委員になってからしょっちゅうだ

私が学級委員になったのは、高校入学直後の1学期

周りに流されて学級委員になってしまった私だけど、黒木君のお陰で頑張れた

そんな黒木君は、このクラスの中では珍しく頭が良い

優秀揃いの1組に負けない、寧ろ勝てるくらいの実力を持っている

2学期もまた学級委員になり、黒木君と一緒にいることが多くなった

そしていつの間にか黒木君の事が好きになっていた

(でも、黒木君と私じゃあね…)

レベルが違い過ぎる、と何度も思った

黒木君は学級委員としての仕事を優先したいからか、部活はやっていない

でも、運動神経は抜群

時々無理矢理加藤君に連れられてバスケをやっているなを見かける

冷静にスリーポイントシュートをきめてたりして…

私が黒木君への気持ちを自覚したのは、いつものようにバスケを見ている時だった

特に何があった訳ではないけど、気付いたら好きだった

「絢歌、大丈夫?」

『あ…っ、うん。ごめんね、ぼーっとしてた…』

「ねぇ、絢歌」

『ん?』

「もう12月だね」

黒木君、何を言ってるのかな?

もう12月に入って2週間目なのに

「もう少しで2学期も終わりだよ」

『?? うん、そうだね』

ますます訳が分からない

私が首を傾げるのを見て、少し困ったような顔

「いい加減さ、黒木君て呼ぶのやめようよ」

『えぇ!? じゃあ何て呼べば…!!』

「庄左ヱ門、」

『!!』

「もしくは庄ちゃん、かな。みんなそう呼ぶし」

いきなり何を言うんだ、この学級委員長は

どうしよう、と悩む私を見て不適に笑う黒木君

「このクラスのみんなも、名前で呼んで欲しいって言ってたしさ」

『み、みんな!?』

「そう、みんな」

えー…、どうしよう

私なんかが名前で読んでたら、学年の女子を敵に回すみたいなものだし…

「僕たちは絢歌って呼ぶのに、絢歌はみんなを名字で呼ぶのはフェアじゃないでしょ?」

『う、ん…』

「ほら、呼んでみてよ」

急になんて無理だよ…!!

男の子となんて、クラスの人だってあまり話さないのに

「じゃあ、課題」

『え?』

「初雪が降るまでに、クラス全員を名前呼びね」

『初雪まで!?』

だってもう12月

初雪なんて、きっとすぐに降ってしまう

「冬休みはあまり会えないだろうから。残りの2学期頑張ってね」

『う…。努力は、します…』

はぁ…

クラスの男子11人を呼び捨てか

出来るかなぁ…


初雪が降るまでに



くろ…

ん?

あ… 庄、ちゃん…

声が小さい

庄ちゃん、

ん、なぁに?

恥ずかしいんだけど…

まだあと10人いるよ?





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ